硝子盤

秋津 澪

 非情なる世界、或いは、カラクリの脈打つ虚空、貴様、精緻な装飾の施された、きんと冷たき硝子盤にも似る。ただ、父なる太陽を照り返し、倅・私を撥ね返し、ぞっと肌粟立たせる、真冬の風景に佇む、蠱惑豊かな、冷酷な美女よ、それ故のむっと薫る色香よ。貴様に冷たき眼をむけられれば、私の情欲は焔を上げるのだ、君の美しさこそ名状しがたい。意味の欠け、ニヒリズムとは身も蓋もない、逆さに振っても何も落ちぬ、されど残虐非道、不感症の美しき母よ、鷗を産んだ大海・母への片恋、「現実」よ、貴様をそっくりそのまま、無機物の虚空へ投げよう。非道にして壮麗な硝子盤へ変貌させよう、海さえ内包する、内部に有機の蠢く、されど無機的な表面の燦きよ、私は貴様を愛せる、どうしようもなく求め、必至で抱き、冷然と自己を見竦め、されど母、貴様へ抵抗する熱情湧く、不良少年さながらに。
 何故愛せると云い、硝子盤、そいつは私の欲望する、冷たき水晶、「死」にも似ている。

硝子盤

硝子盤

  • 自由詩
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-03-25

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