宇宙人二世 マリア 6

 ただいまぁ。そう言ってマリアは帰って来た。母の佐希子と父のドリューンはリビングでテレビを見ながら寛いでいた。ドリューンは五十歳、沙季子は四十九歳となった。ドリューンはテレビ鑑賞が好きなようで特に漫才のファンのようだ。漫才番組を好んで見て笑い転げている。これが宇宙から来た人とは思えない。顔はイタリア系でも心は完全に日本人だ。もはや佐希子と知り合った当時の特殊能力は消え失せたのか?
「お帰り遅かったね。何処に行っていたの」
「ああ大学の友人に誘われてね。くだらない話で盛り上がっていただけよ」
 すると父のドリューンがマリアに微笑みながら語りかける。
「マリア大学生活は楽しいかい。友達は沢山いるのかい」
「うんお蔭様で楽しい学生生活を楽しんでいるよ」
「そうかいそれは良かった。処で特に親しい友達というか恋人とはいるのかい」
「ふっふふ、もう二十歳よ。恋人の一人や二人居たっておかしくないでしょう」
「なに? やはり居るのか。どうも最近帰りが遅いと思ったら」
「なぁにお父さん。私に恋人が居るといけないの。それとも心配してくれているの」
「そりゃあ可愛い一人娘だもの。気になるさ」
 母の佐希子が笑って二人の会話を楽しんでいる。昔のドリューンと違っていまでは普通の優しい中年のお父さんって感じだった。もはやドリューンは完全にアルタイル星人のカケラも残っていないようだ。結婚した当時は、時おり超能力を発揮して佐希子や周りの人を驚かせたものだ。ドリューンが超能力を使うたび佐希子は激しく叱咤した。人に怪しまれる事をして人間じゃない事が知られるのが怖かったのだ。ドリューンから取り上げた不思議な機械は今でも倉庫の奥にしまってある。しかし未だにどう処分して良いものか困っているらしい。

 数日前からマリアは両親に頼み離れにある倉庫を改造して自分の部屋にしたいと頼んであった。両親も年頃の娘だしプライバシーも必要だろうと快諾し近くの業者に頼み現在工事中である。マリアは八王子まで買い物に出た。此処には日本だけじゃなく世界中から集めた沢山の種を売っている。マリアは果物の種や野菜などを買いそろえた。種だから大して量にならない。その他に頼まれもしない水を何種類か揃える事にした。井戸水、海水、川の水などを揃えた。それから一週間が過ぎ離れ部屋が完成した。早速マリアはアルタイル星人が送って来た金属の箱から試験管のような物にマリアの血液を採取して入れ、他の管には各種の水を入れた。これで約束の物は揃った。そして楽しみにしていた金属の箱を開けた。ひとつは例のパソコンのような物。もうひとつは金属なのか石なのか分からないが二種類入っているだけだ。マリアは少しガッカリして呟いた。
『私は科学者じゃないのよ。鉱石かただの石か何か分からない物を分析しろと言うの。まさか売って金に替えろというんじゃないでしょうね。もし宇宙からの石として何処で手に入れたと追及されるだけよ』
 苦笑いを浮かべてマリアはパソコンのような物を取り出した。十インチほどの画面だがキーボードは付いていない。初めて手にするのに慣れた手つきでマリアは画面の上に手を当てた。すると丸い円の輪づくの光が浮かび上がった。なんと其処には立体の画面になっていて空間に日本語が浮かび上がった。
 『ようこそマリア。私を仮にドレーンと呼んでくれ。君の疑問はここで説明出来る。その鉱石が二個あるはずだが。最初に赤みがかった鉱石はエネルギーを半永久的に産み出す。地球では電気を作る為に石油や原子力発電を使うそうだが石油は無限にある物ではない。原子力発電はある程度無限だが危険が伴う。この鉱石を使って電気を作れば燃料は不要だ。これ一個で火力発電所に匹敵する電気を作り出せる。地球にない鉱石だが地球にある三つの鉱石で似たような物を作れるはずだ。あとは科学者達で研究すればよい。いずれ無限のエネルギーを得られるだろう』
 文字は其処で終わって居る。マリアは空間に浮かぶ文字を払うと次の文字が浮かび上がった。
『次の青みがかった鉱石はバクテリアを破壊する強烈な光が一点を攻撃し死滅されるものだ。特に人間にとって癌は治らないと言われているが、この石にはそれを死滅させる効力が含まれている。皮肉だが我々には強過ぎて身体がもたない。人間なら有効と思う』
 更にマリアは画面を払った。すると同じように文字が浮かび上がる。
『最後にあとはどう使うか地球上の学者と相談し活用方法を研究することだ』
 確かに素晴らしい贈り物だ。使い方によっては地球のエネルギー問題、地球の汚染浄化、そして医学会にとって正に画期的な代物だ。ただ宇宙からの贈り物だと言って誰も信じないだろう。どう説明しても分って貰えない。出所が何処だろうと無限のエネルギーが得られるなら世界中の学者が集まって考えることだ。余計な詮索するより人類の発展のために世界がひとつになることだ。
「ありがとう。それと貴方達が要望していた私の血液と沢山の種が揃いました。それと地球の水も入れました。何かの役に立てれば」
「ご苦労様、約束を守ってくれてありがとう。それでは数字後、以前と同じ場所にカプセルを届けよう」
 数日後の夕方マリアはまた蓼科山に登った。いや正確には車で行ける所まで行き其処から少し歩けば例の場所に辿り着けるのだ。勿論人気がない場所だ。もし他の人が見ても流れ星だろうと思うだろう。暫くすると東の方から流れ星のような物が流れて来る。また例のカプセルが音もなく着地した。ただ前回の物より倍の大きさがあった。恐らく再び帰る為の装置が付いて居るせいだろう。マリアはカプセルの上に手を差し出した。するとスーとカプセルの上部が開いた。そこにマリアは血液と水と沢山の種の入った金属の箱を入れた。暫くするとカプセルの上部が閉じられ音もなく浮かび横に流れるよう滑ったかと思うと強烈な光と共に上空を登って行き見えなくなった。マリアは溜め息をついた。夢の世界じゃないの? 
 私は本当に宇宙人と交信していたのか不思議な気持ちだ。それにしてもあの石はとんでもない代物だ。問題は誰にどうやって伝えよう。アルタイル星人からの贈り物だと言ったら笑われてしまう。本当だと言ったら精神鑑定を受けろと言われるに決まっている。信じさせるには私はアルタイル星人二世と言ったら更に気が狂っていると言うだろう。やっと父のドリューンが地球の人間として生きているのに平和な家庭が崩壊し宇宙人とバレてしまう。
 こうなったら家の下に埋めてしまおうかとまで思った。あの石の効力は地球を救うことが出来るのに歯痒い話だ。出来るならアルタイル星人が直接来て説明してくれれば良いものを。勿論、相手の記憶を消す事は出来るが相手にもよる。暴走族なら訳はないが、それに国の機関に石を提供し政府用人の記憶を消したとしても宇宙からの贈り物の鉱石の記憶まで消えては意味がない。

つづく

宇宙人二世 マリア 6

宇宙人二世 マリア 6

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • アクション
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-26

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