梅雨明け
ながいながい睡りから
ようやく目をさましたような
そんな不思議な心地でした
くらいお部屋が好きだったのですけれど
ふと その優しさに疲れてしまって
ひとつき振りでしょうか
ひとりでお外をあるいていました
雨あがりの路々からたちのぼる
ランドセルをしょっていた時分を
髣髴とさせます
どこか懐かしいにおいと
木陰に密生しています
妖しくも淋しげなお顔をしています
なまえも存じ上げないお花の
コケティッシュな香に
起き抜けの頭を交互に攪拌されて
どうしようもなく
くらくらしてしまいました
麗らかなお天道様のもとで
いつになく
悒鬱なノスタルヂイを感じています
雨が降っていなくても
傘を差したくなるときというのは
往々にしてあるものなのです...
私
おとなになりたくないのです
嫌です
おとなになんて
おとなだなんて
そんな酷いこと...仰らないでください
無邪気なままで死ぬことができたら
どんなに幸福だったでしょうか
私はおとなではないのです
決してないのです
孤寂の魔物に取り憑かれているだけの
邪気を纏ったこどもなのです
ああ...忘れることであの頃の無邪気さを取り戻せるのなら
あとどれだけ
孤独に耐え忍ばねばならないのでしょう?
亡骸に話しかけられているような
お外にいるのに
ここも私のお部屋のような...
私が"本当に"天に召された暁には
二度と優しくしないでください
ながいながい睡りから
ようやく目をさましたような
そんな不思議な心地でした
梅雨明け