約束

かじかんだ手をポッケに突っ込んで、夜道を歩く。チカチカ光る街灯と一緒にベンチが浮かび上がっては消えた。「寒いね、父さん」父さんはうんともすんとも言わず、僕のずっと前を歩いてく。僕はそんな距離感が心地いい。父さんが不器用で頑固で男っぽくて、そんな様を表してる感じがして、そしてその背後を何も言わずについていく僕自身が好きだ。父さんが歩くとそこに道ができる。強い風が吹いて、僕はその風に押されもせず全く同じスピードで歩くのが心地いい。父さんの手は最近しわが増えてきた。姉ちゃんが「父さんも、もう歳やけぇね」そう言ってた。少し胸が重くなったけど、でも、父さんは幾つになってもずっと僕の前を歩き続ける、父さん、安心して、「僕が父さんの面倒を見るからね」、そう大きな背中に強く願った。

約束

約束

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2020-02-23

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