孤独な自虐
鷺沢 歩
VtuberなんだけどなんだかVtuberじゃない気がする。
かといって、面白い動画を作れるわけじゃないし、3Dみたいな複雑な知識なんてない。
人を楽しませたいけど、楽しませる術を思いつかない。
自分はただの人間だった
何の取り得も無いと気が付いた
何色にも染まらないといえば聞こえはいいが。
それは潔白なのではなく、ただ地べたを這って泥を浴びて結局着色すらできなくなった、黒い人間にすぎないのだ。
何かになれる。
そう信じて、そう願って。
そうありたいと信じて、生きてきた願望はいつしか消えて無くなって、気がつけば、戻れない位置にいる。
そうだった、元から自分は何者でもなく。
何もなかったのだった。
自分には何か秘められている。
そんな血反吐いてまで手に入れて、結局泥だんごのように脆くそして崩れてしまうような物など最初から求めていなかった。
もっと別なものを求めていた。
それを自覚した途端に希望が失せたのだった
彼らは自分にとってそう見えた。
けれど、手にしてしまえば、期待していたのとは違って、嘆いている自分が居る。
そうやって、恥を重ねてた後になってようやく気付いた事実が、くだらない、独善的で傲慢な、追い求めていた「夢」だった。
俺はVtuberになって何かが変わると思っていた
けれども、何も変わらなかった。
最初から分かっていた。何かが変わることなどないのだ。
何も変わる努力をしてない人間が、人に好まれる事を齧りついたとして何になる。
今日も淡々とそう言って孤独な自虐を楽しむのだ
――『孤独な自虐』終わり
孤独な自虐