風凰学園HERO部の抑止力 3

第三章 主人公はBL素材??

鈴音が隣で寝ていたせいで全然眠れなかった次の日の朝。
「おはよ!」
元気よく挨拶をしてきたのは鈴音だった。
「おう」
「どうしたの? 元気がないよ?」
誰のせいだ誰の!
「そうでもないよ、いつもこんな感じだ」
途中あくびをしながらそう言ってやった。
「そう? だったらいいんだけど、それじゃあ私もう学校行くね、いろいろと話があるみたい」
入学の手続きか何かかな?
「おう、いってらっしゃい」
鈴音はさっさか家を出ていった。
そのあと俺は自分で朝飯を作り、着替えて学校に行く仕度を済まして学校へと向かった。

学校に着いた俺はこの世で会いたくない人No.1のヤツに会ってしまった。
「おう、達彦久しぶりだな!」
「……」
「え? なに? この空気?」
なんでこいつがここにいるんだ?
「おいおい達彦、俺がいなかってからって寂しがることはないじゃないか」
「寂しがってないし、心配もしてないぞ、どちらかというといなくて安心した」
「またまた~、そんなに恥ずかしがらなくてもいいんだぞ?」
なんてめんどくさい性格なんだコイツは。
しかも男なのに抱きついてきやがった。
「毎度毎度言わせるな! 俺はお前が大っ嫌いなんだ! そして離れろぉおおぉおおお!」
「ん~、この肌の感触久しぶりだ~!」
この気持ち悪い男の名は高秋柄谷。
俺と同じ風凰学園2年生だ。
そして、コイツもまた異様な能力を持っている。
コイツの能力は武器を持たせると初めて使った武器であろうがスペシャリストが使うように扱えることだ。
「お兄ちゃん、達彦先輩が困ってるじゃない」
俺を柄谷の魔の手から救い出そうとしているのは柄谷の実の妹、高秋澪である。
この子もまた異様な能力がある。
それはこの子は武術をやらせれば右に出るものはいないというものだ。
兄とは正反対の能力だがこれはこれでなかなか強い。
最強の人格でも苦戦しそうな強さだ。
兄は渋々俺から離れた。
「た、助かった、サンキュー、澪」
「はうっ、せ、先輩それは反則ですよぉ」
顔を赤くしながら澪が言ってくる。
「え? 俺なんか言った?」
「気づいてないし……」
今度は落ち込んだ。なんてめんどくさいんだ女の子ってのは。
「そんなことより先輩、放課後、緊急招集だそうです」
「緊急招集? またなんで緊急なんだ?」
「知りませんよそんなこと、とりあえず伝えましたよ? じゃあ先輩放課後で」
なんだそりゃぁあああああ!
押し付けられたよ、勝手に招集する約束させられちまったよ。
反論しようかと思ったがもう澪はいなくなっていた。
それと同時に柄谷もいなくなっていた。
「何なんだよ!」
誰もいない場所で俺は人知れず叫んでいた……。

そして、放課後……。
「遅いわよ、達彦」
「すいませんでした、超直感が可愛い女の子を追っかけていて遅れました」
俺は来たくはなかったとは口が裂けても言えない。
「さあ、始めるわよ、今日集まってもらったのはほかでもないHERO部に新しいメンバーが入ったからよ」
新しいメンバー?
「入りなさい」
「もうそういう雰囲気は作らなくてもいいのに」
入って来たのは鈴音だった。
「鈴音なんでお前が!」
「なんでって――――」
「この子には特別な力があるからよ」
鈴音の代わりに部長が理由を話してくれた。
「知っての通り私たちは特別な力が、能力があるわ」
風凰学園の生徒数は約3000人、その過半数が特別な能力の持ち主だ。
その過半数の多くがここHERO部の部員だ。
「それがなんだっていうですか?」
「だからこの子もその能力を持っているのよ、ただ普通の能力ではないけど」
普通の能力でない?
能力を持っている時点で普通ではないのだが……。
「この子の能力は能力を生み出す能力」
「はい?」
能力を生み出す能力?
「鈴音は特別な能力を複数持っているの、しかも全て自分で作ったもの」
作った?
「それなら俺も作れますよ?」
俺の場合、自分自身にひどいトラウマを負わせてその分野でいう天才の人格を作り出すことでできるという作り方だ。
「達彦なんて比じゃないスピードで作るのよ、鈴音は」
俺は早くて半年でひとつの人格を作れるがそれよりも早く作れるのか!
「鈴音は一時間で能力を作るわ」
「待ってください! そんなのありえませんよ部長! 一時間なんて短すぎる!」
「鈴音の作り方は達彦とは違うのよ」
人格を作る以外に能力なんて作れるのか?
その時俺の中でひとつの方法が閃いた。
「まさかとは思いますが鈴音は能力のプログラミングしてそれを起動しているんですか?」
そう俺の中に閃いた方法とは自分の頭の中で能力のプログラムを組んで保存し好きな時にそのプログラムを起動させることだった。
「さすが天才の人格、よく見抜いたわね偉いわ達彦」
と言って頭を撫でてくる部長。
「てことは当たりなんですね?」
「そうよ、鈴音の能力はそうやってできてるわ」
でもそんなこと本当にできるのだろうか、もし出来たとしても俺の考えが正しければきっと……。
「多分、達彦が考えてることは正しいよ」
俺の考えを見抜いたのは鈴音だった。
「私は一つ能力を作るごとにかなりの休息が必要なの」
やっぱりか、頭でそんなことをすれば脳にかなりのダメージを負うことになる。
回復には半年はかかるだろうな。
「はい、話はここまで、これからは各自自由行動」
部長がそう言うと集まった人達は解散していった。
「美枝、ちょっと手伝って、それと達彦と鈴音も」
ゲッ、部長の手伝っては手伝いじゃないからなぁ。
この前も手伝ってと言われて手伝えばロンドンまで飛ばせれてたかが買い物をさせられた。
「ぶ、部長、俺用事が出来ましたんでこれで!」
「私も用事が出来たから、王香ごめんね」
鈴音も部長のことをよく知っているみたいで逃げ出す準備をしていた。
神崎さんといえばなにも言わず「ムリ」と書いたメモを置いていって消えてしまった。
「鈴音、あなたそんなことを言っていいの?」
部長が微笑みながら言ってくる。目は笑ってないが……。
「王香、今それを言ってくる?」
鈴音も負けじと反論をしているが部長は揺るがない。
「ええ、今それを言っていくわよもちろん」
鈴音はぐぬぬと声を上げながら少し考え白旗を上げた。
「私の負けよ、で何すればいいの?」
鈴音が部長に依頼内容を聞いている。
同時に俺の中に疑問が募る。
「な、なあ、なんで俺の袖を掴む?」
そう鈴音が俺の袖を掴んで離さないのだ。まるで俺を逃がさないように。
「達彦を逃がさないためよ」
「そうですよねぇ~」
俺も諦めて部長の依頼に付き合わされることになりそうだ。
さて今度はどこに転勤かな?
そんなことを考えていると部長から意外な依頼がきた。
「鈴音の学校案内を頼むわ」
「「へ?」」
俺と鈴音は同時に声が裏返った返事をする。
学校案内?
「何かおかしいかしら?」
「おかしいですよ! 部長熱ですか! 熱なんですか!」
「そ、そうよ! 王香何か変なものでも食べたの?」
鈴音も同じ意見を持ったらしくおかしなことを聞く。
「そんなにいつもおかしいこと言ってるかしら」
部長が少し考える。
が、すぐに顔を上げ発したことは
「ま、そんなことどうでもいいから早く鈴音を案内しなさい」
だった。
俺はそんな部長に負けて鈴音に学校案内をすることになった。
「ご、ごめんね」
「ん? 何が?」
「こんな面倒なことに付き合わせちゃって」
そんなことは……ないといえば嘘になるか。
「確かに面倒だ」
「やっぱり」
ガクッと肩を落とす鈴音。
「だけど、これはこれでいいんじゃないか?」
確かに今の俺は女の子が苦手だけどコイツは別だ。
なんていうかコイツは、鈴音は俺にとって大切な何かになりかかっているような――――。
「本当に? 本当にそう思ってるの?」
俺が考えてる途中で言葉をかけられ今まで考えていたことがまるっきり飛んだ。
「あ、ああ、そうだよ、これはこれでいいと思うよ楽しいし」
これは本当だぞ? 言っておくが。
「楽しい、うん楽しいって言ってくれた」
ぼそぼそと何を言っているかわからないがきっと喜んでいるんだろう。
「何か言ったか?」
とりあえず気になるので聞いてみる。
「ううん、なんでもない」
きっとこう返してくるだろうと考えていたので別にいいとは口が裂けても言えないな。
それから俺たちは三時間かけて学校案内を済ませようとしたが全然時間が足りなかった。
さすが、才能ある者たちの学校だけあって学校がでかいことでかいこと思ったより時間がかかってしまった。
「疲れたか?」
「そうでもないよ、まだいけるよ?」
ほう、威勢がいいな。
「よし、じゃあもう一周行くか」
「ええ~」
ちょっと泣きそうな顔で答えてくる鈴音。
「ははは、嘘だよ」
「もう、いじわる!」
やばい、これはなんかハマりそうだ。
女の子が苦手な俺はこういうことをしないたちだったが鈴音は何か違うな。
多分俺はこいつを……いや考えすぎか。
「どうかした?」
「いや、なんでもない、さあ次行くぞ次」
さっきまでのことは忘れようそう思いながら俺は鈴音を従えて学校案内を再開した。

それから数時間後……。
「さすがに疲れたなぁ」
やっとのことで学校案内を済ませた俺たちは学食で一息入れているところだった。
「そうだね、まさかこんなに広いとは思わなかったよぉ」
べっとりとテーブルに顔を沈ませながら言う鈴音。
まあ、正直俺もなんでこんなに広いんだと疑問に思ったが、なにせ才能ある奴らが集まる学校だからと自分に言い聞かせ勝手に納得することにした。
「ねぇ、達彦」
「ん? なんだ?」
学食のパンを食べながら鈴音の対応をする。
「その、達彦は好きな人いないの?」
好きな人……か。
「いない……と言ったら嘘になるかな」
自然と言葉を濁す俺。
「ふーん、そうなんだ」
聞いておいて興味がないような返事をする鈴音。
「鈴音はどうなんだよ」
変な空気なる予感がして俺は話題を変えようとした。
「私は……」
「鈴音?」
「私は人が好き」
人が好き、そういったのかコイツは。
「私はね、達彦、人が大好きなんだよ、どれだけ嘘や悪さをされても嫌がらせをされても私は人を嫌いにはならないよ」
「な、なんでだよ」
疑問だらけだ。
コイツの言うことは俺に疑問しか与えてはくれない。
なぜ人を嫌いにはならないのか。
それが俺に与えた、最大の疑問だった。
「私にはある昔の記憶があるの、それは私が死にかけたとき必死に助けようとしてくれた人、私のためにその人は泣いてくれたのだから私はそういう人が少なからずいることを知っているから、人を嫌いになったり絶望したりしないの」
理由を聞いても俺の中にある疑問は解消されない。
モヤモヤしたものが増えるばかりだ。
その人は幸せなのだろうか、なぜ泣いたのか、その人の行動はこいつ鈴音にそこまでの希望や信頼を与えられたのか。
「さ、今日はもう帰ろう? 日が暮れてきたし」
もうそんな時間か。
「そうだな、俺も帰って今日はゆっくりしたいよ」
正直もうクタクタだ、広すぎる学校も考えようだな。
俺たちは学食出て俺の家に向かった。
「達彦?」
「なんだ?」
「ずっと守ってくれるよね?」
何を今更。
「俺はお前の守護人だろ? 守るのが俺の専属任務だ」
俺はなんの面白みもなく俺は言ってやった。
「任務とか、責任とかそういうのじゃなくて、その、心から私のこと守りたいと思ってるかとかで……」
「何言ってんだ、お前?」
正直何を言っているのかさっぱりだ。
「なんでもない、さ、早く帰ってご飯食べよ? 私今日も料理頑張っちゃうよぉ!」
できればあまり頑張ってほしくはないのだが……。
「ほどほどにな」
とりあえず釘を刺しておいたが鈴音には効かないだろう。
だってコイツは……コイツは……。

『メールを受信しました』
ネタバレはダメよ?
そんなことをすればこの世界が全て灰色に変わってしまうじゃない。
私はそんなこと望んでいないわよ?
大丈夫あなたの夢は私が叶えてあげるから……。
あなたの最高にして最大の夢は私がきっと……ね。

「俺の出番少なっ! なんだよせっかく準備してたのに~」
「さーて、来週の風凰学園は~『柄谷、死、さよなら』来週も~サービスサービス」
「恥ずかしがるなって!」

風凰学園HERO部の抑止力 3

風凰学園HERO部の抑止力 3

風凰学園HERO部今日もここは賑やかか?

  • 小説
  • 短編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-03

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