闇に呑まれろ

るえかの雨

その男は


奇声を発しながら、自らの身体を大ぶりの刀で刻みはじめた。

胸が十字にえぐられる。
腕にも腹にも、次々と刀を突き刺す。

すくんで動けない僕は
男の奇声と、その返り血を全身に浴びる。


まるで雷雨のごとく。

返り血は、ただの血じゃない。

男が抱えている憎悪、暴力、そして悲哀。
全ての負の感情が、その血を通して、僕の全身を駆け巡る。


お前の悲しみを放出せよ。
身体に刀を突き刺せ。
返り血に、己の血を混ぜろ。


声に従い、膝をつく。
亀のように地面を這いつくばり、悪をかき集める。


あるだろう?
あるだろう?

思い出せ


理不尽な差別を
圧倒的な暴力を
謂れのない屈辱を



吐き散らせ 毒を
切り刻め 身体を



闇に呑まれろ

闇に呑まれろ

闇に呑まれろ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-19

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