GSを聞きながら

 五十年前の昼は昼として存在するとして
 こちらとあちらとを分け隔てているものは何だろうか
 建物や科学技術の変化だけが
 我と彼とを分け隔てているのだろうか
 だとしたら何という貧しさ
 何という狂おしさ
 何という短さ
 シーラカンスの瞬きのうちに過ぎゆく時を
 僕らはあくせくしながら
 坂を歩いていく

 小早川中納言の変節を見下ろす弁当がらたちと
 算盤が築いてきた中空構造は堅固に続いて
 穢土の夜ははるか遠く
 しかし二千六百年の幕政的死産児を
 太字で教えられる子らの虚ろな行く末を案じるとき
 やはりそこにある坂は
 どちらに傾いているものか知れたものではない

 モーニング・グローリーの可憐な朝に目覚めたなら
 後はただ毒に溺れてしまえば済む
 熱情的な昼の勢いと
 直線的な夜の装いをさすらった後に見つけた港の衣擦れは
 GSではないシティ・ポップの系譜
 王政復古の夢を見たり
 古代魚の化石を見たりして
 転倒した先に待つものは果たして何ぞや
 私は手を止め、ブランクという名の概念を示して筆を置くのみである

GSを聞きながら

GSを聞きながら

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-03-04

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted