だれか

 ケーキは、切り分けよう、六等分。
 だれにもあいされないとおもいこんでいる、きみが、かわいくて、すこし、にくたらしい。夕焼け、空がもえるとき、いっしょにもえたいと思った日の、だれにもすくわれないであろう、じぶんの境遇に、もう、絶望はしていない。映画館にいる、しろくまが、かなしい映画を観たあとに、きまってオレンジジュースをのんでいて、ラブロマンスを観たあととはちがう、しろくまの、毛の感じをたしかめるのが、ぼくは好きだった。かなしい映画のあとは、すこし湿っぽくて、ラブロマンスのあとは、からだの熱が伝導したみたいに、あたたかい。午前二時の、夜のおわり頃に、どうしようもなくおそってくる、ふあん、というものを、どうか夜のバケモノに、喰らってほしいと祈る。星が仮死状態になった場合の、生命維持について、しらないあいだにひっそりと、みんな、ねむっている世界があっても、おかしくはないと思うよ。
(ねぇ、きみはいったい、だれにあいされたいの?)
 きのうみた、動物園のライオンのことが、わすれられないのは、恋だって、そういうことにしておいて、なまえも、わからないけれど、恋におちる瞬間って、たぶん、そういうものだって、いってほしい。だれか。

だれか

だれか

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-28

CC BY-NC-ND
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