mellow

あこがれの海のまえで

金槌を自称している

つかいふるした沈黙に

つぎはわたしが つかいふるされ

過去に声帯を盗られた

手垢まみれの約束が

浮かび 漂い 侵され 沈み...

みえなくなってしまうのだけは

それだけはどうしても耐えられなくて

華奢なこころを抛って!

よんどころない我流の泳法で

掻き毟って 突き破って

たったひとつの輝石をみつけて

それが贋物だとしても

抱きしめずにはいられなかった

規則的に唄いだす白波も

耳を掠める追憶も

嫣然と笑う積乱雲も

小さくなりゆくあなたの背中も...

このたった一粒の輝石をすくい

それを飽くまで噛み砕き

ふたたびあこがれないように

わたしはこの海に来たのだった

mellow

mellow

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-02-23

Copyrighted
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