lost spring

春なんかなくなってしまえばいい

死角でトラックに毎年轢かれる

その荷台には かつての旧友が乗っている

わたしの知らない 顔をして

運転手はわたしを轢いたことなど知らない

角 角 角 角

そこはもともと 片道一車線だ

(角をつくっていたのは わたし?)

つくりすぎて つくりかえられてしまった 秩序

..................あ あ あ ア 唖

大海原がひろがっている 大海原がひろがっている

角さえなければ 大海原がひろがっている

憑かれていたのではない わたしが憑いていたんだ

春に

廉さえなければ なければ ね

あれは自殺ではなくて 目覚めに過ぎなかった

いつも過ぎ去っていたのは 瑠璃唐草の花言葉

信号機の左端が春を隠しているような夢を 見ていた

あのときの運転手は いつのわたしだろう?

あのときの轢死体は いつのわたしだろう?

過去もいまも 舗装なんかできやしない

つぎはもう酔わない 迷わない 彷徨わないから

だから もうじき逢えるよ

そう

春なんかなくしてしまえばいい なくしてしまえば

わたしが春だ

lost spring

lost spring

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-06

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