リケ女! 1μM 入学式

現役バイオサイエンスの大学院生です。
最近よく耳にするリケジョ(理系女子)という言葉の内容に違和感を覚え、本当のリケジョの実態を知ってほしいと考え、投稿しています。
派手な子、おとなしい子、オタクな子。
様々な女子がいるリケ女。
しかし、彼女達は皆
「真面目」
であり、リケ女と分類される共通要素がある。。

私達は、数学ができないからと文系の道を進む多くの友人をしり目に、数学ⅢCを学び、物理か生物か、地学の選択に頭を悩ませ、「論理的」に物事を考える思考を鍛えた。

私はリケジョ。
これは地方国立理系学部に所属するごく普通の女子のお話である。



国立京都先端繊維大学。
京都の北山に理系キャンパス、奈良の生駒に文系キャンパスを持つ国立大学である。
本日は京都のコンサートホールで文理合同の入学式だ。

(ちゃ、茶髪がいる・・・)
私の名前は佐井エンス。(サイエンス)
将来の夢は植物の科学者。

私はセンター試験で8割の正答率を獲得し、国立京都先端繊維大学農学部への入学資格を得た。
高校3年生時の平均勉強時間は平日5時間、休日8時間。
どうしてそこまで必死になって勉強しなければならなかったのか?
それは、農場を持っている大学数が非常に少ないからである。
実際、関西では国公立と1部の私立大学しか農場を保有していない。
農学について栽培を含めて学びたいと思った場合、必然的に偏差値が必要となる。
塾の好成績者に幾度も名前を載せ、できた中指のペンダコは今でも私の誇りである。

そんな自信に満ちた私は、今入学式で茶髪の学生がいることに驚いている。
(そうか、大学は自由だもんなぁ。私も茶髪にしようかな)
合格発表後は燃え尽き症候群で1日中家でゴロゴロする生活をしていたため、受験中と変わらずパサパサの髪の毛をいじる。
(まずは髪の毛を伸ばそう)
よしっと気合を入れて、楽しい大学生活を頭に思い描いた。
(勉強を頑張って、未来に残せるような研究成果を残すぞ)
恋人を作って、飲み会をして、といった学園生活は思い浮かばない。
白衣を着た自分の姿をキラキラした目でエンスは思い浮かべた。
「すいません」
細身のメガネ、ロングヘアーの女の子がエンスに話しかけた。
「私、情報学部なんですけど、入学式の席がよく分からなくて。ここは農学部ですか?」

京都コンサートホールのメインホールは、学部ごとにある程度席分けされている。
エンスが所属する農学部の席は入口すぐのところにあった。
「あ、そうだと思いますよ。情報学部は確か、2階だったと・・・」
上を仰ぐと2階への通路は人でごった返していた。
「あー・・・。どうせこの後は学部に分かれて、それぞれ懇談会やりますし、入学式はここでも良いんじゃないですか?良ければ隣どうぞ」
情報学部の彼女も人で混雑している通路を見た。
「そうですね。ありがとうございます」
隣に座った彼女をエンスはじっくりと眺めた。
(理系っぽい)
「改めまして。情報学部に入学した根戸ワク(ネト ワク)です」
「あ、農学部の佐井エンスです。高校ではエンって呼ばれていたので、良かったらエンって呼んでください。後、同学年ですよね。敬語やめません?」
「そう、だね。エンちゃん。私のことはワクって呼んでね」
「ワクちゃん、情報学部ってことは、センターは物理、化学選択?すごいね。私は物理がどうしてもできなくて・・・」
「私こそ、生物全然できなかったよ。数学だけが取り柄だったから」
ニコっと笑うワクはおとなしそうな、真面目な女の子だった。
「あのー」
ワクと反対隣に座っている2人の女の子達がエン達に話しかけた。
「ここって、農学部の席なんですか?」
「一応、そうですけど」
彼女達は顔を見合わせた。

「間違えちゃったね」
「適当に座るから」
「あの、私も情報学部ですけど、どうせ後に学部ごとの懇親会あるし、別に良いかって思ってる、の」
ため口のワクにつられて。
「そうか、それもそうだね。情報学部なんだ!私は機械学部、こっちは理学部」
理学部と紹介されたセミロングの女の子がペコっと頭を下げた。
「家見ストリ(ケミ ストリ)です」
「私は里木ガク(リキ ガク)。がっちゃんって呼んでね」
ショートヘアーで明るいガクはニコリと元気そうな笑みをうかべた。
「佐井エンス。農学部だよ。エンちゃんって呼んでね」
「根戸ワク。情報学部。ワクちゃんって呼んでください」

「わ、すごいね!ここ4人で北山キャンパスの全学部揃ったよ!」
「後、夜間学部あるけどね。でも大体揃ったって感じ」

「2人は同じ高校なの?」
「そうだよー。同じクラスになったことは無いけど、数少ない理系女子の中だからさ、仲良くなっちゃって。
てゆーか!これからも仲良くしてね!!さっき聞いたら、今年の機械学部の女子、2人しかいないんだって」

「「え!?」」

「120分の2だよね」
ストリはからかうように笑った。
「情報学部の100分の6人もひどいと思ってたのに、もっとひどいんだね。機械って」
「え、情報もそんなに人いないの!?」
確かに理系女子の数は高校でも少なかったが、それほど少ないとはエンスは思っていなかった。
「理系で女子がいるのは農学部と理学部だけだよー」
「特に農学部は多いんじゃないの?」
「うん、確か60人いて、35人女子かな?」
「理学部は80人いて30人女子だわ」
「いいなー。私、もう1人の女の子と仲良くできなかったら、終わりだわ・・・」
ガクはハーとため息をつき、天を仰いだ。
(理系って、すごい環境だな・・・)
改めてエンスは思った。周りを見渡すと男女比は半々くらいに思えていたのだが。
(ここの女子はほとんどが文系なのか)
ふと思い出す。
数学が苦手だと話していた周りの女子。ステリ自身は社会の方が覚えなくてはいけないことが多く、苦手であった。

なぜ、「わざわざ」、理系に行くのかと言われたこと。
農学部に行くと伝えた際、返答に困ったのか「原始的だね」と返答した文系女子。
ステリの心に文系、理系と一本の境界線がハッキリと引かれた。

リケ女! 1μM 入学式

リケ女! 1μM 入学式

私達は、数学ができないからと文系の道を進む多くの友人をしり目に、数学ⅢCを学び、物理か生物か、地学の選択に頭を悩ませ、「論理的」に物事を考える思考を鍛えた。 私はリケジョ。 これは地方国立理系学部に所属するごく普通の女子のお話である。

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-05

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