【声劇台本 男1女2】 ヤマアラシノジレンマ

メイロラ

桃子(ももこ)
風華(ふうか)
和司(かずし)


◆◆◆

桃子:ははは、もう、なにやってんのよ。

風華:いやだってさ、お腹すいたってなるやん? 目の前に雪があるやん? たべるやん?

桃子:いや、たべないって、だって人工雪でしょ!?

風華:そうそう、でもおいしそうやったんやもん。食べ過ぎて食中毒起こして強制送還されたよね。先生にめっちゃ怒られて、家に帰ったらびっくりするくらい親にも怒られたわ。

桃子:もーほんとなにやってるのよ。

風華:いやいや、きわめてよくあることやん?

桃子:ありません! ……ほんと、フーちゃんて面白い。

風華:まあね、モモちゃんが笑ってくれるんやったら。私はいくらでも、やらかしてくるよ。

桃子:もーだめだってば! こっちは心配するんだから。

風華:心配して、もっと心配して。私のことだけ考えて、なんつて。

桃子:もー!

風華:あ、そろそろ彼氏かえってくるんとちがう?

桃子:あ、うん、そうだね。

風華:じゃこれくらいにしようか。また電話する。

桃子:うん、ありがとう。

風華:……モモちゃん

桃子:ん?

風華:なんかあったん?

桃子:え?

風華:彼氏さんと。

桃子:うん……

風華:今日は時間ないから、また今度な。でも、いつでも電話してきてええんよ? 私はモモちゃんのためならいつでも空けるからな?

桃子:うん、ありがと。

(和司帰ってくる)

和司:ただいま。

桃子:(小声で)ごめん。(電話を切る)おかえり。

和司:まだ解約してなかったんだ。スマホ。

桃子:え?

和司:いつ解約するの?

桃子:……でも

和司:別にいらなくね? 家の電話あるし、そんなに外、出ないだろ?

桃子:そうだけど。

和司:……電話してたの?

桃子:うん、フーちゃんと。

和司:ああ、風華さんね。

桃子:うん、フーちゃんは私の親友だから。

和司:ガールズトークねえ。カズくんがひどいのー! 私悪くないよねーって?

桃子:そんなこと言ってない! 本当に、くだらないことばかりだよ。フーちゃんが、スキーに行ったとき人工雪食べちゃって食中毒になった話とか。

和司:へー。

桃子:本当にフーちゃん面白くて。話していると楽しいの。

和司:俺といるよりずっと楽しいんだろうね。

桃子:そ、そんなつもりじゃ。

和司:最近俺といるときいつも辛そうだもんな。泣きそうな顔。俺よっぽど嫌な彼氏なんだろうな。

桃子:そんな、そんなことない。

和司:別にいいけど。桃子には桃子の世界があるんだろうし。俺だって桃子に言えることばかりじゃないし。

桃子:……あ、夕飯、なにがいい?

和司:なんでもいい。

桃子:そう……わかった。


(呼び鈴がなる)


桃子:はい?

風華:サープラーイズ!

桃子:フーちゃん?

風華:いやさ、田舎から、ビーフジャーキーいっぱい送ってきたからおすそ分け。

桃子:フーちゃん田舎なんてないよね? それにこれ近所のコンビニの袋。

風華:まーまー細かい事とバストサイズは気にしない。ささ、あがろうか?

桃子:え、ちょっと……?

和司:ああ、風華さん、いらっしゃい。

風華:やあやあ、和司さん、今日もイケメンだねえ。で、いつ私と結婚してくれるの?

和司:しませんよ。何言ってるんですか? 僕には桃子がいるんで。

風華:わかったじゃあ結婚しなくていいから、棺桶(かんおけ)に一緒に入ってくれる? 先に入ってまってるから。

和司:面白い人だなあ、風華さん。桃子とはぜんぜんタイプが違いますよね。だから合うのかな。そうだ俺の田舎から送ってきた美味しいリンゴがあるんですよ。あったよな、桃子?

桃子:うん、あるよ。

風華:いやいや、おかまいなく! 座らせてもらうけど、どっこらせっと。

和司:ゆっくりしていってください。

桃子:じゃ、ちょっと剥いてくるね?


(桃子いなくなる)


和司:いつも桃子がお世話になってます。

風華:いやいやこちらこそ。モモちゃんは、私の天使。マイラバーですから?

和司:いえいえ、桃子は体が弱くてあんまり家から出れませんから。風華さんみたいな人がいてくれて助かってます。

風華:モモちゃんのこと、大事にしてるんやね?

和司:そうでもないですよ。普通です。

風華:普通……そうだね、普通が一番大事で、かつ一番難しいよね。うん、難しい。

和司:何がいいたいんですか?

風華:うーん、なんていうか、さ。

和司:なんですか? 言ってください。

風華:モモちゃん、最近痩せたと思わん?

和司:ええ、ダイエット始めたみたいで。俺はもっと食べろって言ってるんですけどね。

風華:そう、そうかな? うん、まあ、そうかもしれないんやけど。

和司:風華さんは本当にモモのこと考えてくれてるんですね。ありがとうございます。でも、大丈夫です。僕がついてますから。

風華:うん、そうだよね、それはわかってる! でもほら、女同士でしかわからないこともあるというか。だからこれからも、ときどき電話とかするの許して欲しいなって。

和司:女同士……確かにそうですね。

風華:ほんとほんと、まあモモちゃんと私が仲良すぎて嫉妬するのもわかるけど? てか、私もモモちゃんのマイラバーだし?

和司:おちゃらけるのやめませんか、風華さん。

風華:え?

和司:俺に言いたい事があって来たんでしょ?

風華:や、別に……

和司:(じっと見つめる)……

風華:……

和司:へえ。

風華:なに?

和司:変だなお前。

風華:なにがよ?

和司:俺がこうやって見つめたら、目をそらすんだよ。女なら。

風華:は?

和司:お前は目を逸らさない……つまり。そういうことか。

風華:何いっとん? だってイケメンの和司くんが見つめてくれるのに、目を逸らしたらもったいないやん?イケメンな顔をなるべくじっくり脳裏に焼き付けて、今夜のお楽しみにしたいやん?

和司:……しらじらしい。

風華:えー何いってるのー? 和司くん、こっわーい!


(桃子入ってくる)



桃子:りんごできたよ。何の話してるの?

和司:やっぱへたくそだな剥き方。

風華:わ、おいしそう! モモちゃんが剥いてくれたと思うともうそれだけで絶対おいしい!(食べて)うん、おいしい。

桃子:……ありがとうフーちゃん。和司もどうぞ。

和司:おれはいいや。

桃子:そう……。


風華:ごちそうさま。ごめん、モモちゃん。私帰るね。

桃子:え? もう?

風華:うん、ちょっとモモちゃんの顔見に来ただけやったし? 和司くんがイケメンだってことを確認できたし。それにもうすぐ親が帰ってくるからさ。

桃子:そっか、そうだったね、ありがとうわざわざ来てくれて。

風華:そんなそんな、かまわん、かまわん。

桃子:ちょっと下まで送ってくるね。

和司:ああ、気をつけて。

(マンションの下)

桃子:今日はありがとうね。心配して様子見に来てくれたんでしょ?

風華:……ねえ、モモちゃん。

桃子:ん?

風華:うちにこーへん?

桃子:え?

風華:このまま、一緒に私の家にこーへん? いや、ずっととはいわんよ? 知っとると思うけど、私の家もいろいろ事情があるしさ、居心地いいとは言えへんけど。でも、少しだけでも和司くんと離れてみてもええと思う。

桃子:……

風華:ごめんな。本当は私がちゃんとモモちゃんを守ってあげられる環境を作ってから言うべきなんやけど、でも、今日モモちゃんの顔見たら。すごくやつれてて、見てんのつらいんよね。

桃子:フーちゃん。

風華:どう? モモちゃんが決めてええんよ?

桃子:うん、ありがとうフーちゃん。……でも、私、そろそろ戻らないと、和司が心配するから。

風華:心配……そっか、うん。わかった。

桃子:ごめんね、ありがと嬉しかった。

風華:かまわん、かまわん。また電話するわ。

桃子:うん、私もするね。

風華:モモちゃん

桃子:ん?

風華:私はずっとモモちゃんのマイラバーやからね? それだけ。

桃子:うん、ありがと。


(桃子家に戻る)


和司:おかえり。

桃子:ただいま。

和司:風華さんだっけ、桃子のことすごい好きみたいだね。

桃子:うん、私も好きだよ。

和司:俺よりも?

桃子:……

和司:なんで返事しないの?

桃子:決められないよ、そんなの。どっちも大事だもん。

和司:スマホ、解約して。

桃子:ごめん、それはできない。

和司:どうしても?

桃子:うん。


END

【声劇台本 男1女2】 ヤマアラシノジレンマ

【声劇台本 男1女2】 ヤマアラシノジレンマ

  • 小説
  • 掌編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-04-19

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted