息の仕方

さて、なにも聞きたくなくなって、よくわからない星にやってきました。疲れたんです、諍いが。現実なんて死ぬまで続く悪い夢ですから、すこしの間だけ赦してください。そういえば、じぶんの表情って見られないですね。本当の意味で。そういえば、きのうからなにも食べていません。これは本当の意味じゃなくても。ここにはだれもいないし、なにもありません。時計もありません。誕生日に死にたいと思っていたのに、命日に生まれ変わった気分です。あそこにいた頃は不思議でした。なにもしていないのに祝われるのは誕生日しかありませんでした。あのときのまわりの人たちって、一体なにを思いながら、なにを祝っていたんでしょうか。ひとはひとりでは生きられないなんて、どこのだれが言いだしたんでしょうか。心もことばもなければ、ひとりで生きていけるんでしょうか。ひとは忘れる生き物なのに、忘れないでなんて言ったじぶんのことを、いつまで経っても忘れられずにいます。わたしはなにを得たかったんでしょうか。心は言葉で磨かれますから、いくら言葉を駆使したところで、心が死んでいたらなんの意味もありません。はあ、言葉に疲れてせっかく言葉のないところまで来たというのに、今朝から考えることは言葉のことばかりです。言葉以外でわたしを説明することはできないのでしょうか。遠く先では、檸檬がぷかぷか浮かんでいます。いくら言葉を憎み蔑ろにして沈黙を貫いても、じぶんの意思に関係なく、忘れた頃に恋しくなってしまったら、やっぱり腐っても人間なのでしょうね。さて、そろそろ帰ります。