信じてないかみさまに祈る
五十歳のおんぼろアパートを住処と即決したのは、だって、天窓があったから。
あのこぼろっちいアパート住まいらしいよ。
最高なのは、月あかりがたっぷり部屋にみちること。
さびしいだけの夜だった。孤独でいっぱいになった肺が酸素を拒んでくるしいだけの夜だった。泣きたくないとくちびるを噛むほどとまらないなみだの夜だった。それだけといえば、それだけ、だった。
夜。寄るべのないからだが月あかりにあまやかされる。いまの、夜。
携帯が鳴いている。午前二時。街灯のまあるいひかりのなかで、待ちあわせよう。自販機の、ある場所だよ。
こないくせに。どうせこないくせに。
それをわかっていながら、わたしはどうせいくのだ。
そしてまた泣く。月の欠片が天窓にぶつかって、がつ、と音がして、みあげるとまたひとつ落ちてくる瞬間だった。
きっと月でも恋に落ちて恋を失ってくそやろうとさけびたいだれかが泣いているのだろうなと思った。
月には、朝が訪れている。
信じてないかみさまに祈る