TRAP CRISIS

注意事項
①米印の箇所は読まないでください。
②カッコ内は読んでください。
③このお話は、男性3人と女性3人の合計6人声劇です。そのうち、男性1人と女性1人は兼任です。
④少々ホラーなシーンがあります。そういうのに弱い方はお気を付けください。

TRAP CRISIS

〔登場人物〕
・永井陽平(ながいようへい/男)
・パトリシア=ソーニャ(女)
・只野仁(ただのひとし/男)
・卯月桜(うづきさくら/女)
・有沢美智子(ありさわみちこ/女)…CRISIS HOTELのマスター。
・鎌倉山俊助(かまくらやましゅんすけ/男)…警察官。
・男性客(永井か只野のどちらかが兼任)
・女性客(パトリシアか卯月のどちらかが兼任)


鎌倉山(N):ここ数年、“CRSIS HOTEL(クライシスホテル)”というホテルで謎の殺人事件が横行(おうこう)している。噂では、「絶対に泊ってはならないホテル」や「死のホテル」と揶揄(やゆ)されるよう、近寄りがたい、物騒な存在となっていた。外装は至って普通のホテル。特に変わったところは見られない。だが、その内装が問題だったのだ。幾度となく業務停止をさせてきたが、何ひとつ変える気が無かったのだ。

“これ以上、犠牲者を出してなるものか!”


(※ここは、CRISIS HOTEL。男女4名がチェックインに来た。)

永井:さぁ、ホテルに着いた!

パトリシア:ココガニホンノホテルデスカ?ワタシノオモッテイタヨリモチガッテイマス。

永井:ん?どんな風に違うの??

パトリシア:マダヒノイリデハナイデスヨネ?サンガマダメデミエマス。デモ、コノホテルハ、アン・アトモスフィア・オブ・テラー。オソロシイデス。

卯月:確かに、パトリシアの言う通りに少しゾっとするわね。背筋が凍りそうよ。

永井:でも、ルームサービスや食事は高評価されているんだけどなぁ。

只野:…おい、永井。お前が調べたデータって、一体いつの何だよ?

永井:今年の。

只野:そのレビュー、嘘だよ。そうに違いない。
何が明るい雰囲気だよ。外装だけじゃねえか。中身はこんなにもホラーチックだっけ?お化け屋敷じゃないんだからさ。


有沢:そこの4名のお客様。ようこそ、クライシスホテルへ。

永井:今日、2泊3日で4人の予約をした永井です。

有沢:永井様、お待ちしておりました。

見たところ、少し心配そうな方が数名おられるようですが…。

只野:すみません。1つ尋ねたいのですが。

有沢:はい、どうぞ。

只野:このホテルは安全ですよね?安心して眠れるんですよね??

永井:只野ったらぁ~。す~ぐ心配しちゃうんだから。

只野:そりゃ怖いに決まってるさ!!

有沢:“ただのさま”でよろしいでしょうか?

只野:あぁ、そうだよ。安全だってこと、保証してくれるんだろうな?!

有沢:えぇ、勿論。
安全と安心を保証いたします。

(スタッフのね♡)(※誰も聞こえないくらいに小声)

只野:警察や保健所からも許可はあるんだろうな?

パトリシア:コノホテル、ダイジョブナノデスカ??

有沢:はい。こちらの証書で確認していただけるかと。

只野:どれどれ…。

確かに、期間内だから問題はない。

パトリシア:ルームサービスハ、ナンニデモコタエテクレマスカ?

有沢:えぇ、喜んで。

卯月:(特に何も問題はなさそうね。)

有沢:では、先に支払いの方をお願いしますね。


鎌倉山:…。
(※ホテルの通りからロビーの様子を伺っている。)


(※支払い完了)

有沢:確かに、4名様分のお支払いを確認しました。2人部屋を2つでよろしいでしょうか?

永井:はい、それでお願いします。

有沢:では、女性の方はこちら、7階の“797号室”を。

卯月:確かに。

有沢:男性陣は、5階の“564号室”を。

只野:はいよ。

有沢:では、どうぞごゆっくり…。

チェックアウトする“最期”の時間までお寛ぎ(くつろぎ)ください…。


卯月:お腹すいちゃったわ。
先に荷物を片づけて、どこかに食べに行きましょ?

永井:だね。俺も実は腹ペコ。

パトリシア:アイムハングリーデス。ナニカタベタデス。

只野:なら、近くのお好み焼き屋さんにでも行くか。
近くに、俺の高校の先生が大好きだった店があってね。そこで済ませよう。

卯月:賛成。確か、この近くでしょ?

只野:そうそう。歩いて5分ほど。あっという間さ♪


(※荷物を片づけて)

永井:それじゃ、少し行ってきます。

有沢:はい、気を付けて。


(※4人が出かける)

有沢:“少し迷惑な客が見えたけど、これくらいはいつものこと。何も気にする必要なんてないわ。最初は誰でもそう。
本当の試みは、これからなのよ。お楽しみは、ディナーのあとで。

クックック…。”

鎌倉山:(やっぱり、あれだけ注意しても全く変わってないのか。少しニュースになってたけど、“殺人ホテル”は本当だったのか。

彼らが帰ってくる前に何とかしなければ。彼らだけでも無事でいてほしい…。)


卯月:私は、豚たま♪

パトリシア:ワタシハ、ミックスデス。トテモタノシミデス。

永井:パトリシアさん、本当にウキウキしてますね♪見ている私たちも幸せです♪

パトリシア:ジャパニーズホットプレートディッシュ、コレヲタノシミニシテイタノデス。マイグランパガワタシニオシエテクレマシタ。ニホンノ、“フラワーベースド・フード”ハエクセレントデス。

卯月:フラワーベースド??

パトリシア:タコヤキヤタイヤキ、オコノミヤキナドヲイイマス。
ニホンデイウ、コ・ナ・モ・ノ?

卯月:コ・ナ・モ・ノ?

あ!“粉物”ね!!はいはい!!確かに、日本の“フラワーベースド・フード”は美味しいね。

只野:俺と永井は、ネギチーズってやつにしてみたぜ。俺の先生の大のお気に入りでね。試したくて仕方なかったんだ。

永井:あ、来た来た!!


(※お好み焼きとドリンクが揃う)

永井:皆、ドリンクはあるかな?俺はジンジャエール♪

パトリシア:ワタシハ、コカコーラです!

卯月:私はウーロン茶。さっぱりさせたくてね。

只野:俺はカルピスさ。どうもこれが飲みたくてね。

永井:それじゃ、“カンパイ”♪

只野・卯月・パトリシア:“カンパイ”♪

パトリシア:イタダキマス。

Ouch.(アウチ。)Oh….

只野:www

パトリス、少し冷まさないと。アツアツでもいいけど、それは流石に熱過ぎw

パトリシア:アツスギマシタ。

永井・只野・卯月:wwww


(※その頃、ホテルでは)

男性客:じゃ、部屋に戻ろうか。

女性客:そうね。今日は眠くなっちゃった。

有沢:シメシメ…。

ポチッと♪

男性客:ん?

女性客:?


(※上からシャンデリアが男性客の頭上から落下。)

男性客:ん!!!

女性客:!!

(※カチっ)


(※女性客が後ろに下がってセンサーが反応。)

男性客:…ん?


(※天井から無数のナイフが男性客に)

男性客:アアーーー!!!(※絶叫)

女性客:キャーーー!!!!(※悲鳴)

…え?何だか、濡れてるんだけど。気持ち悪い…。
ハックション!ハッッックション!!

有沢:あ、お客様。喫煙はホテルの外でお願いしますね。


(※他の、たばこを持ったお客がライターに火を付け、女性に炎が移る。)

女性客:キャーーー!!!誰か!!誰か!!!
熱い熱い熱い熱い!!!!


鎌倉山:女性のお客様!少し我慢を!!
消火剤をかけますから!!


(※鎌倉山が手にしていた消火器で女性客を鎮火。大惨事にはならなかった。)

女性客:…あ、あなたは?


只野:ハァ~、食った食った。お腹いっぱいだぜ。

卯月:お好み焼き二枚にパンケーキだなんて、流石に食べすぎですよ。

只野:もう動けん。ここで寝る。

永井:アハハ。

ホテルまで、あと少しだよ。

只野:もう動きたくないでござる~。(´・ω・`)

パトリシア:キープ・ムーヴィングオン!ミスタータダノ!

タダノサン、スキニナロウトオモッテイマシタ…。デモ…。


只野:!!

俺はまだまだ動けるぜ!こんなんでダウンする俺じゃねぇぞ!!

永井:素直なヤツ♪

永井・卯月・パトリシア:wwwwwwwww

只野:www

…ん?ホテルの前にパトカーが数台??

パトリシア:???

卯月:何があったのかしら???

永井:すぐに戻ろう。荷物が心配だ。


(※ホテルに戻る。)

永井:スタッフさん??いらっしゃいませんか??


鎌倉山:シーっ!!!

永井:?!


(※ここから、ひそひそ声で話が進む。)

卯月:一体、どういうことなんですか??

鎌倉山:私は鎌倉山(かまくらやま)という者で警察です。はい、これが証拠。

永井:うんうん。

鎌倉山:現在、このホテルの宿泊者の何人かが死傷しています。

只野:死傷…。

…“死傷”?!

鎌倉山:このホテル、実は営業継続しちゃいけないレベルだったんだ。というのも、このホテルでは高確率で何かしらの負傷事故・事件が発生していたんだ。事あるごとに保健所や警察が目を通して指摘・改善を要請してたんだけど、最小限にとどめていて、相変わらず安全性は不安ばかりだった。
それで今回、ロビーで男性客1人が亡くなり、女性客一名がけがを負って入院している。今は何とかホテルの事業主を取り押さえているけど、負傷した女性客いわく、上の階の方でも悲鳴やら絶叫やらが聞こえていたらしい。トラップはほぼすべてオフにしている。でも、まだいくつかは起動できる状態らしいから、荷物を取りに行くなら十分に気を付けて。いちよ、上の階の方にも警察はいるから。

パトリシア:アリガトウゴザイマス、ア・ジャパニーズポリスマン。

鎌倉山:イッツマイプレジャー、ロジャーズ。

永井:ここからは、気を付けていこう。

“こんなホテル、泊まってられるか!!”

只野:いざとなったら、俺たちに連絡をくれ。また荷物を取りに行って下で集まろう。


卯月:ねぇ、警察官。

鎌倉山:はい、何でしょう?

卯月:私たち、別のホテルに泊まれるかしら??
2泊3日でこのホテルを予約したんだけど。

鎌倉山:今、代替ホテルを探しています。1時間あれば見つかるかと思います。勿論、料金は取りませんので。このホテルでの料金も返金できますから。


(※女性陣2人の様子。)

パトリシア:ナナカイマデモドレマシタネ。

卯月:あ、警察官だ。

“すみませーん。797号室の者です。そのかばん二つ、こちらまで届けてくれませんか?”


(※無事、荷物が到着。)

パトリシア:ハヤクモドリマショウ。コワスギマス。

卯月:そうね。さっさと出ちゃいましょう。


(※うってかわって、ここは男性陣。)

永井:サツ、いないな。

只野:…だな。いかにも、「どうぞ、トラップにはまってください!」って感じだぞ。

永井:えっと、564、564。


(※ピー!ピー!ピー!ピー!)

只野:ん?!何なんだ!!

永井:…あ、あぁ。

只野:永井?!

永井:ひ、ひだり…。

只野:左?

おん?


(※超高速でピアノが廊下のど真ん中を通過。)

只野:ハア?!ピアノ?!
嘘だろ?!

永井:…死ぬかと思った。ピアノにサンドイッチされるところだった。

ぐぬ?!


(※564号室のドアノブが電気を帯びていた。)

只野:次は何だ?永井。トラップはもうないんだ。
さっさとドアノb…。

“ダァ!!!!!!!!”

きっと、静電気のせいなんだろう。乾燥しているし。

“ギャアオ!!!!!”

…嘘だろ?!

“グァァァアアアアアア…。ひ、開け…。”

永井:…あ、開いた。

只野:さっさと荷物をまとめt…

“タァ!!”
痛ァ…。

永井:ワックスかなぁ?でもビショビショ。荷物は問題なさそう。

只野:な、永井…。

俺の荷物も頼む…。

永井:了解。


只野:ふぅ~。ようやく床をペタぺt…。


(※高速でピアノが戻る)

ピア~ノ!!!

“ギャーーーーーーーーーッス!!!”
オバケ~~!!!!!!!

永井:ん?


(※永井振りむく。お化けが見えた。)

永井:うわぁ!!!
び、びっくりした…。

只野:お、お、おい…、早く戻ろう。

永井:…あ、あぁ。


(※4人とも、無事にロビーに集まり外へ。)


パトリシア:アノポリスメンハバトラーデシタネ。シツジノヨウニテイネイデシタ。

卯月:そうね。6人の警察官たちに守られながら避難だなんて。

まるでスターの気分ね。

只野:…。

パトリシア:?

永井:う、卯月…。

俺たちのこの姿を見て、まったく同じことが言えるとでも?

パトリシア:YES! OF COURSE!

永井:(※カチン)

鎌倉山:今、代替ホテルの確保が出来た。

そこのビショビショの君は、どこかの温泉施設にでも行くといい。

只野:…そのつもりです。

鎌倉山:有沢美智子容疑者。

有沢:…はい。

鎌倉山:あなたを殺人罪、旅行業法違反等の罪で逮捕します。

“2月26日木曜日午後8時30分46秒、有沢容疑者を現行犯逮捕。”


(※その後、一行は別のホテルで2泊3日を過ごした。)

鎌倉山:皆さん、少しは休めたでしょうか?

卯月:何とか。

パトリシア:マダツカレテマス。

鎌倉山:本当に申し訳ありませんでした。

只野:いえいえ。悪いのはあのホテル側ですし。

永井:そうですよ。我々は特に何も。


鎌倉山:皆さんの被害の補償に関してですが、こちらの方で訴訟を起こしておきました。あなた方の地方の裁判所で行われる予定です。

費用はこちらで全額工面(くめん)しますのでご安心を。


卯月(N):裁判の結果、有沢被告は終身刑で、罰金6987万円となった。これとは別に、被害者の方一人一人に2000万円の支払いを命じられた。私たちはすぐに受け取ることが出来た。

只野(N):その後、あのホテルは解体されクライシスホテルは倒産。跡地はコインパーキングとなっている。また、ホテルのスタッフもそれぞれに3~5年の懲役が言い渡された。執行猶予はない。

アリシア(N):クレイジーナホテルガニホンニハムカシアリマシタ。シカシ、イマハソノスガタガミエマセン。ユメモノガタリトナッテシマイマシタ。


永井(N):…俺が、俺がこのホテルを選ばなきゃ…。こんなホテルなんてスルーしておけばよかったのに…。俺のせいで、俺のせいで…。

俺のせいで、俺のせいで…。

TRAP CRISIS

訂正情報
・4月5日(日) 本文を一部修正

TRAP CRISIS

楽しいはずの旅行に、突然の危機!外見はやけに綺麗ながらも中身が不気味なクライシスホテル。そこに泊る客達。彼らを襲うのは、数々のトラップ。命までもが狙われているこのホテル。宿泊者たちの運命は?そして、ホテルの今後は?

  • 小説
  • 短編
  • アクション
  • ホラー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-06

CC BY
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