【超短編小説】神様
六井 象
ある日、仲良くなった他のクラスの××君に「面白いもの見せてやるからうち来いよ」と誘われた。放課後、早速××君の家に行き、部屋に上がると、彼は「これ」と言いながらクレヨンのケースを手渡してきた。「クレヨン?」「開けてみ」カバーをずらすと、ケースの中には、カラカラに干からびた小さい人たちがくぼみに沿って並べられていた。「何これ?」「小人のミイラ」「ふーん」小人のミイラ。「どこで見つけたの?」「物置」「へー」小人のミイラ。「昔、うちのじいちゃんがさ」ぼくの不思議がる顔を見て、××君は話し始めた。「小人たちの神様やってて、物置の隅に国を作って治めてたんだって」「へー」「でもある日おじいちゃんが亡くなって、その後、混乱が生まれて、内乱が起こって、結局全滅しちゃったんだって」「へー」「それで、その死体を、俺とお父さんで物置から片づけることになったんだけど、その時、かっこいい武器持ってるのとか、かっこいい服着てるのだけ拾って、乾かしてミイラにしたんだよ」「なるほどねー」小人のミイラか。「フィギュアと戦わせたりもできるもんね」とぼくが言うと、××君は「やらないよ、そんなこと。ミイラだからボロボロになっちゃうよ」と答えた。「じゃあ、どうやって遊ぶの?」「うーん、遊ぶっていうか、ただ眺めるだけ」「ふうん?」「眺めてるうちに、何か大事なこと、思い出しそうになってきて、その感覚が、何か、面白いんだ。頭がじわじわするっていうか」「大事なことって?」「……それはわからない」そこまで言うと××君は、ぼくの手からケースを取り、小人のミイラをじっと見つめはじめた。その眼差しの真剣さと寂しさに気圧されて、ぼくはそっと新作のゲームソフトを後ろ手に隠した。本当はゲームがやりたかったんだけど。
【超短編小説】神様