本当の敵

とてもそう思います。

バイオのREの3をやってると、どうにも違和感があった。
「なんか、標準が」
勝手に左に動いているような気がする。いや動いてるなこれ。絶対に動いてる。そのせいでさっきからゾンビの頭に標準が定まらない。ただでさえ無駄に活きのいいゾンビ。ふらふらと、くねくねと。そんであーあーとか言いながら迫ってくる。あと掴まれてもRE2みたいにナイフ刺さないし。

それにプラス標準が勝手に左に。

これじゃあ弾が当たらない。いくらスーパーコップでも無理だろう。だって横スクロールゲームの氷の面みたいにすーっと左に動くんだもん。ゾンビに向けてる銃口が勝手に左に。そんであらぬ方向に発砲してしまう。あと私自身も焦ってるから、そういう機微な部分の調整ができない。特に後ろから前からゾンビが来ている時とか悠長にしてられない。心に余裕を持ってやるべきなんだけど、そんなものどこにも存在しない。私の中にも外にもそんなものどこにもない。初見のプレイだからなおさら。緊急回避もうまくできない。捕まれて噛まれるためにステップしてるみたいな感じになってしまう。噛まれる噛まれる。噛まれるために街に出たみたいな感じになってしまう。

「・・・」
ジルさんに申し訳なかった。そもそも操作がド下手な私プラス標準が左に動くコントローラー。スーパーコップがこのようなマイナス要素のためにスーパーコップじゃなくなってしまっている。
「もしわげねえ」
本当に申し訳ない。

いや、それどころか、
「ジルさん!?」
なんか左に動いてません?

アイテムボックスのある場所でどうしたものか、何か、どうにかならないか?何か光明は無いかと思案している時に気が付いた。気が付いて愕然とした。

ジルさんもなんか若干左に動いているのだった。

「なんだおい!」
その時コントローラーは放していた。

本来なら、バイオをやる際に何某かの事を思案するならばスタートボタンを押して、タイムが進まないようにして行うことが義務だ。

しかし現状とこれからどうしたものかと思いながら、まあこのデータは消してロードしてやろうと思っていたので、スタートは押してなかったし、だからこそ、そのことに気が付いた。

「ジルさん!?」
ジルさんも勝手に若干左に歩いてません?

あとカメラワークも左に。

「皆、左に行っちゃう!」

標準もカメラワークもジルさんもみんな左に行っちゃう!

「うわああー!」
一回ゲームを消して、コントローラーを引き抜いた。

そんでコントローラーのケーブルでコントローラー自体をぐるぐる巻きにしてゴミ捨て用に取っておいてたビニール袋に入れた。

ド下手な私と勝手に左に動くコントローラー。せめてどちらか一つでも不安要素を解消したらスーパーコップがスーパーコップたりえるんじゃないかと思った。現在全くスーパーコップじゃないスーパーコップがスーパーコップとしての本来を取り戻すのではないかと。

爆発で車にぶつかっても、卵産みつけられても、ロケットランチャーを撃たれても、決してあきらめないスーパーコップとしての本来を。

押し入れを開ける。

そこには以前アマゾンで買っておいた予備のコントローラーが入ってる。

「すぐですから」
これで不安要素が一つ消えますから。

それでも私の下手さは残りますけど、でも私も頑張りますから。スーパーコップに至るあなたに助力は惜しみませんから。

そんなことを考えて、にやにやしながら予備のコントローラーを引っ張り出すと、

「・・・」
それはロジクールのゲームパットF310であった。

今までずっとXboxタイプのゲームパットを使っていたのに。

なんで予備でこれ買ってんの?昔の私!

ずっとXboxタイプだったのに、いきなりプレステタイプ!

手に全然馴染まない!

ちょっと大きいなこれえ!

なんでこれ買ったの私!?安いから買ったんかこれ!



バイオのRE3の最後、ジルさんは本当に恐ろしいのはウイルスではないというような話をする。

全く同感だった。

同感すぎて涙出そうになった。

本当の敵

本当の敵

  • 小説
  • 掌編
  • アクション
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-04-13

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