映写機

一枚の古い手紙。

彼の優しい笑顔がいつまでも写し出される

拝啓、
元気ですか?もう1年たったけど、そっちではどうですか?元気にやっていますか?
手紙ってなれないから、上手くかけないし、なんか照れるな。


そんな事が書いてある手紙が古い本の間からこぼれ落ちる。
宛先も書かず、切手も 貼っていない可哀想な手紙。
ふと、涙が頬を伝い流れ落ちる。
続きを読みたいのに滲んでいて読めない。
きっと泣きながら必死で続きを書いたんだろう。
そんな私を見て彼は、いつもの笑顔で「ばかじゃないの?」と笑って励ましてくれる
かしら。それとも一緒に泣いてくれるかしら、

ふと思い出す。
あの日の事を。

彼を奪ったアスファルトを見る。
そうして呟く
「ねえ、なんでさよならも言わずに消えたの?」
「なんでそんなずるいことするの?」
「本当わがままだよね。」
「いつも強がってばっかで、私がいつも甘えて。
覚えてる?私のわがままで寒いのに公園で何時間も話したの。

次の日二人して風邪引いて学校休んで。
ごめんって言ったらさ、大丈夫だよって優しく笑ってくれてさ?
自分の事より友達とか私の事ばっか考えて、一人で悩んでさ。
支えてあげられなくてごめんね?
こんな事言ったらまた大丈夫って笑うんでしょ」
彼の笑う顔が思い浮かぶ。



ふと優しい風邪が吹く。
どことなく懐かしい。

「また笑われちゃったのかな」

また涙があふれてくる
彼の笑う顔、照れる顔、困った顔がいつまでも、いつまでも壊れた映写機見たいに写し続ける。



「ありがとう」

映写機

映写機

  • 小説
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-11-02

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