孤独なダイバー

 たゆたうのはみえない明日うつくしい光が破裂した過去との決別に冷めたコーヒーがカップから零れて宙を舞うスローモーションで。きみの瞳に映っていた景色のはんぶんはニセモノで放り出された記憶の箱はおそらく成層圏で燃えた孤独の海に潜る人間たちターコイズに染まる。
 未来という言葉の浮遊感。
 底に愛はないよ沈んでいるのは誰かのかなしみやくるしみ(捕らわれてブラックアウト)つくりものの夜明けに感動なんかして手を伸ばした先にでもきみはいない。朝陽を浴びながら滑走路を飛び立つ機体のまぶしさに目を細める瞬間わずかに芽生える希望はすぐに掻き消された体のなかで残滓がぼくの肉や骨や神経を鈍らせてゆく。きみはどうか嘘の世界に生きて真実はしらないでいいよ。はりぼての町でおだやかに過ごして絵の具で塗られた空のしたで微笑みの仮面をつけた人間たちを愛想笑いでかわして。所詮この世は神さまの思うまま。
 きみだけが真理。

孤独なダイバー

孤独なダイバー

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-05-06

CC BY-NC-ND
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