ダメか

ふらりホームセンターに立ち寄ってみた。あてもなく店内を散見する。

つまり暇なんだ。

休みの日だって何するわけでもない。家にいればゴロゴロ、車で出かければブラブラで終わる1日だ。

「いらっしゃいませ」

すれ違う店員が挨拶してくれた。横目でやり過ごす赤い上着の男性店員越しに、棚に並ぶ品が目に入った。

足を止めた売り場は工具コーナーだった。様々な工具が並べてある。

「自動回転制御の電動ドリルか」

値段が目に入る。

「う・・・・・・高い」

手に取った電動ドリルをそろり元へもどす。今度は反対の棚の方を振り向いた。目についた物の率直な感想は、

「バール・・・・・・のようなもの?」

どうしてテレビでは、はっきりバールと報じないんだろう。
考えても何も浮かばないが、悩むふりで頭を傾けてみた。

もちろん俺は買うつもりはない。否定の意思表示で、この場を離れることにした。

「いらっしゃいませ」

散見する店内で、再びすれ違う店員に挨拶された。さっきの赤い上着の男性店員だ。
やり過ごして視線を前方に戻せば、またまた売り場が目に留まった。

「へえ、健康器具コーナーか」

ランニングマシーンや自転車タイプの健康器具が並んでいる。
そういえばと、最近気にしていたことを思い出した。
体重が三桁までに近づいている俺である。六捨七入で量れば、かろうじて免れているが・・・・・・なんて、ご都合主義かな。

「ははは」

ひきつった笑顔で独り立つ俺は怪しい人か?・・・・・・なんか疲れる、自分に。

「はあ」

ため息を吐いたって体重は減りやしない。ちょっと健康器具を見てみることにした。

「おっと」

なんかいいサイズの足踏みステッパーがある。いわゆるウサギの耳みたいな形の踏み台が上下に動くタイプだ。
商品の説明がポップに書いてある。

何々、新聞紙一面の大きさで場所をとりません。消費カロリー表示、タイマー機能有り。
おお、いいではないか。値札を確認する。

なんと安い!思わず叫びそうになった。・・・・・・買おうかな。欲が出て手を伸ばそうとした。

もう一度値札が視界に入る。

「んっ」

耐重80Kg。そう値札の隅に書いてある。

「ダメか」

そして俺はダイエットを諦める。

ダメか

ダメか

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-02-29

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