直史

無人電車

とうとうひとりになってしまいました。みっともなく一本の電車にしがみついている私の姿は、彼らからはさぞ馬鹿げてみえるでしょう。頑として動こうとしなかった彼も、ついに下車してしまいました。誰もいなくなって、何も気にせず席を選べるのに、私の身体は頑なに隅から動こうとしません。この電車に乗る限り、こうした縛りは必至なのかもしれません。にわかに喉の奥の方が虚しくなって、身体が怠くなります。誰もいないのに決まりが悪くなって、窓外に目を逸らしますが、そこには器用に電車を乗り継ぐ人々の姿があって、すぐに視線を足元に戻しました。なぜ見続けられなかったのかはうまく言葉にできませんが、羨望と後悔が入り混じったような感じでした。私も彼らのようになる日が来るのかしらん。想像するだけで悔しくて仕方なくなりますから、なるたけ意識しないようにしました。ようやく落ち着いたら、私の孤独を嗤うように車輪が不快な音を立てて、車体を揺らしました。そんとき、次の駅が近づいてるような気がしました。

  • 随筆・エッセイ
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2020-03-25

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