毒の箱

マジでやっている奴ってダセえよなそういった奴がある日居た

その瞬間まわりからマジは居なくなった

そいつが周りの上にいるからだ。

小さな箱の中、俺らは、その中でただ、無い天井を見ているだけでそんな中にも関わらず、上を上とだけしか認識できなくて

上に何かされるのが怖いんだよ
体育だって数学だって、英語だって、マジでやるのが、本気で怖い。

だって、ダセエっていうんだぜ、
たったその一言で、いままで何かが、蔑ろにされるんだぜ?怖いよな、嫌だよな?

でもな立ち上がる気なんてさらさら起きないわけだ。馬鹿になってやりたい事やっている奴はみんな言う

馬鹿にされてもやれと、

ふざけるな! お前に俺の何が分かる。

ダセエよなその一言がなんだ?いや、怖いんだよ、その一言が

ただ井の中の蛙
なら井の中の蛙になっていたい。

才能だとかもうどうでもよくて
才能の定義なんて人それぞれだ、だけどおれは思うんだよ

おれができないことをやってのけるくらいのどっしりとした心があるならばもう立派な才能だと

画面の中でバカやるあいつが格好良くて、憧れで、

でも、嫉妬に代わったのは、あいつの顔が浮かんでからで、

アア、と叫びたい
その「゛」にすべてを詰め込みたい。

ふざけんな! ただ、それだけがおのれの中をめぐり吐き出すのは、自分を偽わった

「そうだよな」

なんて「怯えた目」をして言う
嗚呼バカだ、くそったれ、ペンを折る
何をやっているんだなんて、自責に自責を重ねたら何になるか

『いつだって本気でやっていいるやつがやばい』

誰かの詩を借りた、その字の隙間で見えた、バスケの朝練をするクラスメイト汗身時垂らして、見えた姿は美しかった。

とても美しかった。

でも、ここのどこでもない居場所にいるような気がした。
もう彼は俺らのようなはこの上に立つ様な人間じゃない。
四角い俺らの世界にはもうかれは居ない。

自覚したのはその瞬間、汗が噴き出たのはその瞬間

ことの大きさに気が付いたのはその瞬間

嗚呼、手が震える嗚呼、口が震える

自分を偽るか、隣にいる悪魔が俺に囁いてくるそして自分も偽った。傷つけた、誰かの一生を傷つけた

また己に恥を重ね罪を重ね

ただ成し得ることは何か?
折ったペンを補強して、その傷口をただ見つめるだけだ

マジでやると馬鹿にされるのは何故か

顔はそう語る
けどそれは裏への顔に沈んでしまって、今日も今日とて後悔を重ねる





本当にそれでいいのか?

良い訳がねえ
許される訳もねえ

ふざけるな、
一つ増えた、善悪も知らない槍を向けた

走った

走って走って走りぬいた。

己に課せられた責務は何だ自分がやるべき事は何だただ、

ただ――

その痛々しい傷をなでながら、彼へ立ち向かう事だった

俺が向かうべき先は、彼と同じ場所で
今俺がいるべき場所は、彼と同じばしょではない

そのことは確か

わずかな希望
できないその声に絶えず、怯まず、ただ前へと足を強く踏み込むだけ――


毒の箱独の箱夢の箱

いつだって、どこにいたって、
その声は変わらない――

だから、
屈するな、耳を傾けるな、進め進め進め












鷺沢 歩/蜜柑 猫『あいつ馬鹿だよな(笑)』終わり

毒の箱

毒の箱

誰しもが心から思った毒を吐く。 教室という、小さくも狭い世界の中で。

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-04-11

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted