きみとぼくのメリーバッドエンド

 添い遂げるように真夜中きみの傍らで目をつむる頃の窓の外のざわめきとカーテンの揺れに呼吸する観葉植物。星。なまえもしらない惑星がきょうも生まれては死んでゆく。宇宙。等しく森と海。そしてぼくらの住んでいる国のどこかで。世界のどこかで。
「さみしいときに観る映画ってぜんぶかなしくみえる」
と言ったのはきみでどんなコメディ映画を観ても笑えない日はぼくに逢いたいのだと呟く。きみの呟きは祈りにも似ている。ずっとふたりで生きてゆくための証明書なんて必要ないのに世界は著しく窮屈で事務的で神さまは時々いじわるだ。きみとぼくがいる部屋だけが切り取られて異次元に放り出された場合に終わりのない空間で果てしなく漂流することを想像すればそれはきみとぼくのふたりだけのしあわせであり誰かからすれば所謂ところのメリーバッドエンドになる。失くしたパズルのピースを作り直すのは神さまにとって造作もないことだと知っているぼくら。テレビ画面のなかで繰り広げられる喜劇がぜんぶ空しいものに思えたときのきみの手はきっと氷河時代の地球くらい冷たい。

きみとぼくのメリーバッドエンド

きみとぼくのメリーバッドエンド

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-05-05

CC BY-NC-ND
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