宇宙人二世 マリア 4

第二章 宇宙人二世マリア誕生

 やがて二人の間に女の子が生まれた。二人は真理亜(マリア)と名づけた。聖母マリアのご加護かありますようにと願が込められている。
 だが母の佐希子は内心穏やかではなかった。なにせドリューンは宇宙人なのだ。その宇宙人との間に生まれた子供だ。いつ細かい粒子となって消えるかも知れないと思った。だが父のドリューンはマリアが生まれてから驚くほどマリアの愛情を注ぎ可愛がった。宇宙人でもやはり我が子は可愛いいのだろう。
 ただマリアには不思議に物がいくつかあった。瞳は日本人と同じ黒だが瞳の下に小さな黒子のような物がある。しかも両目にあるが普段は分からないが怒った時だけ現われた。更に人さし指と中指の付け根にも小さな穴のような物がある。場所が場所だけに両親しか知らない。まだ小さいのでそれだけだったが後に、これがやがて人間にない能力を発揮する事になる。
 ドリューンはまったく普通の人間として働き、ただのイタリア人になりきった。やがて何事もなく月日が過ぎて、マリアが大学生になった二千年四十五年七月七日の事であった。そうドリューンと佐希子が会った記念すべき日にあたる。
 マリアもまた、一人で大学の夏休みを利用して八ケ岳の高原に立っている時の事だ。マリアの眼が青白く輝き、星にでも届くような強烈な光を放ったのだった。
 やはり宇宙人二世は特殊な物を身に付けている事が判明された。だがマリアは父が宇宙人だとも両親からは知らされていなかった。しかし己の体が普通の人間と違う事を感じ始めていたマリアは自分の秘められた能力を試していたのだった。この後マリアの運命はどう変わって行くのか? 
マリアの放った光線は一直線に伸びて行き、宇宙の彼方にある夏の大三角形にあるアルタイル星まで届いた。アルタイル星は恒星で主に水素、ヘリウムの核融合エネルギーにより自ら輝く天体である。アルタイル星は別名(彦星)とも呼ばれている。父と母が遭遇したのが七月七日であるが、マリアが生まれのも七月七日である。マリアは自分とその七月七日が何か関係あるのではないかと感じていた。マリアが眼から光を放ったのは今日が初めてではない。やはり昨年の同じ今日七月七日の事だった。
 現在、両親の東野佐希子と東野ドリューンは東京奥多摩の奥深い所に住んでいる。
 マリアの祖父と祖母はマリアの母佐希子が結婚し間もなく役所を辞め民宿を営んでいた。祖父母の手伝いをして民宿を盛り上げて居たがマリアが中学生になった頃、祖父と祖母は他界し今では父母が祖父母の後を継いで民宿を継いで三人で暮らしている。東京と言えば都会というイメージが濃い。だがここは想像もつかない田舎で周りは山に囲まれた谷の麓にある集落みたいな場所である。マリアは山が好きだ。景色を眺め珍しい草花を探すなど年に五度来ている。今日は八ヶ岳連峰の蓼科山の頂上付近に登り星を眺める事も多かった。今日もまた蓼科山の山頂付近に来ている。

 すると宇宙の彼方から一筋の光がマリアに向かって伸びて来た。マリアはその光に無意識に反応した。その光が自分の脳に何かを働きかけている。それに応えるようにマリアもまた無意識に応答したのだ。その方向はアルタイル星という星だと思われる。どうやらマリアはアルタイル星と交信出来る機能が脳に植え付けられているようだ。その証拠にマリアは眼から光りを放つ事が出来る。それは人には見えない光の交信であった。マリアその交信で自分の出生の秘密と父が宇宙人、アルタイル星人である事を知った。
「君が我々に光線を送ったのだね。我々は地球で言われる夏の大三角形にあるアルタイル星の者である。交信キャッチをありがとう。日本では七夕と呼ばれ、その彦星(アルタイル星)が我々の住む星なのだ。君の父ドリューンが地球に送り込まれたが、細菌に感染したが奇跡的にも君の母、佐希子に救われた。ただドリューンはもう普通の人間になった。君も薄々感じていたであろう。だからこの交信も驚いた風に見えないのも、その為だ」
「……まさか私を貴方たちの星へ連れて行くと言うんじゃないでしょうね?」
「それは無い。アルタイル星は単細胞生物バクテリアでしか生存出来ない。超微生物の集合体で知能を得た。では何故、宇宙船を製造出来たかは、やはり七夕で知られる織姫、ことベガ星とは友好関係にある。我々は小さな物を作る体力はあるが大きな物は無理だ。その辺はベガ星に依頼し作られた物である。優れた知能を持ったアルタイル星と物を作れるベガ星人と、我々はそうして協力し合い共存共栄しているのだ」
「難しくてよく分らないけど、私とコンタクトを取ったからには、目的があるのでしょう」
「その通りだ。マリアに頼みある。聞いて欲しい」
「一応、聞くだけは聞くけど条件があるわ。地球や私達家族に害にならないのなら」
「それは絶対にない。我々が地球に興味を持ったのは優れた知能と恵まれた身体だ。我々は知能があって物を作る事が出来ない。だからベガ星人と協力し合って生きているのだ。その両方を持つ合わせた人間が羨ましい。出来れば地球とアルタイル星の血を引く二世である君を通して地球の事をもっと知りたい」
「確かにアルタイル星人は知能が優れているようね。でないと十六光年もある地球に来る宇宙船に乗ってくるのだから」
「それはありがとう。我々の星は地球のような綺麗な星ではないが太陽の三倍以上もある巨大な星だ。だから資源はあるが物を作る身体がないのだ。だから我が星の建造物は全てベガ星人が作るのだ。逆にベガ星人は知能が低いが物を作る体力を持っている。互いに協力して生きるしかない不思議な関係にある」
「地球を知ってどうするの? まさか地球征服なんて事はないでしょうね」
「まさか我々は友好関係を結びたいだけだ」
「友好関係と言ってもどうして交流するというの。貴方がたが地球に来て誰と会うの」
「いや我々は地球には行けない。地球には我々に有害な細菌が渦巻いているその内のひとつが風邪という恐ろしい細菌だ」
「えっ風邪が恐ろしい細菌なの」
「そうだ君は笑うかも知れないが我々には脅威だ。だから君を通して地球を知りたい。そのお礼として君に贈り物をする」
「贈り物と言ってもどうやって届けるつもり?」
 「無人宇宙船を使って届けることが出来る。大気圏を抜けたら小型無人船から地球の大気圏でカプセルを放出する。それを君が受け取ってくれ。地球に役立ちはずだ」
「それでは私に要求する事はなに? その前に宇宙船で地球まで何年、何百年? 確か十六光年よね。宅急便じゃないんだから」
「宅急便? 地球はそんな宇宙船があるのか。我々の宇宙船は一光年を十二時間つまり一日を二万光年移動する。だから八日間で地球に行ける。現在は研究中だがいずれ地球まで十二時間で行けるようにしたい」
「えっそんなに早いの。人類にはとても無理」
「君にお願いがある。出来るなら君の血液を少し欲しい。それで人間の細胞を調べたい」
「止めてよ。私の血を吸い取るつもり」
「そうじゃない。試験管一本分だけだ。その血液で人間のような身体が何十年か何百年先か作れるのが夢だ。そうなれば食べる喜びも得られるだろう。他に地球の植物のあらゆる種類の種が欲しい。なんとか我々の星で育てられないか研究する。成功すれば我々は樹木や野菜、果物など手に入れる事が出来る。それに花を育てられたら地球みたいな楽園が出来る。これから送るカプセルに入れてくれ。既に無人飛行船はまもなく到着するはずだ」
「えっだって貴方達は食べる事が出来るの?」
「いや最初はエキスにして放出させそれを吸収する。その後は更に研究して君が送ってくれる血液を調べ人間と同じように食べられるような身体を作りたい。地球は食べる楽しみというものがあるらしいね。羨ましい限りだ」
「信用していいのね」
「勿論だ。君は我々の細胞も受けついで居る。我々の星人であるドリューンを悲しませたくないからな。なお君の血液とあらゆる種類の種が準備出来たら知らせてくれ。そのときまたカプセルを送る。カプセルの中に入れたら後は自動的に我々の宇宙船まで戻ってくる仕組みだ」

つづく

宇宙人二世 マリア 4

宇宙人二世 マリア 4

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • アクション
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-26

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