息子に語った物語

小林アレクセイエフ

  1. 旅立ち
  2. 砂の島

三歳の息子に「寝る前にお話しして」といわれて、こっちも半分寝ながら紡ぐ物語。延々と続く可能性あり。

旅立ち

かなり昔の話。
南の海の小さな島に、小さな男の子が住んでいました。今でいえば保育園みたいな、小さい子供達のための学校に通っていて、暇なときにはいつも浜辺で遊んでいました。

男の子の名前はポイ。

ポイのお父さん、お兄さんは、大きな海賊船に乗って世界の海を旅していました。ポイは、お父さんとお兄さんが自慢でした。優しくて、強いからね。

ところが、ある時、お父さんとお兄さんを乗せた海賊船が返ってこなくなりました。何か月待っても帰ってきません。ポイのお母さんは毎日心配そうに海を眺めていました。

ポイが学校から帰るとき、市場で大人たちが話しているのが聞こえました。

「もう、ポイのお父さんとお兄さんは帰ってこないさ」
「そうだよ、どこかの国の軍隊か警察に捕まってしまったに違いない」
「一生監獄から出られないのさ」

ポイは悲しくなりました。

そして、決心したのです。

「僕がお父さんとお兄ちゃんを探すんだ」

そして、小さな子供サイズの海賊船を一人で作り、海に漕ぎ出したのです。
小さな小さな、ポイの大冒険が始まりました。

砂の島

航海は大変なことの連続でした。ポイを乗せた小さな小さな海賊船は、山のように大きな波に持ち上げられたり、バケツをひっくり返したような大雨に打たれたり、バスのように大きなクジラに意地悪をされたり……。小さなポイは、必死で歯を食いしばり、たくさんの苦労を乗り越えました。

ある日、嵐のあけた朝、ポイは白くてまっ平らな島を見つけました。その島は砂浜しかなくて、少しだけヤシの木が生えていて、ポイと同じくらいの小さな子供がひとり住んでいました。

ポイは浜辺に小さな海賊船を引っぱり上げ、珍しそうにこちらを眺めている男の子に挨拶をしました。

「やあ」

男の子も「やあ」と返事をしました。男の子の名前は、クルルといいました。ポイとクルルは、島の真ん中にある井戸の脇に座って、いろんな話をしました。

「僕はお父さんとお兄さんを探して、旅をしているんだ」

とポイは言いました。クルルは、

「それって、楽しいの?」

と尋ねました。ポイは何と答えたらいいのか、ちょっと困ってしまいました。楽しいはずありません。お父さんとお兄さんがいないのが寂しくて、ポイは仕方なく冒険の旅をしているのです。なんて言おうかな、と思っていろいろ考えていると、クルルは不思議そうにポイを見つめました。

「あのね」

ポイはいいました。

「楽しくはないんだ。ただ、お父さんとお兄ちゃんに会いたいだけ」

「会ったら、何をするの?」

「何もしないさ。ただ、会いたいだけ」

クルルは目を丸くして「へー」といいました。「僕はお父さんやお兄さんがいないから、わからないなぁ」

今度はポイが「へー」といいました。

「お父さんもお兄さんもいないんだ。お母さんは?」

「いないよ」

「寂しくないの?」

「最初からお父さんもお母さんもいないから、寂しくないよ。寂しいって、どんなことかわからないんだ」

クルルはまじめな顔で、そう答えました。

ポイはちょっと迷ったけれど、いいました。

「じゃぁ、ぼくの海賊船で一緒に旅をしてみるかい? 寂しいって何かを、見つけられるかもしれない」

クルルは「いいね」といいました。もしかしたらお父さんやお母さんを見つけられるかもしれないと思ったのです。

ふたりは、ここから先は一緒に冒険の旅をすることにしました。ポイはお父さんとお兄さんを、クルルは「寂しいってどんなことか」を、探すための冒険でした。

息子に語った物語

息子に語った物語

  • 小説
  • 掌編
  • 冒険
  • 幼児向け
更新日
登録日

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted