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土を被っていた。泥水も啜っていた。ここはどこなんだろう。いまはいつなんだろう。そしてわたしは、だれなんだろう。いや、だれになったんだろう。手の振り方とか、脚の出し方とか、なんだかよく思い出せずにいる。それでも目の前に在る光景を自分の目で確かめたくて、背中の傷を見過ごすわけにはいかなかった。堕落した誠実の味をだれもが嘗試していて、だれもがその不実を偽り隠している。わたしを含めて皆、自分のことを一度殺している。埃を吸っているのはあなたではなく掃除機であるはずなのに、一体なにを落着させた気になっているんだろう。どういう了見なんだろう。穢れを拭わず心を閉ざす。それで自分の咎を都合のいいように解釈して、被害者面して、勝手に気持ちよくなっているだけだろう。それは間違った自己陶酔だ。だれからも恕されることはない。悪役が堕落して英雄に降伏して、和解した気になっているだけだ。自分の核は自分の味方でなければならないだろう。自分の味方を堕落した自分に易々と売り渡すのはやめろ。軽率になるな、他の自分に呑まれるな。救済くらい浅い言葉はないし、救済くらい深い言葉はない。自分の意思も持たずに別人格に迎合して一部分に拘泥しているうちは、救済なんて考えるべきではない。自分に害を加えることを救済なんて言葉で誤魔化すのはよせ。人は人を殺してはいけない。だけれど、みずからの生死を選択するのはあなた自身だ。わたしはこれからも傷つく。傷つくが、死にはしない。ただ自分を偽らずに生きていくだけだ。あなたが死のうが死ぬまいが、わたしの心臓は止まらない。死んだ人を忘れろなんて言っていない。死んだ人のことも大事だけれど、いまいる人のことも忘れるなと言ったのはあなたじゃないか。偽るな、自分を貫け。穢れても転んでも汗で傷を拭って生きる、わたしにできることはただそれだけだ。

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  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-28

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