人生のメリーゴーランド

 運命の女神は舞う

 それは、常に華やかにそして刺激的に。



 巡り巡る、運命の尊さに、女神はバレエを踊る。



 喜ばしく舞い

 怒りに満ちながらも舞い

 哀れに心を染めて舞い



 楽しげに舞い

 それでも、楽しげに。それすべてを含めて楽しげに。



 女神は微笑む。

 ある一人に、またある一人に……。



 幸と不幸の連続に、女神が退屈することは無い。

 喜びに舞い続ける。その感じることへの素晴らしさに女神は笑う。



 来るべき時に来たと思ったら女神は笑う。女神は気紛れなのだ。



 女神は人々に恋をしては失恋を繰り返す。

 舞って、女神は散る。

 舞って、女神は涙を零す。



 貴方も、今は彼方に行ってしまった。



 女神はそれでも、踊る。

 それがこの世で一番に美しかったから、この世で一番に華やかだったから。



 女神はバレエを踊り続ける。



 大好きな人間と人間の幸福と祝福を願いながら。

 大好きな彼と彼らの勇ましさに見惚れながら。

 大好きな彼女と彼女らの涙を手で拭ってあげながら。

 大好きな人の短き生の美しさに涙を流しながら。



 女神はバレエを踊り続ける。



 女神はバレエを踊り続ける。

 涙を流し終えて繰り返す円環にさえも歓びを感じながらーー



 女神は散った。



 それは、女神の見守ってきた人間よりも遥かに、美しく華やかなものだった。

人生のメリーゴーランド

2019/8/30

人生のメリーゴーランド

とある女神のお話

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-04-11

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