酸に亡骸
「雨には一緒に当たってほしい」
哀しげに笑いながらあなたはそう云いました
わたしには
(洟啜)
そのときのわたしには
その意味がわかりませんでした
もうふたりで梅雨を越せないことを想うと
想うと...
(ひとの眼というのは哀しげに笑うときにこそ美しい光沢を放つのだと思ったのです...)
何層にも重ねた硝子のような眼をまえにしても
わたしなら一枚として罅をいれない自信があったでしょう...
誰にでも自分の正義があるというのは
誰もが悪人であるということです
いまとなっては共犯になるのも厭わないのです
ですから
わたしも哀しげに笑いかけるので
一緒に
とけるまで雨に当たりましょう...
酸に亡骸