会議室

森下巻々

※成人向け・強い性的表現があります。

   *
「疲れたかしら? 着替えて、少し、休むといいわ」
 確か、歳は三〇代前半であるはずの女性上司鵜飼カヲリが、荷物の散らばった狭い会議室に入りながら言った。
 今の彼女は、仕事中とは思えないような奇妙な格好だった。顔だけが露出したキグルミ状の衣裳である。額に、菱形の嘴が付いているから、ペンギンを模したものであることは少し注意深く見れば分かるはずであるが、果たして、自動車を運転中の人々の好意の視線をどれだけ得られたかは、滑川大基には疑問である。
   *
 家具店である。
 二八歳の大基がアルバイト社員になってから一年が経過している。白のワイシャツにスラックスという、正社員と変わらない姿でいつも店に立っていて、周囲からは、見た目だけは一人前だ、という陰口があった。服装に関して言えば、そういうルールだからそうしているだけだし、大基自身は何か偉そうな口をきいた覚えもなく、不満があった。
 とは言え、前にアルバイトをしていた会社よりは給料がマシであるから我慢して勤め続けていた。
 今日は鵜飼カヲリが来店しているためか、陰口を言う社員たちも静かに、そしてキビキビと行動しているようである。
 この家具店は、鵜飼一族が力をもっている企業グループの一店舗である。創業者も元々家具店を経営していた家の生まれであり、全国の地域密着の家具店を次々とグループに入れることで拡大して、一時期は売上げも良かったようである。
 しかし、現在では、大基から見ても羽振りのよさそうな雰囲気が内部にあるとは言えない状態であるし、実際風聞でも近年は試行錯誤の経営が続いているとのことである。
 考えてみれば、経営が苦しいのに、大基のようなアルバイトの時給も高い方なのは有り難い限りである。どうしたって店員は必要とのことで、これも経営者側の考えがあってのことではあるらしい。
 ちょっと以前には、正社員をアルバイトに切り替える『改革』の議論もあって揉めたらしいのだが、大基にはよく分からない。
 接客と相談が売りだった、この家具店にしては、周囲の正社員たちの意識が低いことも気になるが、彼としては、とりあえず勤めさせてもらえるだけ勤め続けるつもりだ。
 鵜飼一族の一員でもあるカヲリは、全国の店舗を指導して回っており、二か月に一度は、この大基の勤めている店舗にも来る。これとは別に、店舗に連絡無く突然来ることもあった。
 彼女が店長に話している前を、幾度か通りかかったことがあるが、的確な提案をしている風で、好感がもてた。
 大基から見ると、仕事のできる綺麗なお姉さんという感じで、憬れのような熱烈な視線を送っていたのだが……。
 カヲリを評価していた大基にとって、最前は残念な時間であった。
 彼女が来店したのは嬉しかったのだが、店の前で客を迎えると言い出したのには、ガッカリだった。
 家具店のイメージキャラである、ペンギンの格好をして、通行する自動車に向かって、『歓迎』の立て札を掲げろと言うのであった。
 この暑い日に。
 季節は夏である。社員は皆、嫌な表情をした。それでカヲリが、
「誰もやらないなら、わたしがします! 滑川大基さんッ、あなたは着なくていいから、一緒に頭下げましょう……」
 なぜ自身が選ばれたのか分からなかった。こんな暑い日に店員を外で立たせるなんて、お客様から見ても『パワハラ』な印象になるだけじゃないのか、そう思ったのだった。
 水分は摂らせてくれたとは言え、彼女の横で『いらっしゃいませ』を言いながら、大基は納得していなかった。
 やっぱり、この人もほかの社員たちと同じような、おかしな古い気質があるのか……、そんな風にも思えたのであった。
   *
 さて、そんな時間を終えて、会議室に入ったものの、私物をここに置いていない大基は、
「あのー、身だしなみを整えるということであれば、わたしはロッカー室の方に……」
 すると、カヲリは長机を手で示して、
「大丈夫です。替えの服をそこに用意させてあるから、それに着替えなさい。それから、ちょっと手伝ってほしいし……」
「手伝い、でしょうか?」
 彼は不思議に思うが、
「ええ、ちょっとね……」
 彼女は、そう答えるだけ。
 とりあえず彼は、衣服の置かれてある前に行き、タオルで顔や首筋の汗を拭い始めたのだが、カヲリの目の前でワイシャツやスラックスを脱ぐのもいかがなものかとの思いが頭をよぎり、それを躊躇していた。
 彼女の方を見ると、ペンギンの顔をかぶったまま、水の入ったペットボトルを口に付けたり、スチール棚のガラス扉を鏡代わりに、自身の顔を確認し、汗をタオルで吸い取っているようである。
 大基は、カヲリを初めて目にしたとき、とても美人だと思ったものだった。そして、今でも、その印象は少しも変わってはいない。
 いつも化粧は、それほど濃いようには思えないのに、目はパッチリとしている。
 スウと通った鼻の先の唇はプクリと厚めで、これは大基の好みでもある。
 なんと言おうか、美人系と可愛い系の顔があるとすれば、美人系でありながら、可愛い雰囲気もあって……。
 そんなことをまた、考えている内に、カヲリがペンギンの顔を外した。この帽子状の部分は、首の後ろで取れるようになっているのだ。
 首から上、彼女の頭が姿を現わす。
 黒髪は後ろで纏められていた。元々、長髪というほどではないのだが、ペンギンを着るためにスッキリさせたかったのだろう。
 更に、手を背の方に回して……。
 なるほど、ジッパーを下ろそうとしているのだな、そう大基が理解したとき、
「ふうー……。やっぱりダメみたい。着るときも、最後は手伝ってもらったのよねえ」
 彼には少し意外な、可愛らしい声でカヲリが言うのであった。
   *
「ちょっと、滑川さんッ」
「はい。な、なんでしょうか……」
 カヲリは、ちょっと呆れたような表情で、
「なんでしょうかッて、見て分からない? 手が届きにくいのよ。うまく下ろせなくて……」
「は、はい……」
「だ、だから、ですね。手伝ってッて」
「は、はい……」
 流石に、彼女が、ジッパーを代わりに下ろしてくれと言っているのだ、ということは大基にも理解できたので、恐るおそる近づいて、
「お、下ろします」
「ええ……」
 後ろを向く美女上司からは、暑い外気に触れた後の体温が匂い立っている。彼は、その甘い匂いを鼻腔に受けながら、その首近くにあるジッパーの先をつまんだ。
「下ろしますよ」
「だから……、お願いします」
 予想に反して、ズズズズズと滑らかに下ろすことができる。これは、何気ないことだ。
 むしろ驚いたのは、カヲリの照った肌が露出したことなのだ。
 彼女は、キグルミの内側には、紫色のブラジャーを身に着けているだけだった。
 大基は、目の遣り場に困りながらも、
「し、し……」
 下着だけだったんですか、と思わず口に出しそうになって、慌てて舌の動きを止める大基。自身で、赤面していることが分かるし、躯が熱くなった。会社で、こんなことに強く反応するスケベな自分に気づいている。
 彼女の腰の辺りまでジッパーを下ろし、さりげなく覗いてみると、紫色の縁が見えて、パンツも穿いているようだった。 
 或る意味、安心した。
 いや、そんなことより、この状況はヤバくないか、そうも思えてくるのであった。
   *
 まだ肌に触れているキグルミの生地は、ペタリと汗で、美しいそれに、密着してしまっているようだ。
 また、今、肌が露出したことで、カヲリが、より匂いだつようになった風に思える大基である。
 オンナの匂い、そんな言葉を彼は思った。
 彼は二八歳である。
 童貞であった。
 女性の手を握ったのだって、小学生の時の何かのイベント以来無いのではないか。
 いや、そんなことは関係ないのである。
 この状況は、うまく立ち回らないと、セクハラ等の問題もうるさい昨今、大事件になる可能性もあるのではないか。
「ふー、ふうんッ」
「ちょっと、滑川さんッ」
「は、はい……」
「鼻息荒いわ」 
「す、すみません」
 いろいろなことを先回りして想像している内に、大基の鼻息が荒くなっていたようだ。
 しかも……。
 ヤバい、まさに文字通りの状態に陥ってきた。
 まずい、と思えばおもうほどに、オトコの躯が反応してきてしまったのだ。
 目の前には、年上美女の匂い立つ背中。
 紫色のブラジャーの肩紐やバンドもセクシー。
 それなのに、カヲリは、
「ついでだから、そこのタオルで、背中の汗を拭いてくれる?」
 大基は、断ろうにも思考もできず、タオルを手に取り、彼女の肌にあてがい始めた。
 汗の粒が浮き、また流れている部分もあって、とてもとても艶めかしい。
「ふー、ふうんッ……」
「ま、また、あなたッ! 滑川さん、もしかして!?」
 カヲリは、躯を捩って後ろを向くと、大基のびっくりする行動に出た。
 彼の股間を掴むようにしたのである。
「ああッ!」
「や、やっぱり! あなた昂奮してるのね。こんなことくらいで……」
「う、うう……」
「仕事場で、こんなにしちゃってッ。今日これからの時間も勤務するのでしょう? スッキリさせるなら、さっさとスッキリさせなさい!」
「えええ……?」
 予想できない言葉に、大基が呆然としていると、カヲリは、
「だからあ、自分でしなさいッて言ってるのだけど、できないの? だったら、わたしがしてあげるわッ」
 彼女は、キグルミから両腕を抜き、上半身をブラジャー姿にすると、彼にパイプ椅子に坐るよう促した。
   *
 大基の目の前の床に腰を落として、彼のベルトに手を掛けるカヲリ。彼は、されるがままでいながら、
「で、でも……」
「誰も来ないわよ。みんな、わたしが来店すること嫌がってるでしょう? 鵜飼の親類がいる場所に入室してくる人なんていないでしょう?」
「そ、それは……」
「そうでしょう? ねえ?」
 正面から見た彼女も、やはり美しかった。
 紫色のブラジャーは、刺繍が細かく鮮やかで、肌の中心には深い谷間ができている。
 巨乳なのだ。
 これまで全然気づかなかった。
 こういうのにも、着痩せするタイプ、という言葉を使って良いのだろうか。
 美女のプクリとした唇が動く。
「あなたッ、オンナと、シたこと無いんじゃない? もしかして」
「……は、はい。でも、どうして」
「分かりますよ。あなたの今の態度を見れば」
 カヲリの手指が巧みに動いて、大基のスラックスが脱がされる。
「ああッ」
「スゴいわね……」
 彼が驚いたのは、トランクスまでも一緒に引き下ろされたからだが、彼女の方の言葉は、勿論別の視点だろう。実際、
「スッゴく、大きいわねえ。ピーンと上を向いちゃって。今、跳ねたわよね」
 カヲリが大基自身のモノを見て驚いてくれている言葉、それを聞いて、まだ触わられてもいないのに、彼は昂ぶってくる。
「はあー、はあー」
「もう……、あなた。触わったら、どうなってしまうの? という様子ね」
 彼女は、左手を彼の右ももに置くと、もう片方の手で、照りみなぎった男根を包んでくる。
 ニギニギと硬さを確かめるようにした後、上下に動作を始めた。
 大基が自身の手で慰めるのとは、また違った感覚がある。
 やはり、他者にしてもらうのは、自分の手を使うのとは、違うみたいだ。
 感激。
 白昼夢。
 或る種の情が竜になって昇ぼっていくビジョン、を見る。
「もう、あなた、とっても、いやらしいわね」
「え?」
「もう、透明な雫が出てきたわ」
「なるほど……」
 股間のモノの先からは、いわゆる我慢汁が滲み出てきている。
「『なるほど』、ねえ……。自分のことでしょう? 仕事場で、こんなにオチ●ポ、ガッチガチにして、いやらしい、お汁をいっぱい出して、恥ずかしくないの? 普段は嫌ってる、鵜飼家のオンナに触わられてよ? プライドとかッて無いの?」
「そ、そんな……」
「そうでしょう? さっき、外にいるときだって不満そうな顔してたじゃない?」
「す、すみません……」
「ほら、ほらほらほらッ! 早く出しちゃいなさいッ! 嫌いなオンナにシゴかれてッ! あなた、店長からの評判も悪いのよ。だから、今日は様子見ようと思ってパートナーに選んだの!」
 カヲリは、肉棒を強く握り、激しく上下に擦すってくる。
「ああ……」
「出そうなの?」
「い、いえ。ホントに気持ち良くて……。夢見てるみたいで……」
「そうなの? あなたみたいなオトコなんて、刺戟に対して反射的に反応するだけなはずだけど……、もしかして、ちょっとわたしのこと好きなの?」
「そ、それは……」
 彼女の意地悪そうな、それでいて美しい表情に、大基は魅力を感じる。
 頬が赤く染まる。
「えッ……? 図星なの? あなたは、わたしのことが好きだったの? ねえ?」
「は、はい」
「ふふ……」
 美女上司は、今までに見せたことのない恥じらっているような何とも言えない目をして、
「そう、あなたなんて、家畜とおんなじみたいな感じだから、こうやってマッサージしても、わたし、なんとも思わないだろうと……、そう思って、実際今も汚い所を握ってあげてたけど。そう……。わたしのこと好きなの? 変わってるわね」
   *
 カヲリに自身の感情が伝わったことで、大基は、それを隠す必要が無くなった。
 それで、自然と彼女の目を好いた表情で、堂々と見つめ始めてしまっている。
「ふふッ。ちょっと、そんなにじっと見ないでください」
「は、はい、すみません……」
「もう、分かったわよ。特別よッ。なんだか、きちんと対処してあげなきゃ、ストーカーにでもなりそうで怖いから……」
「はあ……」
 彼女は、大基の男根をもてあそびながら、
「何か、もっとしてほしいことある? 今だけ叶えてあげるわ」
「……は、はい」
「何?」
「キスしたいです」
「ふふッ、なーんだ。キスも、したことないんですね。分かったわ」
 カヲリは、大基の横に、もうひとつパイプ椅子を置いた。
 彼の右隣に並んで坐った格好で、左腕を回してきた。
 大基は、右を向く。
 カヲリの魅惑的な唇が近づいてくる。
 そして直ぐに、その柔らかいものが、彼の唇を刺戟する。
 吸われた。
 彼が驚くと、美女は、
「ほらあ、口開けて、舌出さないとお……」
 やさしい口調である。
 ディープキスの知識は彼にもあったから、おとなしく従う。
 絡まる、舌と舌。
 なんと、いい気持ちなのかと思った。自身の腰が落ちる感じ、という表現はおかしいだろうか。
 しかも、そんなキスを続けたまま、彼女は右手で、男根をシコシコと擦すっても、くれたのだ。
「ああ、ああ……」
「うふふむ……。何よ?」
「き、気持ちいい、です」
「当然よ。わたしがしてあげてるんだから……」
 大基の気持ちとしては、いつまでも、こうしていてほしかったが、だんだんと股間が敏感になってきてしまっていた。射精が近いかも知れない。
「む、むふう。で、出そうなんですけど」
「そう? それじゃあ、ちょっと待って」
 彼は不思議に思ったのだが、カヲリが椅子を降りて、また床に膝を突いたのだった。
 そして、右手で、激しくシゴいてくる。 
「ああ、本当に出てしまいます。もう……」
「分かってるわ」
 手の上下運動はとまらない。
「出るッ」
 大基がそう言うのと、カヲリが屹立した男根を口に含むのが同時であった。
 彼は、口内の感触も分からないままに、そこへ精を放出することになったのだった。
   *
「ごめんなさいね。フェ●チオが下手だから、こんなやり方で……」
 大基の躯から出たものは、カヲリが呑み込んでしまっていた。
「す、すみません。こんな風に口で綺麗にまでしてもらって……」
「疲れたでしょうね? 着替えて、少し、休むといいわ」
 そう、そうなんだよ、着替えるために、この会議室に来たのではなかったか? 現実に引き戻される大基であった。
   (「会議室」おわり。この作品は登場する固有名詞を含め、完全なフィクションです)

会議室

会議室

官能小説。約21枚。

  • 小説
  • 短編
  • 成人向け
  • 強い性的表現
更新日
登録日 2020-03-19

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