百句選
ノートの隅とかに書いていたもの。時期も季節もばらばら。全部で百。
秋寒し
出会いがしらに
とんぼたち
ぬるい風
平らな道も
厭になる
落武者だ
草葉の陰から
こんにちは
低脂肪
高タンパクよ
ちくわ食え
いみじくも
炭素繋がり
生きている
板前に
屈せぬ海老の
揺れるひげ
ぶつかれば
硝子の壁ぞ
たまげたる
心中で
小人わめくも
知らん顔
病み上がり
熱を奪えよ
流れ水
目が乾く
世間の風と
クリスマス
大空よ
許しを乞うて
土の味
我ながら
涙の価値が
底をつく
見渡せば
瓦礫の山の
上に犬
あのアマの
声を聞くなり
顔面痙攣
暴力と
反暴力は
双子ちゃん
人間は
幽霊として生き
動物として死ぬ
神様は
恥を知らない
しょうがない
あやまちは
八千代の時よ
アトミック
幽霊の
正体見たり
火星人
泥船で
こぎだすふたり
あいだに愛
待ちつくし
鳩を数える
きりがなし
魚心
人の涙に
溺れ死に
冬の空
記憶のかなた
汽車の窓
雷鳴や
目覚める心
震えやまず
胸騒ぎ
掟やぶりの
暴れ馬
今日の日は
じっと湯が沸き
立つを眺め
ドアの音
さよならなのに
立てぬ君
ひとりでも
ひとりじゃなくても
月明かり
友が老い
いたたまれずば
目を瞑る
街静か
止まない噂
耳に鳴る
見上げれば
空に割り込む
クレーン車
道程は
遠く冬晴れ
咲け椿
何故憎し
問うても苦し
トゲ痛し
朝ぼらけ
並んで光る
蛙の目
腹ペコか
たわむ川面の
ウシガエル
ずぶ濡れて
道を尋ねて
鳴く蛙
雨模様
蛙が歩く
後ジャンプ
立て続け
押しよせ消える
風の音
そそくさと
蟹が歩けば
よき渚
底に来て
横切る蟹は
放浪者
ヒシガ二は
ハサミがヤバし
驚くよ
疲れから
愚痴がぶくぶく
蟹の泡
ロッカーに
あかべこ誰ぞ
残せしや
やっとこさ
握ったものが
べとべとだ
ひよどりに
気が散るばかり
谷の底
さようなら
虫も食わない
はなとゆめ
酒浸り
二十四時間
砂を吐く
自らを
葬る重み
膝笑う
他人の家
拒んで迫る
白い壁
春の日や
あたまにみちる
悪い夢
でかいのに
バスケで弱い
その類い
手を出して
きもちもちもち
テレパシー
やめてくれ
やたらめったら
キムチ味
雪消えて
チーズをかじる
暇な午後
皿の上
蟻の行列
BBQ
前世から
カラスはこわい
たまらない
励ましも
罪作りだね
サバイバル
怪我深し
遅れてやがて
泣くだろう
癖だけど
焦り早まり
来すぎたね
春なのに
ちょうどの時を
逃がすだけ
理由なし
天然氷
胸に抱く
阿修羅だな
もぐらたたきが
上手いのな
知らぬ宿
黒ずむバナナ
甘い朝
山なみの
猿の軍勢
秋の赤
所縁なし
コンビニ強盗
とその影
いきものは
潜在的に
テロリスト
色めきた
糸からまりて
こんなざま
用途なし
かまぼこ板は
捨てるべし
虫けらめ
こん畜生め
化け物め
星降れど
夜は太るよ
チョコレイト
活きがよし
ロックンロール
海の幸
森の奥
キノコのびのび
雨続き
熊が出る
高齢者の運転する
車も走る
ふざけるな
ウニが刺されば
大手術
おそろしや
猫みて騒ぐ
別人格
魔が差して
ねぎで踊って
皿を割る
籠の鳥
ネジを巻かれた
動きかた
傘の骨
銀色残し
スクラップ
崩れゆく
廃マンションの
おおねずみ
靴の底
足踏みしてて
抜け落ちる
寒いから
反応するのは
やめにする
脳の声
逃れられない
逆らえない
みんなして
どうでもいいが
悩むふり
豚と豚
押し合い圧し合い
泥々だ
顔も手も
すすけたじじい
歯は白い
必ずや
そう思ったのは
随分前
山跨ぎ
フェーン現象
熱い風
過冷却
触れれば終わり
凍るだけ
夏の日の
山葵を洗う
岩清水
野分過ぎ
砂に残った
波のあと
どんぐりを
どんどん拾う
君はいくつだ
街明かり
夏の川面に
映る夜
そういえば
昨日はのど飴しか
食べなかった
なんなんだ
女囚さそりか
そのファッション
キャメルのこと
からし色と呼び
馬鹿にする
眼鏡の子
カバに執着
類を見ぬ
ベビーカー
中を覗くと
小型犬
北国で
ラクダの目付き
の人に会う
冬旅行
英語滑らか
ニセコの湯
春の犬
ぐっすり眠れ
花のかげ
百句選