聖と俗

おたまじゃくしは
海を知らず
あたたかな井戸の中で
潮騒を
聴いていた

ははなるうみよ

しぼり出した
膿のように
産み落とされた

ねちねちと
這いつくばって
這いつくばって
膿に足をとられても
垢にまみれ
脂にまみれ
汚れることを
汚れることとも
知らずに
這いつくばって

四つ足の蛙
尻尾はどこにやった
尻尾は井戸の中
まだ潮騒を聴いている
母なる海とつながる
〈へその緒〉

(わたし貴女の羊水の味をおぼえているわ
いつか大海を見てまわったあとに
貴女のもとにかえってくるから
そのときはもう一度
わたしに洗礼をしてください)

聖と俗

聖と俗

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-22

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