lost spring
春なんかなくなってしまえばいい
死角でトラックに毎年轢かれる
その荷台には かつての旧友が乗っている
わたしの知らない 顔をして
運転手はわたしを轢いたことなど知らない
角 角 角 角
そこはもともと 片道一車線だ
(角をつくっていたのは わたし?)
つくりすぎて つくりかえられてしまった 秩序
..................あ あ あ ア 唖
大海原がひろがっている 大海原がひろがっている
角さえなければ 大海原がひろがっている
憑かれていたのではない わたしが憑いていたんだ
春に
廉さえなければ なければ ね
あれは自殺ではなくて 目覚めに過ぎなかった
いつも過ぎ去っていたのは 瑠璃唐草の花言葉
信号機の左端が春を隠しているような夢を 見ていた
あのときの運転手は いつのわたしだろう?
あのときの轢死体は いつのわたしだろう?
過去もいまも 舗装なんかできやしない
つぎはもう酔わない 迷わない 彷徨わないから
だから もうじき逢えるよ
春
そう
春なんかなくしてしまえばいい なくしてしまえば
わたしが春だ
lost spring