それでも君は。

nana

俺はあの時、君をひどい奴だと思った。

「おぉ、ひな!久しぶり!」

「えっゆうと!?なんで!こっち来るなら言ってよー」

俺は4年前、親の転勤でヨーロッパに引っ越したが、またまた親の転勤により一週間前、またこの町に戻ってきた。
4年間会えなかった彼女のひなには、とても悲しい思いをさせただろう。でもこれからはずっと一緒にいられるのだ。

「ねぇ、ケーキ買って帰らない?ゆうとのお帰りパーティーしたい」

「おぉ、いいな!」

「ゆうとはショートケーキだったよね。この先に新しくできたケーキ屋さんのショートケーキめっちゃおいしいんだ!
 あ、でも残ってるかなー。運良ければ一個ぐらいありそうだけど…」

「そんなにおいしいの?」

「うん、もうやばいよ」

「んじゃ急ぐべ」



「最後の一個だったねー、走って疲れちゃった」

「あれは走った内に入らねぇよ笑」

「え、全力だったよ!!」

「相変わらずだな笑」

「そう、だね…」

俺はこの時あいつの顔が一瞬曇ったなんて気づきもしなかった。



「ねぇ、そういえばさ、進路どうするの?もうすぐ三年だし、さすがに決めないといけないよね」

「そうだなー、俺はあんま頭よくないからいける大学だったらどこでもいいわ」

「そっかー、大学で離れたくないなー」

「んじゃ俺勉強頑張るから、一緒の大学行こうぜ、で、一緒住もう!!」

「そうだね…」

「どうした?具合悪い?」

「いや、受験のこと考えて吐きそうになってた笑」

「なんじゃそら笑 お前頭いいから大丈夫!!」

「うん、そうだね!」



そして俺たちは三年に進級した。ひなは文系、俺は理系でクラスが別々になってしまったけど、楽しい日々を過ごしていた。




「え?アメリカの大学に行きたい?急になんで」

「俺さ、今まで自分に甘かったけど、お前とちゃんと向き合って、やっぱ今のままじゃダメだなって思って。
 だから…」

「なんでアメリカに行っちゃうの?日本の難関大学にすればいいじゃん!」

「....アメリカで色々なことを見てきたいんだ。ごめんひな、これだけは譲れない」

「そっ...か。うん、ゆうとがそういうんだったら応援する。私も志望校に受かるよう頑張るね!!!」



その日から、俺はアメリカの大学に行くための勉強が始まった。気が緩まないようにするため、ひなと連絡するのも控えようと、必要のない時はスマホの電源を切るようにした。すると、初めはE判定だった第一志望校も最終的にはB判定にまでなった。
勉強で全然構ってあげられなかったひなに、この結果を見せたいと思って彼女のクラスに走って行った。
しかしそこに彼女はいなかった。ひなの親友で彼女と同じクラスの岩崎瞳が、
ひなは最近学校に来ていないし連絡も取れない、心配になって様子を見に行ったが、家には誰もいないようだった
と教えてくれた。自分も心配になって連絡してみたが、すぐに返事はなかった。
一週間後、親戚の用事でドタバタしていて連絡できなかったと、岩崎と一緒にひなが俺のクラスにやってきた。
俺が模試の結果を見せると、彼女は自分のことのように喜んでくれた。俺は彼女を幸せにしたいと思った。


俺は無事にアメリカの大学に合格し、ひなも第一志望校に合格した。

俺がアメリカに発つ日、ひなは空港に来てくれなかった。俺はものすごく腹が立った。

「彼氏がアメリカに行くってのにあいつは何をしてるんだ!最近LINEの返事も冷たいし」


後ろから声がした。

「ゆうとっ!!」

俺は思いっきり振り返った。
しかしそこにいたのはひなの親友の岩崎だった。

「これ、ひなから…」

「ひな、どうしてこないんだ?何か用事があるのか?」

「...寝坊したんじゃない??笑」

「あいつ....帰ってきたらしばいてやる」



けど、大学に入学してから最初の長期休みの間、俺は日本に帰ったが、そこにひなはいなかった。
俺がアメリカの大学に行くと決めた日、彼女の持病が悪化して、たびたび入院してたらしい。
ひなは肺の病気を持っていたらしい。岩崎から病気について聞いた時、俺の世界は真っ暗になった。
彼女の両親と岩崎に、なぜ病気のことを教えてくれなかったのか聞くと、ひなに口止めされていたからだと答えた。

ひなが、俺がアメリカの大学に行くといったとき反対していたのはこのためだったのか...
ごめんな、気づいてやれなくてごめん....

公園のブランコで彼女との日々を思い返していると、彼女の母親が一枚の手紙を持ってきた。封筒にはひなの字で“ゆうとへ”と書いてあった。あまりにもでかい封筒だったので泣く準備をしたが、中の便箋にはたった一言、

“お元気で。”

としか書いてなかった。あの野郎、好きなやつにこれひと言か?もっと書くことあるだろう笑
と思ったが、便箋には隅々まで書かれた文字の跡が残っていた。泣いていたのだろうか、一部分だけ色が変わっていた。そこには
“会いたい人がいたなら”と、にじんで消えなくなった文字が残っていた。


あぁ、ヨーロッパで出会ったアメリカ人の可愛らしい女の子に会うためにアメリカの大学を目指した俺に天罰が下ったのだろうか。

それでも君は。

それでも君は。

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更新日
登録日 2020-05-03

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