mellow
あこがれの海のまえで
金槌を自称している
つかいふるした沈黙に
つぎはわたしが つかいふるされ
過去に声帯を盗られた
手垢まみれの約束が
浮かび 漂い 侵され 沈み...
みえなくなってしまうのだけは
それだけはどうしても耐えられなくて
華奢なこころを抛って!
よんどころない我流の泳法で
掻き毟って 突き破って
たったひとつの輝石をみつけて
それが贋物だとしても
抱きしめずにはいられなかった
規則的に唄いだす白波も
耳を掠める追憶も
嫣然と笑う積乱雲も
小さくなりゆくあなたの背中も...
このたった一粒の輝石をすくい
それを飽くまで噛み砕き
ふたたびあこがれないように
わたしはこの海に来たのだった
mellow