【超短編小説】匂い

六井 象

 裏路地の塀に沿ってずっと並んだ、窓、そして換気扇。夕暮れ時、裏路地を歩いていたら、その換気扇から吐き出される夕飯の匂いの中に、かすかに魂の匂いが混じっていた。どこかで人が死んだらしい。裏路地を振り返りそっと手を合わせ、私は自分の家に帰った。温かい夕食と母が待つ家に。

【超短編小説】匂い

【超短編小説】匂い

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-04-11

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