梅雨明け

ながいながい睡りから
ようやく目をさましたような
そんな不思議な心地でした
くらいお部屋が好きだったのですけれど
ふと その優しさに疲れてしまって
ひとつき振りでしょうか
ひとりでお外をあるいていました
雨あがりの路々からたちのぼる
ランドセルをしょっていた時分を
髣髴とさせます
どこか懐かしいにおいと
木陰に密生しています
妖しくも淋しげなお顔をしています
なまえも存じ上げないお花の
コケティッシュな香に
起き抜けの頭を交互に攪拌されて
どうしようもなく
くらくらしてしまいました
麗らかなお天道様のもとで
いつになく
悒鬱なノスタルヂイを感じています
雨が降っていなくても
傘を差したくなるときというのは
往々にしてあるものなのです...

おとなになりたくないのです
嫌です
おとなになんて
おとなだなんて
そんな酷いこと...仰らないでください
無邪気なままで死ぬことができたら
どんなに幸福だったでしょうか
私はおとなではないのです
決してないのです
孤寂の魔物に取り憑かれているだけの
邪気を纏ったこどもなのです
ああ...忘れることであの頃の無邪気さを取り戻せるのなら
あとどれだけ
孤独に耐え忍ばねばならないのでしょう?
亡骸に話しかけられているような
お外にいるのに
ここも私のお部屋のような...
私が"本当に"天に召された暁には
二度と優しくしないでください
ながいながい睡りから
ようやく目をさましたような
そんな不思議な心地でした

梅雨明け

梅雨明け

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-04-22

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