黒塊の独り言
生死が隣り合わせの毎日で……
「ぼくは今、
道端に横たわって居る。
好きでこんな場所に居るのでは無い、
何時もの場所で偶然がそうさせたからだ。
この景色も悪くは無い、
でもね、以前より身動きが取れないんだ。
運良く、今日は雨降りではない
心地よい風を感じてる。
まだ夜明け前だから、
通りかかる車のライトが眩しいだけだ。
今までが幸せだったとか、
今在るこのぼくが不幸かはわからない。
きっと、何もかもが偶然で
始まりと終わりの始まりかもしれない。
風を感じなくなると意識が遠くなる、
瞼の力も緩んでくると眼の前で転がる
落ち葉で風の様子がわかっていた。
さぁ、お迎えが来たようだ……
この世界とは別れを告げなければならない。
これからは、どんな世界が待っているのかな?身体の感覚が無くなってきたから、
少し休むことにするよ。
微かに匂う、東雲の風を嗅ぎながら…… 。」
ある通勤の朝、通い慣れている道端に
車に轢かれた黒い猫を見つけた。
きっとそんな最後の独り言を言っているのだろうと、車を停めて偶然載せていた毛布に包み、また車を走らせた。会社とは反対方向の動物用火葬場に向かったぼくだった……この日は会社をズル休みした。
黒塊の独り言