マスターの相談喫茶2

注意事項
①このお話はフィクションです。
②この作品は、男性1人と女性2人と男女どちらでも良きが1人の合計4人声劇であります。

マスターの相談喫茶2

〔登場人物〕
・小野井 明正(おのいはるまさ/男)…“カフェ=リオール”の店主。53歳。
・横野 恵理(よこのえり/女)…女子高校生。
・国本 智子(くにもとともこ/女)…女子高校生。横野と同級生。
・N(ナレーション)…可能であれば男性で。女性でも可。


N:ここはカフェ=リオール。マスターとの会話が楽しめる喫茶店として有名だ。つい先日も、ここで人生相談をした女性が幸せな家庭を築くという嬉しい報告があったばかり。

さて、本日はどのようなお客様と会話を楽しむのでしょうか?


小野井:本日は月曜日ですが祝日です。子供さんがいらしてもおかしくはありません。

お、早速いらしたそうですね。いらっしゃいませ。


N:来店したのは2人の女子高校生。どこの学校かはわからないが制服を着たままやってきたらしい。

横野:でさ、アイツ私よりも頭が悪いのに「こっちは平日でも7時間は勉強しているんだ!」って言い張っててさ。馬鹿だよね。

国本:…え?そう??
確かに、頭は貴女よりも悪いわ。でも、そう思えるのも今のうちなのかも…。

横野:まっさかぁ~!あのクズキモオタクの葱澤(ねぎさわ)がだよ?私を超えようだなんて、高校を卒業しても無理ね。

アタイに言わせりゃ、分かりきったことよ。

国本:(本当にそうかなぁ?)


N:2人は、とある生徒との学力の話で少し揉めているらしい。

小野井:そこの女子高校生の御二方、いらっしゃいませ。

横野:あ、“おっさん”!どうも!

国本:…どうも。

小野井:何だか、早速私の事を“おっさん”呼ばわりしている方がいるようで。

横野:だって、おっさんはおっさんじゃん。見た目からしてそうでしょ?

国本:ちょっと、横野さん…。流石にそれは言い過ぎだよ…。

“マスター”と呼べばよろしいでしょうか?私の横野が申し訳ありませんでした。

小野井:いえいえ。わざわざ謝っていただくだなんて。
まぁ、とりあえずこちらを。

国本:あ、ありがとうございます。

小野井:…その、横野さん、という方が自分は頭がいいと自負しているのでしょうか?

国本:…え、えぇ。端的に言えばそうですね。

横野:…ま、アタイなんてそこまで勉強しなくてもテストではいつも上位だし模試も上位ランカー。アタイを見縊る(みくびる)のが悪いの。それと、アタイをギャフンと言わせられる人なんていないんだから。

国本:…あ、私も自己紹介を。“国本”って言います。

小野井:国本さん。話しの方は聞かせていただきました。

学力差別、とでも言うべき内容の虐め(いじめ)を彼女が?

国本:そうなんです。

横野:あ、おっさん。もっちゃんとアタイにオレンジジュース頂戴。

国本:横野さん!!

小野井:まぁまぁ。
(もっちゃんとは、国本さんの事を指しているのでしょう。)

横野さん、少しこちらからお話をしてもよろしいでしょうか?
ただし、私の事は“マスター”と呼んでくださいね?そうしないと注文した品はご用意しませんよ?

横野:何でそう呼ばないといけないのさ?注文したんだから、用意するのが普通でしょ?

小野井:確かに、貴女のおっしゃる通り。ですが、流石にスタッフを“おっさん”と気軽にタメ口で呼ぶのはよろしくはないですねぇ。


N:今、小野井は少しキレている。おっさん呼ばわれを数回もされたら堪った(たまった)ものではない。上から目線の注文も気に食わない小野井。怒りが頂点に達したら最期である。

小野井:国本さん。こちら、オレンジジュースです。

国本:ありがとうございます。

横野:私も!

小野井:国本さん。貴女がたは高校3年生でよろしいでしょうか?

国本:えぇ、そうです。

小野井:横野さんにいくつか質問を。①貴女は既に進路は決めていますか?②私、最終学歴はどれくらいに見えますか?

横野:じゃあ、答えるわ。前者はYes。地元のそこそこの私立大学に指定校推薦で入ったわ。後者は、専門学校かしら?何かはわからないけど、“外見”がね。

小野井:なるほど。ではもう1つ追加で質問を。③大学のランク・偏差値を教えてください。

横野:BGU、備南学院大学よ。偏差値をランク付けするなら、13段階中、12かしら?余裕だったわ。

国本:…。

小野井:なるほど。
ちなみに、葱澤と呼ばれる男性はどこに?

横野:北川大学(きたがわだいがく)ですって。偏差値は先ほどの段階では5かしら?今のままでは受からないんじゃないかしら?

小野井:国本さんに質問します。貴女は受かると思いますか?

国本:…受かると思いますよ。

横野:え?!

国本:横ちゃん、ごめんね。

私は、彼の努力が実ると良いなって思っているの。ここまで本気で頑張る姿ってやっぱりかっこいいって思うの。確かに、指定校推薦で受かって終わるのは羨ましいよ。でもね、何だかな、ってね。正直。

小野井:国本さん。貴女はわかりみが深い。

こちら、サービスでパンケーキをご用意しました。

横野:え?!ずるい!!!

小野井:実は私、北川大学の出身でして。後輩君ができると思うとが心から嬉しくて。

横野:…。

小野井:北川大学を侮辱するのも許しませんが、それ以上に…。

“人の努力を踏みにじるような・貶す(けなす)ような行為は許されませんねぇ。”

国本:…マスター。

小野井:どうぞ。

国本:“もっとアイツに言ってやってください!!”

私の言いたいことを代読してくれていらっしゃるので、もっとやっちゃってください!!

小野井:“かしこまりました!”

実のことを言うと、高校時代はそこまで頭はよくはなかったです。中の中か中の下でした。親にもよく叱られていました。
ですが、その大学でどうしてもやりたいことがあったのでその夢を捨てきれずに死ぬ気で勉強しましたね。今でも覚えています。夜は11時くらいに寝て朝は5時に起床してずっと机で面と向かってましたね。親にも笑われましたがw

横野:…。

小野井:…まさか、横野さんは私を侮辱していませんよね?

横野:ギクッ!

国本:(やっぱし。)

小野井:では、こちらからジュースを用意する代わりに条件を幾つか。

全部で3つです。①“人の努力を侮辱しないでください。”もし、貴女が同じ立場になったら他人(ひと)の事言えませんよ?②“人は見下さないでください。”いつかは自分に罰が当たります。現在の状況のようにね。③“自分を戒める(いましめる)こと”。自分を律(りっ)して行動を省(かえり)みれば自ず(おのず)と自分に必要なことが見えてきます。

横野:…はい。

小野井:今回は、ジュースは出しません。これだけでお腹いっぱいでしょう。また来た際に、結果を報告してくださいね。

勿論、報告してからも継続ですからね?

横野:はい。

国本:マスター、ご馳走様でした!

小野井:では、こちら。もう一杯出す予定でしたオレンジジュースを別ボトルに入れてお渡しします。“サービス”ということで♪

国本:はい!!


N:その後、横野は葱澤を応援し大学合格に貢献。進学後も我を出さずに謙遜する生活を継続した。
それから2年が経(た)とうとする頃、例の2人が再来店。

国本:マスター!

小野井:おや、あの時の御二方。

横野:マスター、お久しぶりです。

紅茶を2つ。

小野井:はい、どうぞ。

国本:マスター、横野さん真面目に勉強して生活していますよ。

横野:あの後、はしゃぐのを一切やめましたね。髪も金髪にしようとも思いましたが、黒髪にしました。落ち着いた生活にスイッチしたら、いろんな方から声をかけていただけるようになって、充実した日々を送れています。

小野井:それならよかった!

横野:あの時の行き過ぎた態度、申し訳ありませんでした。

小野井:更生していただけてよかったです。

国本:マスター。

小倉(おぐら)トーストも追加してよろしいですか?

小野井:えぇ、喜んで!

国本:では、お願いします!

横野:あ、あの…。

小野井:はい、どうぞ。

横野:…私は、オープンサンドウィッチを。

小野井:かしこまりました!

N:こうして、3人は楽しく会話をしながら素敵なひとときを過ごしたのであった。

マスターの相談喫茶、第2話。これにてお開きであります。

マスターの相談喫茶2

訂正情報
・4月22日(水) 本文の一部を修正。
・11月8日(日) 本文の一部を修正。

マスターの相談喫茶2

相談喫茶第2話の登場です!今回のお客様は2人のJK。学力の問題が2人の仲を離しているようで…。この溝がマスターにはどう見えるのか?そして、彼の導き出した答えとは?

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-04-21

CC BY
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