Sleeping catⅠ

※ご注意※

物語冒頭、加々美晶が、香々美晶、となっておりますが、同一人物です。
あと、なんちゃって敬語なので、そのあたりは、なんとなく…
使い方が間違ってたら、こっそり脳内変換しておいてくださいませませ。

(*´`*)

「どうも。」
ずらりと並んだ男性の列。
皆、緊張の面持ち。
「本日は、直接お嬢様とご対面でございます。くれぐれも!失礼のございませんよう…」
老人の執事がお辞儀をして出ていく。
すりガラスのドアの向こうに人影。
皆が唾を飲み込む。
静かにドアが開き、一人二人と若い執事がでで来る。
この男達は、兎之宮令嬢の専属執事達。
最後にエスコートされて出てくる。
「皆様、お忙しい中御苦労様。それでは参ります。」
パーテーションのみで仕切られた所へ入っては出ていく。
出てきた者は、納得の行かないような顔…。
もうすぐ、香々美晶の順番が来る。
1時審査を通り抜けた者は、不思議そうに手や体を見ながら待っている。
「どうぞ?」
「は、はいっ」
何とも可愛らしい彼女を目当てに来るやからもいるという。
たしかに、目鼻立ちが整っていて、可愛いい。
「手を。」
「え?は、はい…」
手のひらをぴったりあわせられる。
「宇佐見、①、合格。」
「はい、お嬢様。」
側の執事がチェックを入れる。
「こちらへ。」
促されて、立ち上がる。
「身長はおいつく?」
「183…㎝でございます。」
「宇佐見、②、合格。」
「はい、お嬢様。」
またもやチェックを。
「?」
「それでは、わたくしを持ち上げられる?」
すっと手を伸ばしてくる。
いいのか宇佐見さんとやらに視線を送ると、優しく頷かれる。
「し、失礼します。」
軽い。
なんて軽い。
小さいからか?
「あらいい眺めね。降ろして頂戴。」
「はい。」
そっと降ろす。
「うん、③、合格!」
「おや。よかったですねぇお嬢様。」
ずいぶんラフなんだな。
「えぇ。それでは、あちらの控えでお待ちください。次の方。」

(なんだったんだ…。)
手の大きさ、身長、腕力。
(お嬢様は何をお求めに…?)
しばらくすると、専属執事が一人入ってくる。
「お疲れ様でしたっ。それではこちらへっ!」
(にこにこ元気なやつだなぁ…)
なんだかこっちもにこにこしてしまう。

自分を含めて5人。
「これから始め」
「いらない。」
すぱっと台詞を被せる。
「他のはいらないわ。」
「はぁ。いいのですか?」
「えぇ。」
並んだ5人は、はてなを浮かべる。
「ええと…香々美…、以外はお帰り下さい。」
場が凍る。
自分に対する憎悪のオーラが刺さる。
「あの…っ」
「どうしました?」
「何故…彼だけなのでしょうか…」
恐る恐る、というようにきく。
「あら?お気になさることでもなくてよ?」
「しかし…納得が行かないのです…」
(俺も聞きたかった。)
「そうね…」
ごくりと生唾を飲み込む。
「手。丁度いいの。それに、顔…。好みだわ。」
かあっと顔が赤くなった気がして、顔を伏せる。
(あんなにダイレクトに好み…とか…)
「あと、人柄も良さそうね。お仕舞い。他に質問は?」
重く沈黙が広がる。
「いいわね、御苦労様。あとで書類を受け取って頂戴。」
専属執事達はにやにやしながらこちらを見る。
あわあわしていると、
「香々美!きて頂戴。」
「は、はい…」

別室へと案内される。
高そうな椅子が、1つ。
(もしかして、俺は床!?)
そんなSなのか!?とぐるぐるする。
「座って?」
「へ…?」
「座って頂戴、椅子に。」
「わ、私がでございますか?」
「ええ。」
失礼します、と座る。
座ると、てくてく寄ってきて、
「よいしょ。」
膝の上に、乗った。
「お、お嬢様!?」
「このまま抱き締めて頂戴。」
「え、え…」
「ゆっくりでいいわよ。」
何はともあれ命令だ。
びくつきながら腕を回す。
「…いい。」
「…え?」
「あなた、いいわ。理想的。」
くるっと振り替えって言うので、顔が近い。
急いで体を反らす。
「…次は…抱っこして頂戴?」
ぴょこんと膝から飛び降りて、腕を伸ばし催促する。
(嗚呼、くそ、可愛い。)
たぶん、自分は今、紅い。
ひょいと抱き上げると、首に回していた腕をするりと外す。
「仲良くしましょうね。自己紹介して頂戴?」
「は、はい…。加々美晶と申します…、晶は…日が3つで…。」
「…限界かしらね。」
宇佐見!と呼ぶ。
ドアが開いて、宇佐見さんが入ってくる。
「どうです?お嬢様。」
「名前言ったわよ。」
「なんと。珍しい。」
「採用採用。」
ぽんぽんと肩を叩かれる。
宇佐見の腕に乗り換えて、頭を撫でられる。
「おめでとう。晴れてあなたは私の物よ。尽くしてね。」
頬にキスされる。
「!」
ふふ、と小悪魔気に微笑んで、退室。
後に面倒な書類や契約、誓約書を書いて、帰る。
と思いきや…。

「おめでとーかがみん!」
控えで見た彼が手を握って祝ってくれた。
「おめでとう。」
「おめでとう。」
幾人もの専属執事達に祝賀され、気分はいい。
「ありがとうございます。」
「じゃあ自己紹介しちゃおうかな。」
たぶんわかるよね、と前置きして、彼は口を開く。
「私は宇佐見わたる。航ってかいてわたるね。こいつらのまとめ役です。よろしく。ちなみに一番長くお嬢様にお仕えしております。」
「よ、よろしくお願いします。」
「はい!おれ!おれは、高崎広樹!一番若いよ!呼び方は広樹かひろね!よろしく!」
「よろしくお願いしますっ」
じゃあ、と自分より年齢層が上の男が立ち上がる。
「俺は江浪。江浪大介。一番お兄さんです。ちなみに男は大嫌いだから、よろしくね!」
「は、はぁ。よろしくお願いします。」
「あとあいつは小牧岳。よくわかんないやつだけど、そつのねえやつだ。」
江浪さんが紹介してくれた小牧さんが会釈する。
「よろしくお願いしますっ。」
「そんなに堅苦しくしなくていいよ。フレンドリーにやろうね。」
「は、はい。」
「かがみん!かがみん!晴ちゃんどう思った!?」
「晴ちゃん…?」
「うん、晴乃お嬢様。可愛いよね!」
「あ、あぁ…」
「おれは晴ちゃん大好きなんだ!おれの晴ちゃんに手ぇ出したら承知しないぞこのこのーっ」
「し、しませんよ!」
「おらぁ、広樹ィ。」
「んだよー。」
ばちばちと最年長vs最年少が火花を散らす。
「晴乃チャンは俺のだっつってんだろぉ!」
「お、れ、の!!」
ぎゃあぎゃあ乱闘し始める。
「加々美加々美。」
「!!」
ビックリした。
「す、すみません、気付かず…!」
「いいわよ?別に。ねぇケーキ食べたいわ。食べましょうよ。」
宇佐見さんに用意してもらって、アフタヌーンティーを楽しむ事に。
「加々美は、今夜のディナーは何が良い?」
「今夜の…ですか…。お嬢様は何がお好きですか?」
「私は小籠包とか好きよ。あとはサラダとか…。」
「お嬢様のお好きなものが、私の好きなもので御座いますよ。」
「あら。それ、素で言ってるの?」
「まあ…、お嬢様のお好きなものを好きになりたいと思っておりますので。」
「素敵。みんなも見習って頂戴ね!」
マジかよぉ、と江浪さん。
おれは自分の好きなもん食いたい!と高崎さん。
僕は好き嫌いないですしね…と宇佐見さん。
俺は好き嫌いがお嬢と被ってるから平気。と小牧さん。
(じ、自由だ…)
「…あなたもっと堅苦しいものかと思っていたでしょう?」
「はい。」
「私、そうゆうの嫌いで。普通に、友達みたいにやりたいのよ。」
ふふ、と笑ってケーキにフォークをさす。
「晴ちゃん晴ちゃん!!おれが食べさしてあげる!!」
「俺も俺も!!」
「じゃあ、高崎が食べさせて頂戴?私は江浪に食べさせるわ。」
「はい、晴ちゃんあーん。」
「あーん。ほら、江浪。」
「お、いいね。」
3つ繋がってパクつく。
「あら、このケーキも美味しいわね。」
「でしょ!おれ的おすすめケーキ!」
「俺はこっちのオレンジのおすすめするぜ?」
「じゃあ戴こうかしら?」
きゃいきゃい楽しそうだ。
「フレンドリーでしょう?」
「ええ。とても。」
「見ていて飽きません。」
「はい…」

ベットに腰掛け思い更けているとドアがノックされる。
「…」
「…その…ええと」
晴乃お嬢様が、いた。
「すみません、こんな格好で…」
ラフにTシャツとスウェットをはいている。
「…なんか、新鮮ね。あなた、寝るときまでもスーツを着ていそう…はいっていいかしら?」
「ええ、どうぞ。」
電気も付いていない、月明かりのみの部屋。
「今夜は月が明るいわね。」
カーテンを開けて、まども開ける。
寒いほど冷やされた風が吹き抜ける。
「…夜の、匂い。」
「…お嬢様?」
「そうよ、話しをしたかったの、あなたと。」
窓を閉めて、ベットに腰かける。
「話…ですか。」
「そう。お互いのこと、言い合いましょ?」
知り合うの、と呟く。
「まずは…生い立ちね、私から話すわ。」
手を手繰り寄せられ、指を絡める。
「大きい手。すっぽり入っちゃうわね。」
「は、はい…」
「私、母がいないの。小さいときに…いなくなってしまったわ。」
(離婚…か?)
「だから私は幸せな家庭を築きたいの。これも1つの夢だけれど。それで…ええと…あなたは?」
「私は…両親のおかけで何不自由なく暮らせました…。なので、親孝行したいと思っております。」
「素敵な夢ね…」
月を見上げ、微笑む。
「私、こんな風に、皆がいるから何一つ自分で出来ないの。お父様は、きっと寂しい思いをさせたくないのでしょうね、それが仇っとなって私は一人じゃ暮らせないの。」
「ならば私達は、一生ついて参りますよ。」
「あら。本当かしら?」
「ええ、勿論ですとも、お嬢様。」
「嬉しいわ…」
目を細めて静かに笑う。
「お嬢様、もう遅くに御座いますよ。」
「…嫌よ、もう少しお喋りしましょ。」
「しかしながら…」
「お喋りして!」
プッと頬を膨らませる。
「…ふふ、分かりました。いいでしょう。それでは何をお話致しましょうか?」
これきた、と顔を輝かせ、頷かれる晴乃お嬢様。
「そうね、加々美、あなたのことがもっともっと知りたいの。」
月も輝く午前1時。
はてさて次のお喋りは…

*fin*

Sleeping catⅠ

此処は何処、私は誰?は、たぶん打ちきり。
もうネタないしね笑

Sleeping catⅠ

  • 小説
  • 短編
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-06

CC BY-NC-ND
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CC BY-NC-ND