雪 エンドロール.

抱き締めてもらいたい。
温かく、ぎぅうぅぅ~・・・、っと。
誰もいないなら。ここは、寒いから。
人の気配がしない場所。
人間の匂いがしない場所。
私はそんなところへ来てしまった。・・いつの間にか。
来たいなどとは思ってなかった。
いつの間にか、何者かに飛ばされて、流れるままに。
私は「受け入れてくれる者などいない場所」に、来てしまった。
受け入れてくれる者など いない場所。
そんな場所など、ないよ?と。
過去いた社会で知り合った何者かは、
私の空想の中だけでそう言うけれど、
あるのだよ。
きっと、彼は何も知らなかったんだ。
「無知」だったんだろう、と思う。
「寒い。寒い。」と、言いながら私は自らの肌を擦った。
擦れても、擦れても肌は赤くなるだけで、
一向に温かくなる気配はしなかった。
私は、空を見上げた。
世界の中に埋没してしまっている、
自分の存在をまるで頭上から見下ろすように見て、
もちろん頭の中の空想だけれど、
鎖がかかった心をなぞるように「ふっ」、と息を吐いた。
「さよなら。」私は心の中で「消えてしまえ」呟いた。
別に、怒っているわけじゃないけれど。
心は波立たず、いつもの通り、
平常心をフル稼働させて、湧き上がらせたのだけど。
私は、ここにいるのだろうか。
私は、だれといるの。
雪が降ってきて、全てを掻き消した。
白い白い、生き物でもない人工物でもない何者かが、
私の目の前をすっ、と通り過ぎて落下していって、(自滅)破損。
白い白い雪の世界の中に、
死んで、破損 死んで 破損 死んで破損 死んで、
生き物でもない秩序からはじき出された存在が、
私の目の前で心地よい様子で、飛んで。
彼等の最後は何処へ行くのだろう。何処で、
どういう名称のどんな肩書の誰に、受け入れられるのだろう。
それとも、独りぼっち。  


白い雪達は、私の前で舞い続ける。
私はそれに手を差し伸べていて、
落ちて溶けた瞬間に、痛くて熱かった。
こんな存在だっただろうか、雪というものは。
こんなに難解で理解し難く、
同時に温かく心地の良いものだっただろうか。
いつの間に、私という自分という存在は、こんなにも成長して
容器は出来上がっていたのだろうか。
何かが決定的に欠落していて、まるでそれを補うようにして
生きていたあの生物は、何処へ行ったのだろう。


寒い寒い雪の中、全身の肌を真っ赤にして、
独りの女が、立ち尽くしていた。

雪 エンドロール.

雪 エンドロール.

エンドロール. そのままです。 雪景色の中。 読んで頂けると、幸いです。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-04

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted