スーパーボール

北上八三

あの当時のバスケットボールって言ったらもう、それはもう

最近でもないが、でもまあつい最近、ドコモさんが提供しているdヒッツというサービスでaikoさんが聞けるようになった。
「こ・・・今度は大丈夫なんだろうか・・・」
ちなみに、それ以前にも一度dヒッツさんでaikoさんが聞けるようになったことがある。その時、まあ定番だけど私は花火とかボーイフレンドとか、そういうのをマイヒッツ登録して聞いていたんだけど、でも何でかすぐに聞けなくなってしまった。確か一か月とかそこらで。もしかしたらもっと短かったかもしれない。体感的には一週間程度で聞けなくなったような気さえする。

当時はその急な事態に結構えーってなったけど、でもまあ利用させてもらってるユーザーである以上その決定に逆らうこともしなかった。縁がなかったんだろうなと諦めた。わりかし諦めることに抵抗がない。私というのは。

それが最近何があったのか、また聞けるようになった。
「今度もまたすぐ消えたりしないだろうか?」
そう思いながらも、多少怖がりながらもとりま花火とかボーイフレンドは改めてマイヒッツ登録した。しかし一か月に10枠もくれるようになったdヒッツである。ボーイフレンドと花火をマイヒッツ登録してもまだ8枠も残っている。それにaikoさんのプレイリストを見るとそれ以外にも曲数が死ぬほどある。

これは、
「いい機会だし・・・」
子供の頃は聞いてこなかったけど、でもいい機会だからと聞いてみることにした。そして手当たり次第にいいと思ったものをマイヒッツ登録していった。最初は5曲くらいっていう気持ちだったけど、でもすぐに考え直して今月の10枠は全部aikoさんでいいという気持ちになった。

「おおおう」
そして最終的に14曲をマイヒッツ登録してその日は寝た。頭が疲れていた。「これはマイヒッツ。で、これはいいかな、でも、あ、どうしよう?」っていうので疲れていた。子供時分に行っていたカセットテープに自分の好きな曲を好きな順番で入れていくみたいな感覚があった。マイヒッツ登録するしないというのにはそういう感覚があると思う。まあぶっちゃけdヒッツの最初の頃は毎月3枠しか登録できなかったから、今以上に選曲にシビアにならなくてはいけなかった。でも10枠となると10枠で、それはそれで広く見れる、捉えられるようになったものの、きついものはきつい。広がった分きつくなることもある。マイヒッツが14曲になっちゃったのもそういうのの表れである。

だからとにかくその日は寝た。思った以上に疲れていたのか横になったらすぐに意識が途切れた。

そしてあくる日からaikoさんが気軽に聞ける環境がある生活になった。
「ありがたい」
耳にイヤフォンを突っ込みながらそう思った。ありがたい時代になったものだ。

んで、今回マイヒッツ登録したものの中で、特に私が聞き流してるのはおそらく恋のスーパーボールという曲である。カルピスウォーターのCMソングになったことがあるらしいが私の記憶にはない。あるいは埼玉に住んでからはもうほぼテレビとか観てないからその時にやってたのかもしれない。

その曲がすごいいい。一日中リピートして聞いてることもある。もちろんたまに花火とかボーイフレンドに移行する事もあるが、でも結局またスーパーボールに戻る自分がいる。

しまいにゃ、オープニングのててて、てってての所で、もう「おおおお!」ってなってる。

そんで、あるいはそれだからなのか、スーパーボールを聞きまくって生活してたら、不意に、ほんと不意に、
「そういえば、子供の頃駄菓子屋さんでスーパーボールの三等賞当てたことあったよなあ」
っていうのを思い出した。

子供の頃、秋田の頃、近所にあったおばあさんのやってる駄菓子屋さんに友達と行って、そこでなけなしのお小遣いを使ってスーパーボールくじを引いた。いつもは小さな外れのスーパーボールだったのに、その時に限ってなんでか知らないが三等が出た。
「おおおお!」
ってなった。だって三等は外れの木っ端な流星群みたいなのとは違って、惑星みたいにしっかりと自己主張してる大きさだったから。
「しかも・・・確か」
そうそう、確かバスケットボールのデザインだった。

そうそう。そうそうそう。

「あの当時のバスケットボールとかなあ」
スラムダンクがまだ連載してたからなあ。

それはもう友達から貸せ貸せとなったものである。だからその後すぐに公園に行って皆でスーパーボールを跳ねさせて遊んだ。

三等の貴重なスーパーボールに土がついてしまうのは嫌だったけど、でも結局私も最後は飛ばして遊んでいた。確か。

懐かしいなあ。

「・・・」
で、それからどうしたんだっけ?

えっーっと、

確か、五時になるまでそのまま公園で遊んで、そんで市役所のチャイムが鳴って、それで友達と別れて家に帰ったんだよな・・・。帰り際そのスーパーボール貸してくれって言った友達もいたけど、でもそれは許さなかった。確かそう。当時の私の性格的にもそれは間違いない。

それから・・・、

「あ!」
無くしたんだ。あーそうかー。思い出した。

家までの帰り道、スーパーボールを跳ねさせながら、今日はお風呂にも持ち込もうとか思ってた時だ。不意に地面に落ちて跳ね返ってきたスーパーボールの弾道が不自然になった。地面に小石かなんかあったんだろう。それによって想像しなかった方向に跳ねあがったスーパーボールを私はキャッチできず、そのまま。

「見失ったんだよ」
あー。

この世の中で見失ったスーパーボールほど見つけにくいものはない。

その後周りを結構探したけど見つけられなかった。太陽も沈みあたりも暗くなって、それで結局。

「泣きながら家に帰ったなあ」
懐かしい。それであくる朝も探しに行ったけど、結局見つけられなかった。三等。誰かに拾われて持っていかれたのかもしれない。三等で大きくてバスケットボールだものなあ。スラムダンクだってやってたんだものなあ。

三等。あーあ三等。

あとにも先にもスーパーボールくじで三等を当てたのはその時だけ。こうして考えてみたら束の間の邂逅だったなあ。でも結局そんなことも忘れていた。今日まで忘れていた。まるでスタンドバイミーの最後みたいに。どんなことも、どんな記憶でも、やがてちょっと顔を合わせるだけの関係になるもんなんだなあ。

「懐かし」
aikoさんの恋のスーパーボールを聞いてたらそんなことを思い出した。

だからその日のアメブロに書こうと思った。
「懐かしいですねえ」
みたいな感じで。dヒッツでaikoさんの恋のスーパーボールを聞いてたら子供の頃のそんな記憶を思い出しましよって。まあ、いいんじゃない?って。

ただ、

その後、ベランダに干してた洗濯ものを取り込んでる際、一着の服に妙な違和感が、なんか膨らみがあって、
「なんだ?」
と思って手を突っ込んで取り出してみたら、あの時、あの子供の頃に無くしたはずのバスケットボール型のスーパーボールが出てきて、ぎゃあってなったから書いてない。

驚きすぎて腰ぬけて動けなくなった。

寝て忘れよう何かの間違いだと思ったけど気になって全然眠れなかった。恋のスーパーボールの歌詞みたいに。

スーパーボール

スーパーボール

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-05-03

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