黒中夢

黒中夢

目を閉じる。
 一寸先は闇か、はたまた光か。
 なにも見えない。
 静寂の中だった。
 喧騒の中だった。
 そこにいるのは天使なのか悪魔なのか。
 一人が言う。その先は闇だと。
 一人が言う。その先は光だと。
 僕はどちらが正しいことを述べていて、どちらが間違ったことを述べているのかが区別がつかなかった。もしかすると、二人ともが正解へと導いてくれているのかもしれない。
 背後から気配がする。
 何かが近寄ってくる。何かが通り過ぎていく。何かが遠ざかっていく。
 そんな気配が。
 どこが正解なのか。左か右か下か上か。それとも別の方向なのか。
 さっきの何かについて行けばよかったのだろうか。
 いや違う。
 見えない世界が続いていく。
 叫びもため息もすべてが吸い込まれて亡くなっていく。
 目を開く。
 そこには無が有った。

黒中夢

黒中夢

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-11

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted