カプセルホテル

実際は随分前に一回泊まった事があるだけ

カプセルホテルにはよく泊まる方だ。
「だって、安いし。あと」
なんかいいよね。あの中って。なんかいい。SFの事なんて一切興味ないのに、なんかカプセルホテルには宇宙船感がある。それがいい。だから遠出する時はそこにカプセルホテルがあるかどうかは確認している。無い場合は仕方ないけど、ある時は利用する。そうしておけばそこでどれだけお酒飲んで、終電無くなっても心が安寧に保たれる。

普段の会社に行く場合でも、近くにあるカプホの場所は把握している。何かあって帰れなくなる可能性もある。駅で大勢の人と一緒になって待っているというのが苦手なので、帰れないならそれはそれでとカプホに泊まる。カプホにだって大浴場はあるし、きれいだし、ちょっとしたギミックくらいはいつも持っているからブログの更新やら即興小説だってそこでやれる。Wi-Fiもつながってるし。

電車が止まったとなれば早くからいつも行ってるカプホに連絡を入れて寝床を確保する。そうしたら電車が来ないことにイライラする必要もない。スタンプカードもたまるし、あと寝れるし。
「すごく、ね」
無理に家に帰ってという事をせずともすごく寝れるし。長く寝れるし。

もちろんいつもカプホとなると、経済的にいたいけど、でもたまになら別に。
「月5回程度のカプホ代も確保しているし」
そういう準備を怠らないところが、自分の長所だと思う。まあ、ぱっとしない長所だけど。

その日も電車が止まったのでオキニーのカプホに連絡を入れて寝床を確保した。
「いつもありがとうございます」
フロントの人とももう顔なじみである。空いている時はそこを使わせてください。といつも自分が使っている番号の鍵をもらう。ちなみにその番号はべただけど、自分の誕生日。べただけど。

「はーいお疲れでーす」
自分のカプホに入って独り言ちた。そして一旦コンビニで買ってきた食べ物を脇に置いて、とりあえず巣作りを行う。一宿とはいえ、快適に過ごしたい。アームライトの電気をオンにして上着をハンガーにかける。携帯とかタブレットとかも充電できるようにギミックをコンセントに差す。ブログ用に持ち運んでいるキーボードとかも出す。

そういう一つ一つが快適につながるんだと思うと苦ではない。

そんなことをいつもの調子でやっていたら、入口のドアを開けっぱなしだったことに気が付いた。
「あ、やべ」
いくら気分いいと言っても、巣作りは人に見られたくない。

しめようとドアに近づくと、目の前の通路をウインダムさんが通り過ぎた。

「え?」
今のカプセル怪獣のウインダムさんじゃなかった?

カプセルから頭を出してみてみると、ちょうどウインダムさんが角を曲がって行くところだった。

「やっぱウインダムさんだ」
カプセル怪獣のウインダムさんだ。

そのあと少し冷静になって考えてみても、やっぱりウインダムさんだった。

ウインダムさんがカプセルホテルに泊まってる。

その日の午前中、日本海側にゴジラが上陸したためにこちらの電車までも止まった。

詳細は不明だがゴジラは関東地方を横切る可能性もあるという話だった。

でも、実際来たところでどうしようもないし、家に帰れないし。

だから私は、カプホに泊まった。

そして泊まったカプホにウインダムさんがいた。

え?

これセブン来るのかな?

セブンがカプセル怪獣のウインダムさんを使っても、ゴジラをとめたりするのかな?

で、その待機でウインダムさんここにいるのかな?

その日は眠れなかった。

自分のカプセルが間違ってセブンに選ばれたりしたらどうしようかと思って、さすがに眠れなかった。

カプセルホテル

カプセルホテル

  • 小説
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-18

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