貪瞋痴と今だけカネだけ自分だけ

貪瞋痴で一番こまったことは
その根源が痴であること
痴=バカ、です

バカがもとで人は人でなくなり
貪欲で妬ましい嫌な野郎になるということ

仏教のお偉いお坊さんが考えに考え
達観と実践と検証の上に
今日まで伝えつづけてこられた真理

”バカ野郎”ってそっからきたのかな
長いから途中をとばしたりして

それはそうと
こういうことに
一つの単語というか
その状態を表す表現を見つけ出すまで
精神を集中して
つきつめるということはすごいことですね

1人で考えたのか
みんなで考えたのか
そして師匠から弟子へ
またその弟子にと
つたえていったんでしょう

それは仏陀が瞑想のうちに
はたとひらめいたのか
発明とか発見みたいに

そのときはきっとご本人は喜んだでしょうね
宗教というか精神界あるいは心理学界の
ノーベル賞クラスの真理の発見だったに違いない
宗教界にそんな名誉賞みないなものがあってもいいのにね

この貪瞋痴
怖いところは
一方通行じゃないんです
すなわち
痴→瞋→貪
と一方向に進むんじゃなくて
車輪みたいにぐるぐる回るんです

バカだったら妬ましくなってそれから貪欲になる
というのじゃなくて
その3つの状態をめぐりながら
スパイラル状に落ちていくんです
鳴門海峡の大きな渦に吸い込まれて沈んでゆく
あるいは
アリジゴクの罠に落ちたアリさんが
砂のすり鉢でもがけばもがくほど砂がころげおちて
どうにもこうにも抜け出せなくなる
そんな状態です
こわいですね


この貪瞋痴
べつの角度からみると
その根底には
人間バカでないと生きていけない
という生存競争の原理があるようにおもわれます

考えてみてください
ものすごく賢くて
謙虚で
人の噂や悪口もいわず
他人をねたんだりしない人が
今の世を生きていけるだろうか

おそらくそんなことしていたら
損ばっかり食らって
みんなに利用されて
それこそバカにされて
あの人はほんとにいい人なんだけど...
ってことになりますね

生きるためには食べなければいけない
食べるためには働かなければならない
そしてどうせ働くんだったらいっぱいおカネをもらいたい

そこであみだされた仕掛けが
今だけカネだけ自分だけ
です

これも先ほど解いたアリジゴクとおなじように
今、カネ、自分だけ、がぐるぐる回ります

じっくり考えることなんてないんです
今だけが大事なんだから
記録は取りません
あとで悪さがバレないように
計画はしません
でも
これをすればどれだけ儲かるかの
皮算用はしっかりします

よく仏教の本のタイトルとかにかいてますね
今を生きるって
それです
とっても深い考えなんで
よくわからないんですが

おカネがあれば何でも買えるんですしてもらえるんです
スーパーやコンビニで食べ物を買ったり
すきな作家の本を買ったり
夢のマイホームとかも
おカネあってこそです
それに人になにかやってもらうのもカネがものをいいます
政治家をみてごらんなさい
票を買ってます
地獄の沙汰もそうですね
閻魔さんの判断もカネしだいです

人のことなんか考えてられないんです
昔みたいに部下を教育するなんてこと上司はしません
社員を教育するなんてこと会社はしません
同僚が困っていても気にかけません
国家議員でも国のこと考えません
首相でも国民のこと考えません

下から上までどの組織も
自分のことで頭がいっぱいです
一番大事なのは
自分だけ

だからいつもいつまでも独りぼっち
人を助けない
人は助けてくれない
失敗したら自己責任
自分だけで浸る自己満足

でも
そんな社会構造って
変だと思いません
なんだか奇妙じゃないですか

なにか得体のしれない大きななものに
振り回されてはいないかと思いません

大河に呑み込まれて溺れそうになってる感じ
どうすることもなく
その流れにそって生きてゆくしかないという
わたしたちの頭の中でできあがった観念の大河に

マネー
それが正体です
みんなの考えてるカネが束になったのがそれです

姿かたちがみえないから
現代版の仮想怪獣ともいえそうです

貪瞋痴を越えたというか
貪だけが異常に強大化され
醜く膨れ上がった顔をもつ怪獣です
バランスが非常に悪い

昔の人が貪瞋痴を回していても
ひとりの話です
ひとりの問題です
ごく単純
いまから思えばですけど
かわいいものだった

それが
今カネ自分だけになると
人を超え国を超え世界にゆきわたってます

このからくりのすごいところは
まず痴=バカを世の中にいっぱい作りだすことからはじまります
そこは昔の貪瞋痴と同じですね
そうしておいて欲望の油そそぐ
火に油というやつです
強大な炎になります
消防に当たる人はほとんどいないので
その炎はみるみる瞬く間に世界に広がります

そのあとどうなるかって?
それはここでは言わないことにしましょう

それより
よく考えてみることです
自分の内の言葉を聴く
そうすればおのずとわかってくるはず

貪瞋痴と今だけカネだけ自分だけ

貪瞋痴と今だけカネだけ自分だけ

現代版の「貪瞋痴」ってなんだろう。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-05-05

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