Triangle Love
注意事項
①米印はト書きです。読まないでください。
②カッコ内は読んでください。
③この作品は、男性2人と女性1人と、男女のどちらか1人による合計4人声劇です。
④リップ音を含んでいます。苦手な方はご注意ください。
⑤このお話はフィクションですが、お話に出てくるイルカの噴水は事実です。
Triangle Love
〔登場人物〕
男性:コフィ、ケイン
女性:ナイア
男女どちらでも:ナレーター(N)
N:これは、1人の女性を巡る2人の男の物語である。アメリカのロングビーチハイスクールに通う男、コフィ。バスケットボールを得意としチームのキャプテンも担う、次期NBAスター候補。彼は最近、同級生でチアリーディングのキャプテンを務めるナイアのことが気になっていた。校内では高嶺の花とされている彼女に告白をしようものなら自殺覚悟。
コフィ:あ、ナイア。
ナイア:あら、コフィ。今日も練習お疲れ様。こんな時間までシュート練習しているのね。
コフィ:まぁな。チームでの練習はとっくに終わってるけれど、個人的にはもう少しやりたいと思うわけ。調整、っていえばわかってもらえるかな?
んで、そっちもそっちでこんな時間まで何やってんだ??
ナイア:私?私も、ちょっとした練習をね。
コフィ:個人練習?個人プレーも何もチアリーディングでやる事ってあるのか?
ナイア:ストレッチ、みたいなものよ。綺麗なポージングをするために皆に隠れて練習しているの。勿論、身体をほぐすストレッチもやるけど、さっき言ったのはあくまで表向きの名目。裏は貴方と同じ個人練習。
コフィ:キャプテン同士、色々と苦労してるんだな。
ナイア:えぇ、そうね。コーチから何を言われてもやり遂(と)げられるようにしておくのが宿命みたいなものよね。変にプレッシャーを感じるから嫌なのよね。
コフィ:同感だぜ。
…ま、こんなことをグダグダ口にしてもキリがない。しかも、夜の9時。明日は休みだから、どう?俺の家に泊って行くか?
ナイア:ナイスアイデア!ママやパパには後で連絡しておくわ。
コフィ:んじゃ、帰ろっか。
N:互いに同じ立場だから心を開くことが出来る。愚痴だって共感できるものばかり。いや、“当たり前以上”を共有できるのであろう。
その日は言葉通りにコフィの家で夜を過ごした彼女。就寝前、彼はあが彼女にこんなことを口にした。
コフィ:なぁ、ナイア。少し話したいことがあるんだ。
ナイア:ん?何かしら??
コフィ:俺たちさ、なんだかんだで一緒に過ごすこと多くないか?校内以外でもさ、俺の大会・試合の時は応援してくれるわけだし。プラベこそ、そこまで関わりは深くないわけだけどさ。
ナイア:そうね。学校内では何かしら一緒に行動することが多いわね。
おかげで、周りからはカップル扱いされているのよ。“実は付き合っている”とか、“キャプテンはキャプテンじゃないと付き合えない”とか。散々よね。
コフィ:アハハ。
ナイア:笑い事じゃないわよ、本当に。
コフィ:実はさ、俺の周りでも似たようなことをよく言われててね。“次期NBAスター、人生の伴侶をGET”とか噂されててさ。先生にまでその噂が届いててさ。こっちの方こそ笑えないよ。
ナイア:…そ、それは大変ね…。
コフィ:だからさ。いっそのこと、ここで言っちゃおうかな。
“ナイア、俺と付き合わないか?”
ナイア:“勿論、喜んで♪”
コフィ:はい、決定!これで、変な噂は収まるといいけどな。
ナイア:“一難去ってまた一難?”
コフィ:それは考えてなかった…。
コフィ・ナイア:wwwwww
コフィ:それじゃ。お休み、ナイア。
“愛してるよ♪”
ナイア:お休みなさい、コフィ♡
“私も、愛してるわ♡”
コフィ:ん…、ちゅ。
ナイア:ん…、ちゅ♡
N:こうして2人は夜を明かした。
時を同じくして、また別の男。彼の名はケイン。ケンブリッジ大学への入学を高校卒業の2年前に決めているインテリ男。ガリ勉君である。運動神経はコフィに比べれば圧倒的に劣っているが、可もなく不可もなくの平均的である。
ケイン:実は、私には気になっている方が1人いる。“ナイア”という美人さんである。手に入れるのは至難の業とされているが、私ならできる。この“インテリ”という武器が使えるかどうかはわからないが、私にとっては長所。活かせなくはない。
N:この男、是が非でもナイアを手に入れたいようだ…。
翌日。
ナイア:…ん、良く寝たわ。
コフィ:おはよう、ナイア。
ナイア:あら、コフィ。おはよう。
ちゅ♡
コフィ:ちゅ。
朝ごはんの用意をしたから、一緒に食べよっか。食べ終わって落ち着いたら途中まで送ってあげるよ。ちょうどそのタイミングで親父が来るから、それで一緒に家まで送るってさ。
ナイア:ありがとう♡
何か、おんぶにだっこで申し訳ないわ。
コフィ:気にしなくていいよ。
それよりも、冷めちゃう前に食べよう。
ナイア:そうね。
N:一緒に朝食を済ませる2人。午前11時、コフィの父がやってきてナイアを自宅まで届けることとなった。見送りをして部屋に戻るコフィに1本の電話が。
コフィ:ん?誰だ??
はい、もしもし?
ケイン:おい!コフィ!!
コフィ:だぁ!び、ビックリした…
おい、ケイン。急に驚かせるなよ。俺の身体が持たねぇじゃねぇかよ。んで、何の用だ?授業の事なら、俺がそっちに電話を掛けるはずだろ?
ケイン:コフィくん。君自体には何も問題はない。
問題なのは、“君の彼女”だ。
コフィ:ん?俺の彼女?
一体何なんだ??
ケイン:私は君の彼女である“ナイア”を手に入れたいと思っている。
コフィ:はぁ?!何で勝手に俺の彼女を他の男にあげなきゃならねぇんだよ!おかしいだろ!!俺が何をしたっていうんだよ?!
ケイン:君は“私の女”を奪ったのだ。未来の伴侶を盗(と)ってしまったのだよ。
コフィ:…知るかよ、んなこと。
ケイン:君に1つ予告しておこう。
“明後日の夜7時、イルカの噴水の前で会おう”
コフィ:インディやイムサでお馴染みのあそこだな?了解。
(てか、道路の上でやり合うわけじゃねぇよな?絶対に邪魔だぞ。)
ケイン:そう、そこでいい。
“君の彼女は奪うがな。”
N:ここで電話が途切れる。彼の狙いがわかったはものの、彼女の命が危ないのは間違いない。
コフィ:チッ。あの野郎…。
ナイア!ナイア!聞こえるか?!
ナイア:ん!ん…。
コフィ:!
ナイア!!
N:彼はいつの間に彼女を拘束したのであろう…。彼女の息苦しそうな声が聞こえてくる。
コフィ:おい!ケイン!ケイン!!
ケイン:フハハハハ。
残念だったねぇ~。
コフィ:日付の変更を1つ提案する。
今夜の7時、イルカの噴水前。
ケイン:そうこなくては!
コフィ:(ナイア、待ってろ…。俺が絶対に助けてやる…!)
N:そして、夜7時の噴水前。彼女は拘束されたままケインに寄りかかっていた。
コフィ:ナイア!!
ケイン:随分と遅かったじゃないか。
コフィ:テメェ!!よくも俺の彼女に手w…。
ケイン:(※コフィの話を遮るように)
おっと!それ以上口答えをするなら、私にもオプションがございましてねぇ。
N:ケインの手にはハンドガン。ガチャン!と安全装置を解除する音が。
ケイン:さぁ!死んでもらおうか!
コフィ:ケイン!
N:コフィもすかさずリボルバーを取り出す。
ケイン:おっと!そのトリガーを引いたら私の銃を愛する彼女に撃ってしまいますぞ…w
ナイア:ん!!!!!ん~~!!!
コフィ:…。
ケイン:そうですよね!何も手出しできませんよね!
コフィ:(クソ…、どうすれば…。)
ケイン:これで私の勝利は確定。警察に通報したら即座に射殺♪
コフィ:あ、俺のリボルバー!
N:コフィ、肝心の銃を落っことしてしまう。
ケイン:さらばだ!キャプテン!
N:銃声が街に響き、コフィの胸を貫通。
コフィ:グハっ!
ケイン:これで終わりだ!!
N:ケインがセリフを言い終えた瞬間、銃声がもう一発。ケインの胸を貫き、そのままナイアの繋がれていたひもを切った。
ナイア:!
ケイン:んな?!
(※バタっ)
コフィ:…ハハっ。
わ、悪いが、M9(エムキュー)って、いうハンドガンを隠し持っていたのさ…。
(※バタっ)
ナイア:コフィ、コフィ。
コフィ:な、ナイ、ア…。
ナイア:コフィさん!
コフィ:あい、あいらぶ、ユー…。
ナイア:“コフィさ~ん!!!!!!”
N:コフィ、ナイアに一言伝えてここに死す。
何もできないナイア。泣く事しかできない。
ナイア:う、うぅ…。こ、コフィさん…。
N:その後、ロングビーチ高校ではこの事件を謝罪し社会に償いをすることとなった。また、ここでレースを開催する日は黙禱(もくとう)が捧げられ2人の若い命を弔う(とむらう)こととなった。
三角関係が引き起こした悲劇の恋愛物語、これにて完結。
Triangle Love
注釈
・インディ→インディカーシリーズのこと。ここで開催されたレースで、日本人ドライバーの佐藤琢磨が優勝している。
・イムサ(IMSA)→International Motor Sports Association(国際モータースポーツ協会)の略称。アメリカの自動車レースを統括している団体の1つ。”デイトナ24時間耐久レース”や”セブリング12時間耐久レース”が有名。
訂正情報
・4月13日(月) 本文の一部を修正