ハクトウワシ

北上八三

かっちょいいなあって思いました。

ゴールデンウイークも不要不急の外出は自粛するという事でニュースとかでも言っていたが、散歩くらいはいいだろうと思って市役所まで散歩することにした。
「散歩くらいはいいだろう」
多分。これでコロナにかかったら他人からなんて言われるかわからないけど。凄い量の罵声とか浴びせられたりしたらどうしよう。泣いちゃうな。泣いて土下座とかすることになるのかな。

とはいえ、もう家を出て歩き出してしまったのでどうにもならないんだけど。

まあ朝の早いうちだし大丈夫だろう。そんな感じで自分を納得させて市役所に向かった。非常事態宣言とかも出たのに暢気なことだ。

でも散歩くらいいいじゃない。散歩っていいものです。どういう原理なのかわからないけど最中に何か思いついたりもすることあるし。お話の事とか。どういう原理なのか全くわからないけど。血が廻るからなのか、あるいは呼吸するからなのか、それとも歩くことで何かが刺激されるのか。私にゃ全くわかりゃしないけど。

とにかくまあそんな若干の不安を抱えながら歩いた。歩道もない道の端を歩き、高速道路の下の信号を渡り、家々を眺めながら市役所に向かった。いつもに比べると歩いてる人が少ないようにも感じるが、そもそも考えてみたらそんなこと意識したことがない。それに車なんかは結構ビュンビュン走ってる。人だって全くいないわけじゃない。なんだ、私以外の人だって結構外出してるじゃん。そう思うと心に安堵感が湧いた。あるいは私以外の人は皆重要至急の外出なのかもしれないが。でもまあさすがに今このタイミングで、不要不急が自分一人ということは無いだろう。

そう考えると散歩を楽しむ余裕も出てきた。天気も良かったしビタミンDの摂取チャンスだ。

そんなことを考えているといつの間にか家と市役所のちょうど中間くらいにある公園まで来てしまっていた。え、ああもうここ?と、驚く。意識がずっとコロナ関係に向いていたので気が付かなかった。

公園にはまだ朝早いからなのか誰もいなかった。朝の公園と言えば老人の一人や二人はいそうなものだが特に見当たらない。もしかしたらその人らは自粛しているのかもしれない。

公園の規模はそれほど大きくもなく、遊具は滑り台とか、あとぶら下がるやつとかあったが、それだけでなんてことない公園である。それから端に木々が多少生えている。

学校が休みの子供とかこういうところで遊ぶんだろかなあ。それとも全く家から出ないんだろうかな。出させてもらえないんだろうか?

そんなことを考えながら脇を歩いていると、急にその木々ががさがさと音を立てた。

「え?」
何?何だ、と思って立ち止まり注視していると、夏に向けて青葉をたたえたケヤキだかプラタナスだかわからないけど、あるいはまったく違う木なのか全然わからないけど、その木々の中の一本の根元にスーッと旅客機みたいなソフトランディングで鳥が一羽降り立った。

大きくて頭が白い。嘴も黄色い。カラスとかとは違う。茶色い羽根のとても大きな・・・。

「トンビ?鷹?鷲?」
何事にも興味の薄い私なので、動物とか鳥の事とかも全然わからないから、あれなんだけど。

とにかく鳥。大きな鳥。茶色くて頭が白くて嘴の黄色い大きな鳥。

そんなのがいた。公園に。まあ市役所の奥の方は川とか流れてて川の向こう岸の方は山とかあるから、その辺から来たのかなー。

そんなことを考えつつじっと立ち止まって見ていると、その大きな鳥がこちらを見て、がっつりと私と目が合った。

「うわあ・・・」
目ぇ鋭。怖。

写真でも撮ろうかと思ったが、あいにくスマホとか家に置いてきてる。まあ散歩だし。

「はいはい、行きますよもう」
その後もその鳥はずっとこちらを見て視線をそらさなかったので、自分は邪魔なんだろうと空気を読んでまた歩き始めた。空気を読んだ。

その後、家に帰ってパソコンで『頭白い 大きい 嘴黄色い 鳥』とかで調べてみると、ハクトウワシというのが出てきた。

珍しいらしい。しかもウィキの情報だと、日本だと国後とか北海道にしかいないらしい。

でも、人が飼ってたペットだったという可能性もあるしな。そもそもそれかどうかもわからないし。確かに目つきは鋭かったけど、でも確証はない。私別に野鳥の会の人じゃないし。

もう一回公園に行って、今度は自転車かなんかでしゃー行って、写真でも撮ってインスタにでもあげようかどうしようか迷ったが、でもまあ結局行かなった。

まだいるかどうかもわからないし。ただ単に人のペットが朝の散歩をしていた可能性だってあるしな。

それにハクトウワシっていう名前を見た瞬間、頭の中に白桃鷲っていう文字が浮かんできて、多分正解は白頭鷲なんだろうけど、でも白頭よりも、私の人生は白桃の方にお世話になってるから、だからそういう変換が頭の中になされたんだろうけど。でもそれだから、
「白桃鷲ってなんだよ!」
っていうのが頭の中で発生して、
「缶詰かぶってんのか?」
っていう事が頭の中で充満してしまったので、だからもうこれ以上はいいかなって。

「頭が桃型なのか?」
そのおかげでこういう話も書けたし、だからもういいかなって思う。

ハクトウワシ

ハクトウワシ

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-05-03

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