泣く

 午後六時、ふと、泣きたくなる。
 全身の、ちからをふりしぼるように、泣きたい。あるいは肺が嗚咽に耐えられず潰れてしまうように。
 そうやって泣いてもなにもかわらないことは、たとえばドラマでなんども観ました。映画でも。
 でもそれでも、空が夜におかされるまえの一瞬、うつくしい水色が、赤が、その境い目のやわらかなピンクが、ふと、なみだを誘う。
 くやしい。空は宇宙を味方につけている。なにもとどかないって、よく、わかる。
 酸素がなければ生きていけない、そもそも不完全ないきものなんだ。肺が、呼吸したがってる。っ、う、ひ、っ、みっともなく、嗚咽。
 くりかえし、すなおに夜を受けいれる空のした、さんざん、ただ獰猛に、健康的に、泣く。

泣く

泣く

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-21

CC BY-NC-ND
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