月のマグマ

何だろう。この話の見出しって何だろう?何もないけど。

ちょっとした所用で実家に帰省することになった旨を姉に伝えると、
「阿仁マタギ駅の近くの打当温泉マタギの湯に売ってるツキノワグマTシャツ買ってきてくれ」
って言われた。

んで、実家に帰省したはいいものの、
「遠いなあ」
阿仁マタギ駅。さすが秋田内陸縦貫鉄道だけある。同じ県内でもこんなに遠いのですか?ってくらい遠い。

片道四時間くらいかかる。運賃も乗り換え乗り換えで5000円くらいかかる。

「遠い!」
リアルに。

「内陸縦貫鉄道はいいよお!」
出発前に姉はそんなことを言っていたけど、でも彼女も乗ったことないんじゃないかと思うんだけど。こんなに遠いのに。秋田に出て、角館行って、そっから内陸縦貫鉄道でやっとこ阿仁マタギ駅。

遠いなあ。

そもそも私だってただ暇で帰ったわけじゃないんだよ。実家のパソコンが壊れたっていうから、あと母の携帯の買い替えの件もあったから。

そして多少なりとも変わったことに対しての質問の受付とかもあったから。
「ここはなんなんだ?」
「ラインってこれで写真送れるの?」
とか、そういうのの対応をしなくてはいけなかったから。

だから、気が付いたらあっという間にまた関東圏に帰る日になっていた。

「嘘だろう?」
嘘だろう?実家のパソコンの件、母のガラケーをスマホに買い替えた件、あと私の学校Ⅳとか天河とかパイナップルアーミーとかの件を終わらせたら、あっという間に帰る日か。

嘘だろう?

もう阿仁マタギ駅にはいけない。

どうしよう。

ツキノワグマTシャツ買ってない。

どうしよう。

怒られる。

カンカンに怒られる。

カンカンに怒られて人格とか何から何まで否定されるかもしれない。

「うわあー!」
もう完全に不謹慎だと怒られるかもしれないけど、コロナになるしかないか!?

いや待て。

まだあきらめるな。

とりあえず何でもいいから、Tシャツを探しに行った。

ユニクロとかイオンとかに。

「ツキノワグマのTシャツ!」
無いですか!?

ありませんか!?

もう何でもいいから。似てるのでもいいから。

そしたらイオンに月のマグマTシャツが売ってた。

「・・・」
これで何とか騙せないかな。

どうだろう?

ツキノワグマTシャツとは似ても似つかない。

全然違う。

まったく違う。

あと一回か二回洗ったらすぐに首元だるんだるんになりそう。

でも、

まあ、

これでいいかなあ・・・。

アメコミみたいな絵の描いてる月のマグマTシャツ。

あとツキノワグマTシャツよりも1000円も高い。

でもまあ、

これでいいかなあ・・・。

月のマグマ

月のマグマ

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-31

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