奈落の縁の花園

虚文学 純

異星からの侵略者に地球全土が征服されてから五年。支配者の異星人は、何種類かの資源を略奪しているだけで、地球人の統治は地球人代表に委ねているから、オレ達の暮らしは昔とそれほど変わんない。でも、一部にすごく変わったこともある。その一つが、女っぽい顔の男の子が小学校卒業後に強制入学させられる、男の娘学校の存在だ。オレは今日からそこに通うことになる。
3月の途中で交通事故で入院して、入学式にも出なくて、このまま永遠に学校行きたくないと思ってたけど、5月になる前に退院させられて、学校行かなくちゃいけなくなった。
中学だから制服着るけど完全女子の服だ。しかも校則で下着も女ものじゃなくちゃいけなかった。
オレは生まれてはじめて頭にカチューシャ着けて、金持ちのお嬢様キャラみたいなパンツはいてスカートはいた。
親の車で校門の前まで送られたけど、車降りるのが本当に嫌で半泣きで抵抗してたら、両親にものすごく励まされる。まるでオレがこの学校の生徒に選ばれたのが家の誇りみたいな感じで、喜んでるっぽかった。むしろ恥だろ。
仕方なく降りると、登校時間だから生徒がたくさん歩いてる。皆めちゃくちゃ美形の女子中学生だ。と一瞬本気で思ったけど全員男なんだよな。きめー。一番きめーのは、校門の所に書かれてる学校の名前が、「日本純真女子中等学校」。女子じゃないじゃん、何で嘘ついてんだ。ここが男子校だって世の中皆知ってんだぞ。
「うわ、きめっ。名前からしてゴミ過ぎる学校だな吐くわマジ。」
親はオレを降ろすとそのまま帰っちゃったから、オレは一人言でストレス発散していた。
そうしたらいつの間にか大人が前に立っていた。すげー若い女の先生だった。見たことないレベルで綺麗な人で、体が有り得ないくらい細い。本物の女かもしれない。生徒じゃないなら男が女装する必要も無さそうだし。
じろじろ見てたら、いきなし怒鳴られた。
「その言葉づかいは何!?お下品にも程がありましてよ!」
「先生の言葉づかいこそ何なんだよ……」
つい反射的に思ったこと言った。だって言葉づかい変すぎだろ。真面目な話の時にありましてよって、何のキャラだ。
先生はますますキレた。顔は美形だし声も相当可愛いけど、頭はヤバそう。
「信じられません、貴女の心は真っ黒く汚れていますわ!お仕置きしなくてはなりません!」
変な小芝居を真顔で続ける先生に、肩を掴まれた。ぐいっと体を傾けられて、何だこれ、と思ってたら、先生は手を高く構えて、何かオレの尻を叩こうとしてるっぽい。いきなり体罰?この学校、体罰ありなの?
とか考えるとこだけど、その時オレは全く考えなかった。もっとインパクトあることをみてしまったからだ。先生が。
股にテント張ってた……。スカートの真ん中が思いきりふくらんでた。破けそうなくらい。
勃起だよ!しかも大人だからヤバイデカイ。この教師、生徒の尻叩こうとしながら勃起してるよ!変態のオカマだった………。このままじゃ性犯罪オカマ野郎に尻叩かれまくんよ!逃げようとしてもこの人、力強くて無理くさい。
先生鼻息ヤバイ荒い。犬並みだ。
「ウヒュヒェヒェヒェ……ちっちゃいお尻可愛い……」
有罪決定のきめーこと言ってんよ!その声はむちゃくちゃ可愛いんだけど。
誰か助けろよ!でも周りで見てる奴ら、教師に反抗なんか出来なそうだしな。
とか思ってたら意外と助けてくれる人が来た。
「待って下さい、その子は今日が初登校なんです。校則も何も知らないはずですよ。」
男の声だ!完全なおっさんの声。歩いて来た奴は見た目もまともにおっさんだった。しかもかなりふつーの顔。ここで普通の男に会うとは!学校と無関係な人が入り込んで来たんだろうか……。
「し、しかし大変に品性下劣な言葉でしゃべっていたんです!矯正しなくてはなりませんわ、校長先生!」
校長かー!
「それはこれからじっくり教えればいいんです。何も知らない子に苦痛を与えるような教育は僕の目指すものではない。ここは任せて、あなたは自分の教室に行きなさい。」
「………ちぇっ。柔らかそうなお尻なのに……。」
オカマ変質者はグチグチ言いながらいなくなった。オレは校長と二人になる。助かったけど気まずくてやだな。
校長は笑顔で話しかけてくる。
「はじめまして、岩槻ゆづきさん。純真女子中学にようこそ。美しく魅力的な女性になれるよう頑張って下さい。」
いや、おかしいだろ。頑張っても女性にはならないよ。そういうこともおかしいんだけど、まずおかしいのは。
「オレの名前、違いますけど。岩槻優人っす。」
「いいえ違います、あなたはゆづきさんです。今日から名前が変わるんです。前の名前は忘れていいです、もう一生使わないので。あ、字は夕方の夕に、満月の月ですよ。」
とんでもなさ過ぎだ校長の発言!こいつもヤバイ奴だ。
「与えられた名前を受け入れるのも大事な校則です。この学校は校則違反には厳しいですよ。言われた通りにしないことは認められません、夕月さん。返事はどうしました、夕月さん?」
実はあんまり優しくないな校長……。でも自分の名前を捨てろなんて言われて言いなりになれるかよ。オレは無言で不貞腐れた。怒られるかと思ったけど意外にそうならなかった。
「ぐほぉっっっ………!」
校長はうめき声をあげてよろめいた。それというのもいきなり竹箒の柄で喉を思いきり突かれたのだった。いや、オレがやったんじゃない。イラついてたけどさすがにそこまでヒドイ真似は人として出来ん。
やったのは突然横から割り込んで来た生徒。かなり背が低くて手足真っ白で細くて、見た目弱々しい体つきだが動きは野生的に速かった。何だこれヤンキーか?オレ、本物のヤンキー見たこと無いんだけど。次々異常な奴出過ぎだろ。
「何も知らない子に苦痛与えてんのはてめーも同じじゃん!いい加減にしろクソゴミ!」
声、さっきの先生よりも可愛い。こんな可愛い声はじめて聞いた。と、思った瞬間、ヤンキー的生徒は振り向いた。
こんな可愛い顔はじめて見た!もっと出来の悪い動物的顔を予想してたのに!雪みたいに白くて、細くて、いかにも綺麗な顔してそうだけどゴリラっぽい顔っていうことになると思ってたのに!
ダメだ、直視出来ない。見てるだけでかなり恥ずかしい。こんな女が現実にいるとは………いや男だ!
男の顔を見て恥ずかしがってちゃ駄目すぎる。敢えて目を合わせてオレは言い放った。
「助けてくれたのはいいけど限度ってものを考えろ。校長が死んだらどうすんだよ。」
正直、半分ビビりながら言った。ヤンキーにキレられるかもと思ってたから。でも美ヤンキーはむしろスーパー優しい笑顔になった。
「ラッキーじゃん。出来れば殺したいしさ。」
発言は優しくなかった。本物ヤンキーだった。でもオレには怖くなさそう。校長は地面に手をついてうめき続けてて、何もコメントは無かった。
「あたし、上橋姫葉。同じクラスだよ、よろしくね夕月。」
挨拶されながら手を握られた。ヤバイ柔らかくてあんまり握ってたらアイスみたく溶けそう。
「校長が復活したらめんどいから、行こっ。」
四つん這いで苦しんでる人を放置してどっか行っちゃうのは人としていいことなのか、少し考えたけど本物ヤンキーには逆らえない。というか相手が可愛すぎて何も言えずに引っ張られていった。
昇降口は綺麗な色のおしゃれな飾りがいっぱいあって、女子の空間て感じだった。あと、かなり小さい。下駄箱の数が少ない。
何人もいる、女にしか見えない男子達が、上履きに履き替えている。ヤバイ、全員可愛いよ。みんなお嬢様的な靴下はいてるな。ついじっくり見ちゃう。
「夕月、見すぎだよ。ゲイなの?」
上橋に若干冷めた声で言われた。オレはあわてて言い返す。
「この学校、変な所だから、珍しくて見ちまうだけなんだよ!ゲイじゃねーから!いつまでも手ー握ってんなよきめーなー!」
不本意だが世間体の為に柔らか上橋ハンドを振り払うオレ。しかし手は握られたままだった。
「だめだよ、お友達同士はおててつないで歩くのが校則なんだから。ほら、周り見てみなよ。」
何かムッとした顔の上橋に言われて気づいたけど、確かに手をつないで歩いてる奴ばっかだ………中学生男子なのに………見た感じはやたら可愛いんだが………。
だけどそういうことなら上橋と手をつないでても問題無いんだな。出会ってまだ十分も経ってないのに友達同士なのかどうかは問題かもしれんが、上橋的には問題にしてないみたいだしオレも何も言わないでおこう。これから毎日、この手を触り放題なのか………………いや、男の手を触って喜んじゃ駄目だろう。でも奇跡みたいな柔らかさが気持ち良すぎてなあ……
「あ、言っとくけど手以外は触っちゃダメだからね。」
ギクウッッッッ!!!!
オレはその場で跳び跳ねそうになった。心を読まれたかと思ってビビりまくりで瞬時に背中とか脇とか汗でグショ濡れに。
でも見抜かれた訳じゃなかった。
「手以外の接触は校則で厳しく禁止されてるから。教師にバレたらお尻叩かれるだけじゃ済まないよ。気をつけてね。」
なんだ、そういうことか………別に男同士で体触りあう趣味なんかねーし、禁止されなくても最初からそんなことしねーけど。
「ん、待てよ?だったら肩組むのもアウトか?頭どつくのも、足絡めて転ばすのも駄目ってことになんのか?」
「そうだよ。そんな乱暴なことする子、いないけど。狭いところで体がくっついちゃったりしても罰則になるからね。そのかわり……手だけは好きなだけ触っていいから……はぁ……夕月の手、すべすべだね……」
なんかコイツやけに手をこすりあわせて来る。まさかあの教師の同類か?
スカートの前が膨らんでないか、見ようとしたが鞄をピッタリ当てて隠してやがる。怪し過ぎるな。
「一応、聞くけどよ、上橋ってゲイじゃないよな?」
「はあ?何言ってんの?!女の子が好きに決まってるでしょ!」
何だか意外な返答が来たよ?
「当たり前じゃん!わたしだってさー、本物の女の子を触りたいよ!でもこの学校に女なんか一人も居ないし!だからしょうがなく同級生の手の感触で我慢してるんだってば。そこは勘違いしないでほしいな。」
「女の替わりに男の感触を味わうの?普通に考えてきめーよ、お前。」
やばいついヤンキーに本音言っちゃった。でも意外と怒られない。
「冷静に考えるとそうだね。でも夕月って、わたしのうちの隣の女の子にちょっと似てるんだ。昔、お嫁さんにしたいって思ってた子にさ。だから可愛くてたまらないの。」
上橋はうっとりした顔で見つめてきて、オレはそれ以上余計なこと言えなくなった。
惚れた女にオレが似てると。まあそういうことならオレの手を女の替わりにするのも納得してもいいか。いやしかし荒い息でにやけつつよだれをハンカチで拭きながら男の手を触るのは異常だろ。偽物の女の手にそこまで真剣に興奮出来るのは脳に問題あるんじゃねーの?
コイツ可愛いけど怖いかも。ヤンキーの時点で怖いが他にも怖い要素ありまくりだ。
まあでもオレには優しいから別にいいか?とりあえず言いたいこと言っとこう。
「なあ、手をつなぐのはいいけどよ、変な触り方すんなよ。もぞもぞされるときめーから。」
「え、あ、うん、ごめんなさい……」
上橋はシュンとした。うん、ヤンキーだがオレに対しては牙を剥かんな。安全だ。
「でもそろそろ言っとくけど、言葉づかい治した方がいいんだからね。毎週言葉と仕草のテストがあって、女らしく出来てるか試されるの。合格しないと相当酷い罰を受けるよ。普段も先生の前で女らしくない言葉使うとお尻叩かれるのなんか当たり前だし、先輩に厳しくおしおきされることだってあるから。ちょっとずつでも変えていってね。」
え、アホかよ。そこまで本気でオカマになんの?確かに生徒も教師も、校長以外みんな女言葉だけど。
「オレは無理なんだが。そこまで自尊心棄てれねーから。」
「何言ってんの可愛いパンツはいてきてんでしょう?今さら恥とか無いってば。」
そうだった、姫っぽいパンツはいてスカートはいてた。
「それでも女のしゃべりはきちーよ。……何か、本気で優人って名前を捨てにいくみたいな気がするし。」
「ほんとに何言ってるの?あなたの名前は夕月。」
「いや、オレはそんなの認めない。名前を変える気はない。オレは夕月じゃない。」
上橋は一瞬、無言になった。それからオレの手を掴む手にぎゅうっと力を込め
「キレるよ?」
いきなり牙剥いてきたー!!!!!
「ごご、ごめなさ!」
動揺して自分の右足に左足が絡まって転びそうになった。だって上橋の顔、猛犬より怖い!!!美形だけどもろに悪魔!!!
「うふふふふっ!」
突然優しい顔に戻った。
「冗談だから怖がらないでよわたしが夕月に怒るわけないでしょー?ねっ、夕月?」
「ううう、うん、マジ、うん、マジ!」
うなずくことしか出来ないから何度でもうなずく。上橋がさっきの顔になったら怖いもんよ!
「女の子の言葉の練習もするよね?」
「え、う、あ、マジ、マジ、するけど、いや、マジで、超すんぜマジ!」
言いなりになっちまった。でもこうしてれば上橋優しいし。
「おりこうさんだねー。本当の名前なんて忘れた方がいいもん。早く受け入れた方が楽になれるから…………」
その時、上橋の笑顔が少し暗くなった感じがした。すぐに元に戻ったが。
「じゃ、可愛い言葉づかいで話しながらクラスに行こっ。そうだね、一人称はどうしようかな……名前にしようよ!自分のこと夕月って呼ぼ!可愛いよね!」
きつすぎるから………でもヤンキーには逆らえない。
「わ、わかった………」
「はあ?可愛い言い方しないと本気でキレるよ?」
「…………!!!」
心臓跳ねて絶命するかと思った。
「夕月より、ゆづにした方がもっと可愛いかな。はい、ゆづ、可愛いこと言ってみ?」
ええと、ええと、どうすんだ?“オレ”を“ゆづ”に変換して、あと適当に萌え萌えなことほざけばいいよね?
「うん、ゆづわかったぁ。上橋さんの言う通りにするよぉ。」
萌え言葉が思いつかなかったから声色で媚びてみた。結果はどうだ?
「可愛いー!」
何とかセーフ。ヤンキーマジギレ回避した。
「けどね。何でわたしのこと上橋さんて呼ぶの?ひめって呼んで。いい?」
「う、うん、ひめ……」
「おりこうさん。」
どんどん上橋、じゃなくてひめの奴が調子乗って怖くなってゆくよ。オレは必死に女言葉で会話するしかなかった。
もう恥も忘れてオカマしゃべりしまくってたらクラスに着いた。
「おはよー!みんな見てー!今日初登校の夕月が来たよー!」
ひめの後ろからキョドりつつ教室に入ると、めちゃくちゃ歓迎された。
「綺麗な子ね!」
「妹にしたーい!仲良くしてね!」
「うふふ、恥ずかしがって下向いてるわ。可愛い。」
かなり顔のいい女子中学生の外見をした奴が数十人周りに集まってくる。次々自己紹介してくるが必ずその時手を握ってくる。全員手が柔らかくて触り心地いい。こんなの下向いてるしかできねーから!顔が熱くなって恥ずくてトラウマになんだろうが気づけよバカ女的男どもがよ!
「純情な子なのね。みんな、あなたをからかったりするつもりはないのよ。早く慣れてうちとけてほしいな。」
何か優しい声が聞こえたと思ったら頭を撫でられた。手以外触るの禁止だろ!?何校則違反してんだと言ってやろうと顔を上げたら前にいたのは先生だった。
凄い天使系の愛情溢れてる顔で、ロリ系美少女な感じの大人だ。いや、あんま大人に見えないな。ちょっと年上くらいにしか見えん。
「先生も男か?」
一瞬で教室内に音がしなくなった。
やべえ、言葉づかい間違えた!
「……せ、先生もぉ、ゆづとおんなしでぇ、女装してる男の子なのぉ?」
先生は、手をオレの顔の横に近づけてきて、ほっぺたを軽く引っ張った。あんまり痛くないおしおきだ。
「先生はね、もう自分が男だなんて思っていないわ。体は男かもしれないけれど………心はどこからどこまで女の子よ。夕月も早くそうなってほしい。この学校は、そのための場所なの。みんなと一緒に、もっと綺麗に、もっと可愛くって頑張ってね。いつか、男であることを忘れる日まで。さ、授業を始めますよ。」
そうして始まった授業は、一限目から「可愛い振る舞い方」という小学校には絶対無かった教科。遊びかよ。
「スカートの裾をつまんでお辞儀」とか、「笑ったり驚いたりした時に両手で口元をおさえる」とか、お嬢っぽいことをやらされる。拒否したら尻叩きの刑になるようだから、渋々やったら「初々しくて可愛いわ」と高得点になるが嬉しくねーから。
「上目遣いでおめめを潤ませてみましょう」
とか言われたが、そんな簡単に目が潤むか!
…と思ったが他の全員、自由自在に涙を出せるらしく、高クオリティな上目遣いの媚びた仕草をやっていた。
見てたら勃起してしまった……………。
だいたいこの教室内、いい匂いが充満し過ぎだ。
もう机で股を隠すしかないから席から立ち上がれん。先生は先生でデカイ尻をくねらせて来てエロいしよ。胸は何もなくてエロくないけどな。当たり前か。いや、男の尻をエロいとかも無いけどな。エロくないはずなんだけどな……。
「夕月、元気無いね。疲れちゃったの?」
先生がオレを心配して肩を優しく撫でてくる。何かすげー癒される。
いや待て!この人もオレを触って勃起してないだろな?チェックしようとしたが机に隠れててわからん。この先生、マジで優しい人だから疑いたくねーな。でも怪しい。
先生が前に戻ってから夕月が寄ってきて小声で、
「教師を信用しない方がいいよ。」
って言ってきたし。まあ、ヤンキーの言うことだけどな。
頭の狂った授業が終わる。二限目は何だ、可愛い髪型の勉強とかか?
「次は数学です。夕月の教科書は持ってきてあげるからね。」
普通の勉強もすんのか……。ちゃんと学校ですよアピールか?
先生はスカートつまんでお辞儀して教室を出ていった。ほんとにやんのか。
先生が居なくなると急に賑やかになる。
「夕月、困ってたでしょ。自分が男なこと忘れるとかあり得ないよねー。」
「完全に女になるなんて無理だから。」
「先生がおかしいだけ。」
「みんな罰を受けないように可愛いふりしてるだけよ。」
何人も話しかけてくるが、意外に常識あること言う。安心させてくれた………。でも先生居なくても女言葉なんだなコイツら。
一人、変にニヤニヤしてる奴がいた。
「夕月さー、先生にみとれてなかった?」
何言いやがんだこの野郎。野郎の癖にほっぺに手を添えてんしよ。
周りの女装野郎もいきなり人をからかってくる。
「顔赤いよ夕月ー。先生綺麗だものねー。」
「ねえねえ、どういう人が好みなの?」
「この中で誰が好きー?」
「あら、うつむいちゃったぁ。ピュアな子ー。」
「こ、恋に興味あるのかしら?ね、ねえ、どうなの?」
何か真顔の奴とかいるし!可愛い顔がいっぱい近寄ってきて、もううつむくしかねーだろ本気でバカ女かよこのオカマどもがよー!
「みんな可愛いよね?だって日本中から集められた綺麗な男の子だもの。」
落ち着いた感じの奴が解説してきたが、この学校は一学年に一クラスずつしかなくて、全生徒が九十人だけなんだってよ。道理で下駄箱小さいわけだな。毎年新入生は全国から三十人、見た目いい奴が選りすぐられる。だから美形ばっかなわけか。そこらの普通の女よりエロ可愛いのだらけになるのも当然か。待てよ、じゃあオレも全国クラスのイケメン?いやニューハーフはイケメンじゃないだろうか?あんま嬉しくないな……。
しかし恐ろしいな、この学校にいたら男に興奮すんのが当たり前になりそうだ。教師にもそんなの居るし。今まさにオレを見てはあはあしてる奴いるし!
このままじゃ男相手に初恋が始まりそうだやべえ!
が、黙ってたら何か風向きが変わった。一人、こんなこと言う奴がいたのだ。
「けどさー、この学校ってすっごく可愛い子ばっかりで天国なのだけれどね、でも………おっぱいが無いよねー。」
すると他の奴もオレいじりをやめて同じこと言い出した。
「うん、みんなぺったんこでさみしー。」
「先生も全然ふくらみないんだもん。あー!揺れるおっぱい見たいよおー!」
「おっぱいー!ああん、おっぱいー!」
まるっきり思春期男子の集まりになった。言葉遣いはおかしいが。
でもみんな中身は結構普通なんだな。
「おっぱいはあるわ。みんな貧乳なだけよ。」
とか言ってるヤバイ奴いるが、そういう奴以外は警戒しなくてよさそうだ。
「ねえ、夕月だって巨乳好きでしょ?」
「え、おっぱいは何でも好きに決まってんし。」
つい素で答えちまったが、そしたらすごい反応来た。
「やだあ!夕月やらしー!!」
「ピュアなのにムッツリなんだあ!素敵!」
「ねー、おっぱいのこといっぱいおしゃべりしよーよー。」
結構オレ、人気者になったっぽい。好かれてる感ある。はあはあ野郎には好かれたくないんだが。
しかし何か不機嫌撒き散らしてるの一人いる。嫉妬か?
「どうして夕月は他の子とばっかり話してるの?わたしのお友達なのに!」
そこにいたのはヤンキーのひめだった。改めて見ると超絶可愛い。全国トップの三十人の中でも明らかに一番可愛い。でもこええ。鬼怖い。
「二人で話そ。行くよ。」
手をぐいぐい引っ張られた。だけじゃなく爪を食い込ませてくる。
「で、でも二限目始ま……」
「そんなのいいから。先生の言いなりになってちゃダメでしょ。行こっ。」
またしてもヤンキー発言かますひめに無理矢理廊下に連れ出されて、そのまま教室から遠くに引きずられて行った。
「あの二人どういう関係かしらあ?」
とかいう騒ぎ声が後ろから聞こえてくるがつくづくバカ女かあいつら!やっぱりお前ら中身も常識ねーよ!
廊下の端の階段の裏に連れ込まれたオレ、不機嫌なヤンキーに何されるか正直ビクついた。けど案外、ひめはおとなしい。
「どう?この学校。やってけそう?」
とか優しく聞いてくれる。
「んー、まあ、慣れないわね。でもどうしても無理って感じじゃないよ。」
女言葉も使いこなせてきたしな。気分いいことじゃねーけど。
「ゆづなら大丈夫だよ。すぐに純真女子中学にふさわしい可愛い子になれるよ。」
「ならないとお尻たたかれるからね。やだけどせいぜい可愛くなるわよ。」
本音出しちまったけど、別に怒られなかった。
「がんばってね。ま、そこは心配してないけど………一生の問題だから、早く慣れないとね。あ、聞いてないと思うけど、この学校に入ったら、二度と普通の男に戻ることは許されないから。」
「は?何言ってんの?!」
つい口調が戻っちまう。ひめの発言がありえなすぎて。
「わたしたちはね、どんな理由があっても学校をやめれない。卒業後の運命も決まってる。どうなると思う?」
「え?そんなの……高等部進学だべ、どうせ。あ、ごめん、こ、高等部にいくのよね、えへっ。」
「ううん、純真女子に高等部は無いよ。卒業したら………えっと……就職?決められたところに、無理矢理就職させられるの。仕事を選ぶ自由は無いんだ。」
「最悪だな!あ、ちょー最低ですぅ。仕事って、どんなことやらされるのぉ?」
「………言いづらいな。ゆづは純粋だから…………えと、例えばね、純真女子の先生だよ。先生達、みんなすごく若いでしょ?本来なら高校生の歳だから。担任の先生はまだ十五歳だし。」
だから異常に性欲強い奴いるのか。男子高校生ってことは、教師全員野獣か。
「他にはー?」
「………今は……秘密。また今度話すよ。とりあえずね、覚えておいて欲しいのは、先生を信用しちゃだめってこと。最近までわたしたちと同じだったとしても、今は校長の家来なんだから。」
「ねえ、本当にわたしら一生女の真似してないといけないの?わたし絶対嫌なんだけど。」
「うん、もう元に戻る方法は無いよ。だって日本政府に禁止されてるんだもん。校長はね、実はかなり権力者なんだ。司法省で二番か三番くらいに偉い官僚なの。宇宙人に地球征服された時に上手く気に入られて偉くなれたらしいんだけど。権力者がやってる学校だから、わたしたちは何も逆らえないよ。逆らったら警察も敵になるもん。」
「だけど、ひめ、校長に暴力ふるってたじゃない。あのオヤジ、間違えたおじさま、大したことないショボい奴だったし!」
「こら、言葉づかい。ま、いいか。あのね、わたしは校長に嫌われたくてああいうことしてるの。嫌われたら退学にされないかなって思って。でもダメなんだ。かえってお気に入りになってるみたい。卒業後が怖いなー。ゆづはわたしの真似しちゃだめだよ。」
「絶対真似しないけど。」
「そうそう、大事なことだけど、この学校ではなるべく目立たない方がいいよ。」
「なんで?」
「うん、えとね……下手に好かれない方がいい人も何人かいるから………特にゆづは可愛いし。」
ひめははっきり言わない。その上、話を変えてきた。
「ゆづはさー、女の子とつきあいたいー?」
「え?そんなの当たり前でしょー。」
「そうだよね、わたしもそう。本物の女の子とさ、仲良くなりたいよねー。」
そこでひめは後ろを向いた。
「でもあきらめるしかないから。ゆづも……早くあきらめないと、つらいよ。」
「そんなこと言ってもね。ゆづは、あきらめないよ?女とつきあって結婚するに決まってるし!絶対あきらめないからね!」
ひめは振り向いた。笑顔だけど、目は泣いてる感じだった。
「そう……それも大切なことかもね。クラスに戻ろ。授業には遅れてるけど、あの先生、謝ればお仕置きなんてしないから。」
何か元気ねーな。
「何だか元気無いね。」
「んー……?ちょっとね。女の子の話、してたら自分で落ち込んじゃった。わたしさー、さっき、家の隣の女の子と昔、結婚したいって思ってたって言ったじゃない?最近はそんな気持ち無くなっちゃったつもりでいたんだよね。でもさー……ここに来て、会えなくなってさ、もしかしたら二度と会えないかもって思ったら……今でも好きなんだって気づいちゃった…………。」
ひめのほっぺたを、光る涙が一滴だけ、流れ落ちた。ひめは両目をぐいぐい拭って、少し無理して笑う。
「あきらめられないんだ、わたし。ゆづと一緒だねっ。あはは、泣くなんておかしいよね。わたしは絶対学校やめて家に帰って、好きな子と結ばれるのにさ。……………本当にそう思ってるの、わたし。だからね、先生の言うこと聞くいい子にはなれないんだ。」
オレは普段、人の真面目な話とか邪魔したくてしょうがないんだが、今はそんな気分じゃなかった。ひめと同じぐらい泣きたくなってきたマジ。ヤバイシリアスだよ。女装したら心、綺麗になったんじゃね?
何か心通じ合ってるオレの手をひめは両手で握って目を見つめてきた。困るよキョドんから!
「ゆづもわたしと同じになってほしい。女の子と結婚したいんでしょ?」
それ、不良仲間になろうって話ですよね。いや、つらいんだけど。オレ、そこまで危険人物になりたくないよ本気で!こんな美少女、いや美少年か本気で性別忘れかけてたがともかくこんな激可愛い子の涙で非合法の世界に引っ張り込むとかヤバイ宗教みてーで怖いから!でもここで拒否するのつれー………断んなきゃやべーけど言い方思いつかねー……マジかよ………。
「いいよ、無理に返事しなくて。気にしなくていいから、ちょっと愚痴りたかっただけだよ。話は終わりっ。行くよ。」
ひめはオレを引っ張って歩き出した。声は明るいけどやっぱり元気無い。やっぱ本気で悩んでんな。いくら女に見えるっつってもこんだけ見た目良ければ告ったら大体うまくいくべ。それ考えるとこの学校に閉じ込められたのは可哀想だな……。
授業にちゃっかり途中で来たオレ達を、先生は叱ったが、そんなに厳しく怒られずに済んだ。何か不良のひめにビビってるっぽい。そんなことだからつけあがるんじゃねーの?まあ今回はそれでいいよ?
にしても中学の勉強ってマジ難しすぎだろ。数学超わかんねえ。三限目の地理も四限目の国語もやべー。この学校、ちょっと頭いい私立レベルらしいしな。頭おかしいくせに………。
六月に中間テストとかいうかなりきちーテストがあるらしいけどよ、それで点数悪いと先生全員から血が流れる級の体罰受けるらしい。デマだべ?
でも先生に言われたしな……。しかもそれ言う時あの人不自然にスカート持ち上げてテント張ってんの誤魔化した臭いしよ。それで両手ふさがっててよだれ出てるの拭えなくて自分でテンパってたしよ。マジか…………。これ真面目に勉強しないと死ぬな。この学校、暴力多すぎだろ。オレ勉強嫌いなんだけど。
四限終わったらやっと長い休み時間だ。給食が出た。結構ヤバイ。本気かよって思ったくらい綺麗なおしゃれ料理で高級感ハンパねー!食ってみたら有り得ない美味い。ただ食い方のマナーを先生にたくさん注意されんのがウザくてイライラする。言うことほんと細けーし。
「いっぺんにお口にたくさん入れちゃダメ。」
仕方なくちょっとずつ口に入れて高速でモグモグして次々食べてると、
「もっと少しずつ。小指の先くらいしかお口に入れないで。噛み方も乱暴にしてはいけないわ。ゆっくり、弱々しくね。」
うるせえ、こっちは腹減ってんだよ!
でも暴力学校だから先生怖いし。たかが一年生のヤンキーにビビっちゃうレベルの教師だけどさ、オレはヤンキーじゃないし。嫌々言うこと聞いていた。そうするとどんどん調子乗ってくる。
「噛む時にお口の近くに両手を添えてみたらどうかしら?夕月に似合ってて可愛いと思うわ。」
アホかマジ。でも他の生徒も「それいい、見たーい」とか煽ってくるから仕方なくそうした。てゆーか先生ずっとオレの前にいてマンツーマン状態じゃん。いじめかよ。
イラついたから指に付いたホワイトソースを目の前で舐めてやった。
「もう、いけない子。でも可愛いわ。」
誉めるのかよ!しかも頭撫でてくんし!頭撫でられるのは気持ちいいけどな……。
給食食べ終わったらえれー疲れた。しかもボリューム少なくて腹減る。
先生は給食終わると教室出てった。休み時間はまだある。ひめと遊ぼうと思ってたが、用があるとか言ってどっか行きやがった。ひめのせいで暇だな……。
何人かの奴が話しかけてきた。
「ねえ、ゆづちゃん。この学校の給食はどうだったかしら。お口に合った?」
「ああ、うま……とても美味しかったわ。でも足りないなぁ。」
「やっぱりー。ゆづちゃん元気だからー。給食は少食の子向けの量だもの。お腹ぺこぺこだったら可哀想って思ったの。よかったらおやつ、召し上がれ。その代わり、一緒に遊んでね。」
お菓子をくれた!マジありがてえ!ていうかお菓子持ってきていいのか。それともこいつらもヤンキーか?いや、おとなしそうだから校則でお菓子OKなんだな。
「ありがとう!」
ヤバイ、どれも高そうでめちゃくちゃうめー。
……でも小さくて腹の足しにならねー。けど食ったから言うこと聞かんとな。
「何して遊ぶの?」
「廊下で鬼ごっこしようよ!」
オレがこんな超可愛い子達と鬼ごっことか信じられなすぎて笑えるって一瞬思ったが、しょっちゅう忘れかけるけどこいつら男だった。そう考えると小学校と変わらねーな。
でも鬼ごっこのルールが違う。普通、鬼にタッチされたら鬼交代だが、校則あるからタッチは禁止。鬼は相手の手を掴まないといけない。手をポケットに入れるのはルール違犯。
それと、全力ダッシュは禁止。可愛い走り方をしないといけない。可愛く走ってれば先生に怒られないらしい。ほんと頭いってる学校だな。逆に先生に見つからなければ猛ダッシュしていい。ただ、先輩に怒られることもあるから上級生がいたら上品にしないと駄目らしい。でも優しい先輩だったら怒らないから大丈夫とか言うけど、どの先輩が優しいのかわかんねーしこいつら卑怯じゃねーか?
一番普通と違うルールは、鬼が二人いるってことだな。手しか触れないのは難易度高いからだろーな。鬼同士の連携で手を狙って来るわけか。
オレ含めて七人での鬼ごっこ。教室出てすぐのとこでジャンケンした結果、莉瑠、春音って奴らが鬼になった。鬼は十秒数えたら追いかけて来る。オレは開始すぐ思いきり逃げてやろうとしたが、一番トロそうな雛名って奴が一緒に逃げようと手をつないできてしかも走り方フラフラしてやがるし、マジ足に筋肉あんのかってレベルで、こんなんじゃすぐつかまんから!
と思ったけど鬼の二人も内股でお嬢様みたいな走り方で速くない。先生が見てるからだな。通りすがりの先生が、「がんばってー」とか言いながら見てきてんよ。だから鬼がゆっくりしか走れんがこっちも急げない。曲がり角の先で先生から見えなくなってからが勝負だな。こっちが最初に曲がる分、有利だべ。畜生、雛名がいなけりゃ楽勝なんだが。
角を曲がってというか曲がりかけのところで、どうせ先生もよく見てねーだろと決めつけてオレは雛名の腕を引っつかんでスピード上げた。
「あー!」
すぐ横にいた愛歌って細かそうな奴がいきなり叫んだ。
「う、腕組んでるー!二人とも、いけないんだあ!」
やべ、そうか、腕も触ったらアウトか。雛名の奴に怒られっか?オレのせいで校則違犯だしな。怒られたら逆ギレしてやんけど。
「いいんだもぉん、先生見てないもん。」
むしろ喜んでねーか?こいつもやべー。愛歌も露骨に羨ましそうだし。まあいいべ、気にしてらんねー、さっさと逃げてやる。……雛名の体が当たって気持ちいいな。何か細くて柔らかいんだよな。やべえ、逃げることに集中しないと勃ちそうだ。男同士腕組んで勃つとかマジ死ぬ。絶対阻止しねーとやべーよ!
………雛名の股間がテント張ってないか見るのは怖くて出来ねー。
オレは足遅くねーしこんな学校の奴らに負けっとか有り得ねーけど雛名がお荷物過ぎてすぐ鬼に追いつかれた。
「二人とも立ち止まらないと先生呼んじゃうよー!」
マジ卑怯な駆け引きしやがる春音の奴!でもおかげで雛名の手を振り払えた。こっからは余裕で逃げれんな。雛名はあっさり莉瑠に手を掴まれてた。
鬼交代は二人捕まったらってルールになってる。だから雛名はまだ鬼にならない。もう一人捕まるまでボーッとしてるしかない。暇でつまんねーはずだがコイツは楽しそうだ。
「挟み撃ちしなよー。壁に追い詰めればいいんだよー。」
さっきまで一緒に逃げてた仲間のオレに迫る、鬼の応援してやがんし!なんなら逃げ道塞ぐように立ってんし!
先に捕まえられたからオレのこと恨んでんのか?陰湿な野郎だな。いや、絶対何も考えてねーな………脳がトロいから適当に思いつきで動いてんだな。
「くすくすくす、もう行き止まりだよ、ゆづちゃん。」
春音が間近に来る。莉瑠も可愛いけど春音の方がオレの好みの顔なんだよな。美少女に壁ドンされるみてーで焦る。まさかオレ、勃ってねーよな?テンパり過ぎて自分が勃起してるかしてないかわかんねーし下見て確かめる余裕なんてねー。ピンチ過ぎだろ。
でも身体能力で春音と莉瑠に負けるわけない。隙を見て横に跳べば余裕だべ。
素早く囲みを抜けた!直後に莉瑠の奴が、後ろから思いきりオレのスカートをめくり上げやがった!
パンツに思きし風当たった。ヤバイとてつもねー恥ずかしい!
「わあ!可愛い!」
「真っ白で清純!ピュアなゆづちゃんによく似合うわ!」
おかげで足が止まっちまって逃げれなかった。卑怯過ぎる!
「こ、これはやっちゃダメでしょ!」
「えー?体には触ってないよー?」
「スカートめくりは校則違犯にならないの!?」
「先生も先輩も見てないもーん。」
やりたい放題だなコイツら。ここはおとなしく捕まっといた方がいいか?マジ悔しいけどよ。抵抗してたら何してくるかわかんねーし。春音の奴スカートの前、両手で抑えてんし!
あきらめて降参しようとする一瞬前、知らない声が響いた。
「あら、しっかり見てたわよ。」
声からして凄い綺麗なおねーさんをイメージしてつい喜んで振り返ったら、想像したよりはるかに美形の先輩がいた。背が高いから先輩で間違いないだろ。多分、三年ぽいな。
綺麗な女子の先輩に声かけられた!と、一瞬おもってすぐやっぱ男だったと気づいてがっかり。何度目だこれよォ。これから毎日がっかりさせんのかこの学校、ふざけんな。
それにこの先輩、美形だけどよく見るとタチ悪そうな顔だし。めちゃくちゃ偉そうに見下してきてんし陰険そうに笑ってんし。
「はい?何の用ですぅえ?!!」
思わず声裏返ったオレ。先輩、脇にオレと同じくらいの背丈の、一年っぽいかなり可愛い奴を、抱きかかえてんけど!完全、腰に手ーまわしてんけど!下手すると触ってるとこ、尻だぞ!校則踏みにじりすぎだろ!間違いようの無いヤンキーだ!
しかも一年、半泣きでビビりまくってるし、無理矢理捕まえられてんじゃん!いつ見つかるかわかんない廊下でよくやるな!先輩、恐れ知らなすぎだろ。
……こっちにも平気でスカートめくりするバカいんけど。
「あまりにもはしたないふるまいだったわね。見過ごすわけにいかないわ。」
先輩、説教はじめようとしてんけど、その前にセクハラどうにかしろよ。この人一年の股間に手を伸ばして撫ではじめたけど!
「はふ!ぁ……ふあ!……ん……んんっ……」
半泣き声で喘がせてるし!……ヤバイ、オレも勃っちまった。
「先生に報告しなくてはいけないわね。あまりにも淑女にふさわしくない行為をしていたもの、あなたたち。」
いやそれ自爆だろ。あんたに脅されても怖くないけど。むしろ笑いこらえんのがつれー。
しかし何で春音たちはこんなビビってんの?チクられても先輩道連れに出来んし、大したこと無くねー?しょーがねー、オレが頑張んしかねーか。
「あのさー、いえ、あの、一言こっちも言わせて下さいませ。確かに、莉瑠は結構お下品なことをしちゃいました。でも、あなたの方がしてはいけないことをしてます。先生に告げ口されると困るのはあなたの方ですわよ!」
先輩はめちゃくちゃニヤニヤした。こいつ本気のいじめっ子って気がした。
「ふふふふふ、まるで自分には罪が無いような言い草だけれど、今、どんなに深刻な事態なのかわかっていないようね。一年生でしょう?まだ、校則をよく知らないのね。スカートをめくられるなんて、めくった子と同じだけの罪よ。そんなことをさせてしまうくらい誘惑していたということですもの。パンツもとても可愛くていやらしかったわ。早くエッチなことがしたいんでしょう?けれど、淫乱な自分を出せないから、お友だちに罪を犯させて自分は被害者のふりをして、ちゃっかり気持ちよくなりたかったのね?ずるい子。でも、初々しい卑怯さがとっても可愛い……あら、わたしったらみっともない、すすってもすすってもよだれがとまらないの……じゅるぅぅぅ……」
何を言ってんだろうこのバかは……病気だろうな。でもパンツのこと言われて猛烈に恥ずかしーよ!いや気後れしてる場合じゃねー、思きり言い返してへこまさねーとコイツ絶対ヤバイ。
どう暴言ぶつけるか、少し考えたが何も言う前に先輩からさらに爆弾落とされた。
「経験、させてあげるわ。わたしのおち〇ち〇を挿入てあげる。ついてきなさい。」
とんでもなさ過ぎて何言ってんのかマジで一瞬理解出来ないこと言って、先輩はオレの腕を掴もうとした。
さすがにキレた。いやほんとはビビりまくってたが、無理にでもキレにいかないといけない場面だろ。先輩の手を全力ではたいて弾く。かなり痛かっただろ。
「はあ?きめーんだホモ野郎!先公にマジ言いつけんぞ殺されてーかよデブがよー!」
怯みまくってるから言うこと適当でしかねーけど、結構マジの怒り籠めたからオカマ学校の奴ならビビって弱気になるべ。
でも先輩、ニヤニヤが崩れねえよ、畜生。
横で春音が小声で言ってくる。
「だめだよ、逆らっちゃ。こういう先輩は先生を味方につけてるもん。言い返しても、逃げても無駄だよ。」
いやだめじゃねーの、そしたらオレ肛門掘られんだけど。
「オレじゃなくてゆづ、嫌だよ、男にレイプされっとか恥過ぎるし!」
「謝って許していただくしかないよ!まだ一年生で、大人の秘め事をするには体も心も準備が出来ていないんですって、気持ちをこめてご説明差し上げれば、そうすれば………」
「だぁーめっ!くすくすくすくすくす!」
先輩が超怖い声で楽しそうに言ったセリフで、春音はキョドって途中で黙った。
「絶対、ぜーったいに見逃してあーげないっ。だってぇ………ほらぁ、もう、あなたのお股の中の感触を期待しちゃってるんだものぉ……ひゅふふっ、きゅふふふふふっ!」
先輩は、スカートの盛り上がりを握りしめた。この人のも相当でけえよ!?マジでケツの穴やぶけるぞこれ!
先輩に肩抱かれてる一年ぽい奴が露骨にガタガタ震えまくりだした。そうか、コイツも被害者だ。このままじゃコイツこそ危ねー、男に強姦されることになんだよ。
「いや、もういやなの、お腹の中、ずんずんってされて、苦しくて頭おかしくなって天国に行っちゃうの怖くていやなのぉ!」
あ、コイツもう救えねーのか………。
「くすくすぎゅふふっ!!あなたは少しもてあそぶと、すぐ劣情に抗えなくなる不様な体が可愛くて大好きよ。素敵ないかがわしいパンツのあなたは、わたしのちん〇んを味わっても淑女でいられるかしらね……けなげに清純な心にすがりついてほしいわぁ……引きずり落とし甲斐があるもの……。」
「キモすぎる……シャブ中かよマジで……。」
どうすんべマジ……一発蹴りでも入れるか?オレと較べるとだいぶデカイ上級生だけど、こんなオカマ学校にずっといた人だし、普通に考えんと負ける気がしねー。
………でもなー、この人なんか………実は強いんじゃねーの?そんなオーラねえ?ただ雰囲気怖いだけのチョロ弱ホモだと思うけどよ、なんか萎縮して動けねー。負ける気しかしねー……………。
まあ、ケンカとかマジの奴はやったことねーしな………でも、かといって逃げるのも……………春音達が襲われるかもしんねーし。
やっぱりやるしかねーべ……弁慶の泣き所でも蹴ってやったら痛くて転がんだろ。そこを皆でボコれば、先輩に犯られてる一年含めれば一対五。なんとかなんべ。
オレはなるべく攻撃する気配出さないように先輩に近づこうとした。そしたらいきなり後ろから両肩掴まれた。
「もう言うこと聞くしかないのですよ。この子はね、今日一日、好きな子を選んでセックスする権利を与えられていますわ。君が従わないならわたくしが従わせますわ。」
後ろに朝、校門のとこで出くわした変態教師が居たー!!!!
マジ死ぬかと思うほどビビった。
「離してよ!」
変態の手を振り払った。そしたら次の瞬間、ピシャァン!って音が響いて尻に激痛が来た。先生の手に銀色の鞭がある。この野郎、容赦なく鞭で叩きやがった。怖すぎだこの教師!
「反抗なんて無駄ですのよ、それよりもお楽しみになったらどうかしら?素直になれば、優しく導いてもらえましてよ。ウフフフフ……いけない、よだれでハンカチがびしょ濡れになってしまいましてよ……。」
鞭持った先生と、激怖え先輩に挟まれたら、実際反抗無意味。ええ?!マジでオレ、ホモに犯られんの!?!超本気死にてー!誰か殺しに来てくれていーよマジ!!
てーか何でオレのアレはギンギン勃起してやがんだぶっ飛ばすぞ!自分の体さえ味方してくんない…………。
春音、莉瑠、雛名は助けてくれるほどの力、無いだろ。チラ見したら三人とも涙だらだら垂らしてへたってる。雛名なんか一人で過呼吸なってるし。今、追いつめられてんのお前じゃなくてオレだけど。
先輩が一歩、近づいて来た。
「さ………保健室、行きましょ……。」
連れていかれる……いやいや無理!!!マジで無理だから!!!こんなの人生終わる!!!今連れていかれたらオレ、ぜってー自殺することになんよ!だって無理だろ、いくらこの先輩が美形でも……男だし……!でも、もうこれ………終わりだ………
下を向くオレ。
その時いきなり、ドサッと音がして、「ぎゃん!」と悲鳴がした。顔を上げると、先輩が床に転んでた。脚に竹箒が挟まってる。膝打ったみたくて血が出てて、痛がってテンパってる。倒れる時に手を離したらしくて、一年生は無事に突っ立ってる。
「だから目立つなって言ったじゃん。」
機嫌悪そーな態度でそこに居たのは、マジの極悪ヤンキー、ひめ!背後から先輩の脚に箒の柄を突っ込んですっ転ばしたらしい。上級生に向かって遠慮ねーなー…………まあ校長にも最悪の暴力振るう悪魔だしな。
ひめは先輩の脚の間から竹箒を引っこ抜くと、先生に飛びかかり、柄の先で股間を光速で突いた。先生がくの字になるほどのエグい攻撃。
「う……ああああ………」
命が心配になるぐらいに悶絶して倒れる先生。タマ逝っちゃってんじゃねーの?大丈夫か?悶える声が可愛くてヤバかったけど、ひめの暴れぷりに引き過ぎてて勃たない。
「みんな、散り散りに逃げて!」
ひめの声、可愛くてカッコいい!すげーヒロインボイス!こんなドヤバいヤンキーじゃなかったら惚れてた。
春音達はひめにお礼を言って逃げてく。先輩に捕まってた一年も逃げた。皆、泣きながらで足遅いけど、とりあえず安心だな。
「待ちなさいよ……わたしの〇んちんおっきくした責任取りなさいよね……!」
先輩が血ー出てる膝を気にせず立ち上がった。思ったより根性あるじゃん、さすが三年男子!……頭はおかしいが。お前が勝手に勃起しただけだろ……。
「うるさいわね!」
ひめが叫ぶ。先輩に向かって、言うことも生意気なひめ。先輩の腹を箒で猛烈に突く。うめいてまた倒れる先輩。ほんと少しルールってもの考えようよヤンキーよー………。
「逃げるよ。来て。」
ひめに手を握られた。当たり前だが逆らえない。先輩よりひめのが怖いし。
二人で走った。ひめはもう一つの手に持った竹箒をいつまでも捨てなかった。逃げるのに邪魔なのに。武器大事にするんだなヤンキー。人も大事にすること覚えろよ。………オレのことは大事にしてくれてる気もするけど。
ひめに連れて来られたのは中庭の、何か倉庫っぽいのの裏。
「ここなら誰にも見つからないよ。」
コンクリートの段差に二人で座って、息を整える。
外国っぽい鐘の音が聞こえる。この学校では普通の学校のチャイムじゃなくて、時計塔に付いてる本物の鐘が使われてる。
休み時間終わりじゃん!また授業サボっちまった……。
「ゆづ、暴力振るわれたりしてないよね?」
「だ、大丈夫……。」
すげー心配そうな顔してくれてんのは正直嬉しいんだけど、コイツ顔は美少女だし?でも極悪ヤンキーに言われるとギャグとしか思えない。
「何で笑いそうなの?」
やべえ、ちょっとキレ気味だ。ヤンキーの特殊スキルで心を読んだのかもしれん。コイツなら有り得る。
「いや、ううん、別に、ね……安心したらさ、何だか笑っちゃって……。」
「そっか。」
ひめも笑った。超優しい顔で見てくるから恥ずかしくなる。とか思いそうな時にいきなりまた半ギレ顔に戻って、心臓口から抜けそうなくらいビビった。
「だから目立っちゃだめって言ったでしょ!」
「え、別に……」
「目立つことするからああいう危険な人に目をつけられるんでしょう?!」
「でも……」
廊下で追っかけっこしてたのは春音達にさそわれたからだし、スカートめくりやがったのは莉瑠だし。何もオレのせいじゃないじゃん。
思った通りに言ったが、ひめは認めてくれない。
「わたしが助けなかったらレイプされてたんだよ!それでもいいの!?」
「よくはないよ、当たり前でしょ!」
「だったら本当に気をつけてよ!さっきの人、多分、エッチなことする許可をもらってるんだよ。学校があの人の味方なの。今日一日はね。」
「確かにそんなこと言ってたわ。それ、すごく疑問なんだけれど。」
生徒同士が手以外触りあうだけで校則違反とか言っちゃう厳しい学校なのに、エロいことする許可が出るってどういうことだよ。しかも中学校で!
オレの考えを聞いて、ひめは軽くため息をついた。息が、少し泣きそうな感じになってた。こいつよくこういうため息するな。
「この学校はそういう学校なんだよ……仕方ないから、全部話すね。ゆづ……今日はかくれてればレイプされないけどさ……でも今のままなら必ず男に犯されることになるよ。」
「あんなヤバイ先輩が他にも居るってことね?」
「ううん、危ない人は居るんだけど、そうじゃないの。生徒全員が、卒業したら犯されるんだ。」
「え、誰に?!」
「校長。」
「はああああ!?!!」
これは素が出ちゃうでしょ!!あのオッサンかよ!!この学校、一人のオヤジのハーレムかよ!!!
「そんなことあるマジ?!」
「校長の権力、すごいから。宇宙人に気に入られてさ、偉くなったら自分の趣味の為にこの学校作って、好き放題だよ。卒業生は校長に気に入られたら毎日のようにレイプされて、そうじゃなかったら世界中の変質者に売られるの。どっちにしても男に犯される生活していくことになるね。女と結婚なんて無理だよ。男のお嫁さんにならなれるかもしれないけれど。」
「いや、でも、ほんとにそんな……中学卒業したばっかだと十五歳でしょ?そんなの許される?」
「だから卒業するまでは校長も手を出してこないの。昔の法律ならね、未成年は保護されてたけど、人類が宇宙人に負けてからは変わったんだよ。校長みたいな変態が変えたの。中学校卒業したら子供扱いされない。犯してもいいんだよ。」
ヤバイな、これマジ話だ。
「それにね、生徒の方から望まれたなら、セックスしても無罪。まあ、誰も校長みたいな不細工なおじさんとそんなことしたくないけどさ。……でも、ご褒美があるから。校長とセックスしたら、その日一日、好きな子を犯す権利をもらえるの。」
「……そうか、じゃあ、あの先輩は。」
「校長に身を捧げたんだね。きっと、つらい思いしたよ。そこまでしても、あのおとなしそうな子のことが欲しかったんだろうね。別に、同情なんてしないけどさ。」
ショックでかい話過ぎて何も言えねー…………。
「卒業したら毎日されるしね。先生たちなんて、本当にそんな毎日だし。でもあの人達はわたし達と違うけれど。この学校の先生に選ばれるのは、卒業生の中でも特に校長のお気に入りの子。そしてその中でも、校長を愛して言いなりになってる人。」
「そんな人もいるんだ………確かにオ……ゆづ達とは違うね。理解出来ないよ。でも、その人達は幸せだね……。」
「幸せ?本気?!皆、最初は校長を愛したりなんてしない!おぞましい体に抱かれて、気が狂いそうになって、恨むだけだよ!でも何度も何度もそれがくりかえされるとね、弱い人は本当に気が狂っちゃうんだ………校長を愛してると錯覚させられる。先生達は、卒業生の中でも一番可哀想な人達だよ!」
えぐすぎる。あの変態教師も、担任の優しい先生も、そんなひでー拷問で狂わされたのかよ…………………何も言えねー…………。
「クラスの先生さ、去年は優しい三年生だった。今でも優しいけど……校長の悪口、言わなくなったんだ。もう、わたしたちの仲間じゃないんだ………校長の物になっちゃったんだ。」
「そういうもんなの……?レイプされて頭逝っちゃってもさー……オレじゃなくてゆづだったら絶対あんな奴の手駒になんかならないよ?」
「なるよ。絶対に。」
ひめの声が冷たくてビックリした。オレの意見、完全シャットダウンされて思わずキョドって黙っちまった。場が沈黙。ひめの奴、人の発言斬り捨てといて、自分は続き言わねんだもんよ。ぜってー何も考えないで適当にこっちの言うこと否定したから、会話をどう続けたらいいかわかんなくてテンパってんだよ。
とか思ってたらひめが半泣きになった。そのまま叫び気味に言った。
「先輩達、みんな、最後にはオヤジ達に犯されるの喜ぶようになってた!体は穢されても心は支配されないって言ってたのに!みんな、みんな……犯されたくて、校長の下半身にすがりつくようになるんだ……幸せそうな顔してさ。ゆづだってそうなるよ!わたしだって。だってね………そこまで心が壊れちゃうまで、校長に犯され続けるんだから…………。」
ひめは泣きながら本気で怒ってた。オレも涙が出てきた。卒業後の未来が怖くて泣くんじゃねー。
ひめと一緒に怒ってんから涙が出るんだ。
ひめは涙を指で拭いながら、オレの涙も拭った。
「……わたし、絶対に嫌だ。絶対………」
「そんなの、ゆづだって!」
ひめはオレの隣の超近くに来て、両手を握った。
「わたし、校長の奴隷にならない方法を知ってるんだ。ゆづ、協力してくれる?」
今のひめの眼、オレの人生で見た物の中で一番綺麗じゃねーか?気付いたけど、至近距離でひめと見つめあってんのに、恥ずかしくなってねーじゃんオレ。今のオレ、それだけヤバイシリアスなんだな。ひめに言われたことにも真剣に答えたい。
「うん………当たり前よ。どんな方法か話して。」
「校長を殺すの。」
「マジ言ってんのアホ!?!」
やっぱこいつ綺麗なの見た目だけじゃん、中身はサイコパスのやべー奴じゃん。
いやでも待って?オレらの境遇考えれば、殺人も異常とは言い切れないんじゃね?ある意味この学校出たら殺されるよりきつい人生待ってるわけだし。しかもオレら何も悪いことしてねーのに!
「ゆづは……反対するの?校長を死なせて、この学校を無くすこと。」
「あ、ううん、ごめんなさい、びっくりしちゃっただけよ。けれど、詳しい話を聞きたいな。どうしてそこまでヤバ……そんなこと思いついたの?」
ひめは涙を何度も拭いながら、凄くマジにオレの目を見て語った。
「純真女子中学校は、校長の権力だけで成り立ってる学校だから。校長さえ居なくなっちゃえば、無くなる学校なんだよ。だったらどうやって居なくなってもらえばいいの?校長にとって純真女子中は人生で多分、一番か二番目くらいに大事なんだよ?日本でも上の方の大権力者のくせに、毎日学校にいるしね。大切な純真女子中を手放して遠くに行くなんて有り得ないよ!校長を権力者の座から引っ張り落とすことだって私達には出来ないし。現実に出来る方法は、殺すことしか無いんだ。
……わたしと同じ考えの仲間もいて、秘密の計画を進めてた。さっきも会議があったんだ。でも、会議でね……計画中止が決定しちゃった。皆、殺人はどんな理由があってもやってはいけないことですわ、なんて言ってね。怖いんだね、失敗した時にどんな復讐されるかわかんないから。とりあえずは校長に何度も何度も犯されるよね?きっと、残酷なやり方で。怖いよね。……でも、今はそれを避けても……何度か春が来たら、どうせ犯される。あの子達だって。
だったら、わたし一人でやろうって思ったの。わたしの勇気がなくなる前に。計画が校長や教師達に知られる前に。
……今夜、校長を殺すんだ。」
思ったより遥かにひめは本気だった。それに、自分だけじゃない、他の奴の為も考えてる。自分を裏切った日和見野郎どものことも。
「ゆづ………わたしと一緒に、殺人犯になってくれる…………?」
「うん!任せて!!」

オレは夜まで人目につかないように隠れていた。ひめは教室に戻った。オレが行方不明のままだと教師達に探し回られてしまうから、適当に言い訳しといてくれるらしい。
「わたしだけなら、授業中にいないのなんてしょっちゅうだし、あんまり気にされないんだけどね。」
とかヤバイこと言ってたけど、あいつとことんヤンキー過ぎてもうインパクト無くなってきた。てゆーか本気で人を殺そうとしてる奴だもんな。
いや、間違えた。殺人やろうとしてんのはオレもだった。ひめだけじゃねーよな。
理由、ちゃんとあるし。だって人の人生台無しにする最悪の変質者だべ?ぶっ殺した方がよくねえ?でも殺人犯になんのダリーな………警察に捕まんねーように逃げんの?戦って勝てねーかな?逃げんのマジたりーよ。
ひめが夕方、一度来て、パンとかおやつとか置いていった。学校内に色んな店があって、一通りの買い物は町に行かないでも済ませれるらしくて、結構美味い奴を奢ってくれた。
クラスが学年に一個しかない学校のくせに、普通の学校並みに無駄に大きな校舎だと思ってたけど、店なんかあんのか。何か意外に楽しい学校じゃん?
「夜に備えてちゃんと食べるんだよ。いざっていう時におなかすいて動けないなんて、許さないからね。」
いや、食欲無くなったんだけど。ひめはめちゃくちゃ優しい笑顔で言ってくんだけど、気持ちが余計追い詰められんだけど。
「じゃ、わたしは準備を進めてくるから。いい?しっかり食べること。体力使うからね。途中でへこたれないようにしておいてね。」
「それって……校長を殺して終わりじゃないから?逃げる方が大変ってこと?」
「……うん。当たり前だけれど、校長を殺すのはきっと大変だよ。計画はじっくり考えてあるけれど………簡単にすむはずはないよね。何より、心穏やかでいられるわけなんてない!校長が死んだ時には、わたしたち二人とも、倒れそうなくらいへとへとになっているでしょうね。でも、休んではいられないの。すぐに、出来るかぎり遠くへ逃げなくちゃいけない。どこまで逃げれば一息つけるか、その時にならないとわからないんだ。少しでも体力をつけておかないと、後悔することになる。」
「ねえ、正直に話して。何を言われても、ひめと一緒に行くって気持ちは変わらないから。逃げること、出来るの?」
ひめは、オレの目をじっと見て、うなずいた。
「大丈夫。逃げられるよ。」
こいつ、本気で言ってんなって思った。
「わたしさ、お金いっぱい貯めてるんだ。ゆづと二人で何年間でも暮らせるくらいね。日本から出て、遠い国に行って、女の子の格好をやめて、こっそりと暮らそう。そうしたらもう、見つからないよ。」
「ほんとの話?何でそんなにお金持ってるの?」
「……よく、学校を見学に来る金持ちの人達がいるんだ。純真女子中の卒業生を買う人達。上手くそういう人のご機嫌取るとね、お小遣い貰えるの。頭がおかしくなるくらいの大金くれる人が、何人も居るんだよ。わたし、人気者だからさ。あと、結構ずるい子なの。」
大人を騙して貢がせてんのか。ひめならめちゃくちゃ儲けるだろ、マジで。多分学校で一番可愛いし。てことは全国ナンバーワン美少年。で、中身ヤンキー。遠慮無く他人から金むしり取る。そりゃ財産築くだろ。
「でも、外国なんて行けるの?パスポートとかゆーのいらないの?ゆづ、持ってないよ?」
「あはは……今はパスポートなんて、使われてないよ。宇宙人に征服されて、地球から独立国は無くなったから、世界中どこにでも自由に行けるんだよ。住むのは自由じゃないんだけどね。こっそりかくまってくれる、親切な人を見つけよう?可愛い男の子が大好きで、でもいやらしいことはしない安全な人。安心して、わたしそういう人見つけるの得意なの。気にいられるのはもっと得意だよ。」
ああ、マジそうだな。人を利用すんのも得意だよな。
「わかった。覚悟決めてゆづについてくよ。絶対、逃げ切ってやろうね!」
「うん……ゆづを不幸には絶対にしないから。二人で幸せになろうね。約束だよ。じゃあ、わたし行くから。また、夜ね。」
ひめは、校長を殺す準備の為にどこかに行った。超普通な感じに歩いてったけど、一瞬後には地面に手ーついて大泣きしそうに見える後ろ姿だった。
気付いちまった。あいつ、この学校から解放されても、近所の家の女と結婚すんの無理じゃん。殺人犯だってことかくして、外国で一生暮らすんだしよ。
何かなー………オレが人のことで……何か、泣きたくなるとか………わけわかんねー、笑えんべマジ。意味わかんねーけど誰かに相談とかも出来ねーし。なんなんだマジ。人に話してーな………。どうしたらひめが幸せなれるかとか、人に聞いてみてー…………。
考えてたら塀の後ろで寝ちまってた!誰かに揺さぶられて起こされたら、真上に満月見えてめちゃくちゃキョドった。
「ゆづ、目、覚めた?」
「ああ!ひめ?!ビビったぁ……もう、時間?」
「もう、とっても可愛い顔して寝てるんだもん、起こすの悪い気がしちゃったよ。こんな所で寝て、風邪ひいてない?」
「大丈夫、心配いらないわ。」
寝起きでも女言葉で喋るの忘れてねえ、オレすごくね?
「あ、そうだ、もう女装やめんだから普通に喋っていいんだよな?」
「まだ、ダメ。安全な所まで逃げて、男の服に着替えるまでは、ゆづはゆづのままでいて。……乱暴な言葉遣いのゆづも可愛いけどね。」
ひめの笑顔は真っ暗な中で見えなかったが、笑う声だけでも本気で姫っぽいキラキラ感がありまくった。
ほんとにコイツがこれから殺人なんかすんのかな?
「わたしがあげたの、ちゃんと食べた?」
「うん。ありがと、すごく美味しかったよ。」
「そう?よかった。じゃあ、行こ。一生で一番大切な……戦いに。何もかもを変えに行くんだよ。」
ひめに手を引かれて立つ。ひめは肩にカバンかけてて、パンとかの袋のゴミをしまってた。すげえ、上品じゃん。こんな時なのに!お嬢様だな!……マジでお嬢様学校の女よりよっぽどお嬢じゃねえ?まだ、今は。
二人で手をつないで、ひめが校長を呼び出した場所まで、歩く。夜の校庭には誰も居ない。けど、校舎の窓は結構、灯りついてるとこが多くて、先生はたくさん居るっぽい。やべえ、思ったより大人数に追いかけられるべ、コレ。
細くて小さいひめなんか、すぐつかまんじゃねーの?いや、コイツ脚力あるか。凶暴だしな。
………でも、緊張してんな。手が軽く汗ばんでんよ。
どこまで行くんだと思ってたら、校舎の端から中に入った。ずっと中庭とか歩いてたってのに結局校舎の中かよ。
「こっちの方の廊下は、夜は誰も来ないからね、夕方にドアの鍵開けておいたら戸締まりされないんだよ。」
「へえ……さすがヤンキ…ひ、ひめって色んなこと知ってるのねすごーい!」
実際マジすげーな、この辺の廊下は電気ついてなくて真っ暗だし、確かに誰も来ねーよ。ヤンキーすげーな、オレもいつかヤンキーなんべ。いや、やべーな、海外でヤンキーになることになんし、めちゃくちゃ危険な目にあうべ。殺されそうだからやめといた方がいいか。
それにしてもよー、外靴で平気で廊下歩いてんけどひめ。すぐ逃げるからだってことはわかってんけどよー……何で抵抗感じねーんだコイツ、女のくせに。…………………女じゃねーか。また忘れてた。
まあ、オレも気にしないで靴で廊下歩くけど。上履きじゃないと何か歩きづれーな。でも何かテンション上がんだけど!
「ゆづ、足音大きいよ。気をつけなさい。」
何かヒソヒソひめが注意してくる。
「……ごめんね、誰かに見つからないようにしないといけないものね。」
「もう、違うよ。ううん、それもあるけどさ、あんまりバタバタ歩くのは上品じゃなくて可愛くないの!」
……は?お前、まともな男に戻る気あんの?
超納得いかねーけどヤンキーひめが一番怖いのがこーゆー時だから、一応言うこと聞いといてやんけど。
「ゆづ、この教室に入るよ。」
ひめがドア開けた真っ暗な教室に校長がいんのかと思って、超逃げ出しそうになっちまったけど、誰もいねーじゃん。
電気ついてなくても、窓から校庭のデカい照明の光が入ってきてて、よく見える。
「ゆづ、座って。」
ひめが前の机を指差したから、そこに座った。
「もー、ゆづったら……どうして椅子じゃなくって机に座るの?ほっんとうにやんちゃな子なんだからぁ……」
そんなに笑うほど楽しいことかよ?
「ひめがここ指差すから、ここに座ってって意味だと思ったの。だいたい、ひめの方がよっぽどやんちゃだからね。ゆづは授業サボったりしないもん。」
「えっ、そうなんだ。でも、わたしはゆづの方が元気で暴れん坊だと思うなあ。」
自覚無さすぎじゃねーの、この猛獣。
「だけれどね、ゆづのそういうところが、一緒にいて安心させてくれるんだ。……校長を殺す作戦、説明するね。」
自分は立ったままで、ひめは考えてた計画を打ち明けてきた。
「こっちの方の、夜は人が来ない廊下にね、第三保健室って所があるの。そこに、校長を呼び出したんだ。………エッチさせてあげるって言ってね。」
「やばッ!!さすがにそれヤバい!!!」
「何動揺してんの?嘘言ったに決まってるでしょ。興奮しちゃったぁ?」
ひめはしゃがみこんでオレの股間ガン見してきやがったが、別に勃ってねーし。ただビビっただけだし。コイツなら援交とか有り得そうだからな。
「う、ううん、校長に、きょ、脅迫?とかされたのかと思って……心配したの……!」
適当に本心誤魔化した。考えたことバレたらマジ殺されっし。
「大丈夫、そんなこと無いよ。でも、そんな風に追い詰められてた方が良かったかも。今まで散々校長に逆らってきたのに、急に態度変えるんだから、疑われないように言い訳するのがちょっと大変だったしね。」
それほんとそーだべ!あんな暴行してた奴がいきなり誘ってくるとか、信用出来るわけねー。絶対警戒すんよ!
「そんなのどうやって誤魔化したわけ?」
「ほらわたしって、思春期の年頃だからさ、最近、体が疼くようになって早くセックスしたくてたまらないの、経験させてって言ったの。校長、簡単に引っ掛かったよ。」
「やば………しょうもない……本当に校長、それ信じたの?」
「だーいじょうぶ!キスもしてあげたから完全に騙されてるよ。」
こいつ頭、沸いてるよ………。
「あっ、焼きもち焼いてる?キスって言っても、ほっぺたにしかしてないよ。」
「そんなこと聞いてないけど……とりあえず、校長は保健室に来るわけね。でさ……」
「どうやって殺すか?」
「……うん。」
「これ、見て。」
ひめは肩のカバンを机に置いて、開けた。取り出したのは………デカいナイフ!!!!
革のカバーが取られると、窓からの光が反射してめちゃくちゃギラギラして怖え!!!
「すごくよく切れるんだよ。」
大型ナイフ持って笑うひめ。そのまんま凶悪犯だぞ、お前………。
「これで刺せば、大人の男だって殺せるよ。ただね、不安なのは、校長が護身の準備をしてないかってこと。何しろ、呼び出したのがわたしだから。普段、乱暴なわたしと、ひと気の無いところで二人きりになるんだからね、用心してくるかも。」
やっぱコイツ普段の行い相当、悪いんだな。そんな奴に誘惑されて騙される校長も頭おかしすぎだろ。用心なんかしねーんじゃねーの?でも結構ヘタレっぽかったし、ヤンキー相手には普通、ビビるか。
「確かに、校長も何か武器持ってきてたりしたら、ヤバいわね。」
「うん、だから油断させないと。わたしがおとなしくしてるうちは、校長だって優しいふりするし、危険なことはしないよね。レイプ以外。」
「エグいこと言うのやめてよ……。」
「ごめん、もっとゆづにショックを与えること言うね。……わたし、校長とエッチするつもり。」
「は?何言ってんのお前。」
素が出たオレ。
「こらぁ、言葉遣いがおかしいよ。ひとまず、最後まで聞いて。わたしが裸になれば校長も安心するし、きっとわたしの体を貪るのに夢中になって、他のこと考えなくなるよね。校長だって服脱ぐから、何か危ない物を持ってても手放すことになる。もし脱がなかったら、わたしが裸になってって、おねだりするよ。そうして無防備になった校長が、わたしの体だけを見ている時に、ゆづがこっそり近づいて、ナイフを渡してほしいの。そしたら、喉でも心臓でも、簡単に刺せる。」
「…………………それ、おかしいだろ。」
「言葉遣い。丁寧に、可愛く。」
「そんなのもう……」
「今はまだ、男に戻れてないから。きちんと話さないとだめ。」
「………しかたないわね。………ひめの作戦、変だと思う。ナイフで刺すのは、ゆづがやるとこじゃない?」
「あはは、疑問なの、そこなのー?」
「納得出来ないとこはいっぱいあるよ!まず一個目が、それ。」
「そっか。うん、わたしも最初はね、考えたの。校長とエッチして、油断させる役と、殺す役を分担しようって。でもね……優しいゆづは、人を刺すなんて無理だよ。」
「…………それはそうかもしれないよ。ゆづ、ヘタレでビビりだから。でも、ほんとにやらなくちゃいけないなら、やれるよ。絶対。ひめこそ、出来るの?お尻の穴に、大人の……アレを入れられた状態なのよ?そんな状態で、ナイフで刺し殺すなんて、出来る?」
「わたしなら出来るよ。心の底から校長を憎んでるから。しかも体を穢されたなら……大切なはじめてを踏みにじられたなら……何の遠慮も無く、切り刻めるよ。」
めちゃくちゃ優しい、天使の笑顔でひめは言った。それ見てオレは、本当なんだなって思った。
「しゃーねー!じゃなくて!しかたないわ!ひめの、言う通りにするよ。」
「ありがとね、ゆづ。」
マジほんとは悔しんだけど、何つーか男として。情けなくね?こんなの。何もかもこんな可愛い子にやらせて、ほぼほぼ見てるだけとか。
でも実際、オレじゃ絶対無理だしな。校長、嫌いだけど、殺すのはちょっとハードル高過ぎだべ。
まっ、考えたらひめも男だったし。ってことで妥協しとくか、しゃーねえし。
「いざとなったらね、ゆづも校長を押さえ込んだり、なるたけフォローするから。絶対上手くいかせようね、ひめ。」
「うん。殺すのはね、自信あるんだ。ゆづは危ないことしなくて大丈夫だよ。フォローしてもらえるんならさ……他に心配なことがあってね………」
ひめが急に下を向いて黙った。顔は笑ったままなんだけど、雰囲気おかしい。
「どんなこと?」
「校長に犯された時にわたし……ショックで駄目になっちゃいそうな気もするの……!!」
いきなり泣きそうな声になった。
それでやっとオレにもわかった。ひめってビッチっぽいし、援交やってそうな感じすげーするとか勝手に思っちゃってたけど、ゲイのオヤジにヤられて平気なわけねーんだ。ある意味、殺人よりハードだ。オレなら、殺人はギリギリやれる可能性あるが、ケツの穴に校長のチン〇ン入れられるのは100パー無理だ。
「校長にレイプされるのはやめようよ。ハグとかだけでも何とかなると思うわ。」
ひめはぶんぶん顔を振った。涙を振り落とそうとしてんのかと思った。もう、涙がめちゃくちゃ流れてた。それに、体が震えてた。
「ううん、それじゃ、だ、め……なの……だ……って、わた、し……犯され、なきゃ、殺、す、自信、ないか、ら……。」
泣き声出すのを、我慢しながらひめはしゃべっていた。
「わた、し、だってさ……人、殺すの、さ、……怖、いん、だからね……それに……そこまで、ひど、いこと、されないと、迷っ……ちゃう、かも……殺意……保て、ないかも……だから………」
ひめは手で顔中の涙を拭きまくって、頑張って呼吸を整えてた。オレは黙って見てた。
三分くらいしたら、結構、落ち着いてきた。笑顔まで復活させた。涙はまだ出てきたが。
でもコイツすげーよ!よく泣きやめたな!マジで心から尊敬する。コイツには男として負けた気がする。オレならこんな時に泣くの我慢出来ねーだろマジで。
「だから、わたしは校長に犯されるよ。計画は変えられない。」
考え変えてほしいって、思いきり思うんだけど、でも、ひめがかっこよすぎてオレじゃ止められないって思っちまった。なんも言えなかった。
「ゆづ、助けてくれる?」
「うん……ゆづに出来ることなら、何でもするから。」
「じゃあ、お願い。校長が、わたしのはじめてのエッチの相手じゃなくしてほしい。」
「……えっ?」
「フォロー、してくれるんでしょ?」
何の話だ?まだ潤んでる目で、オレは見つめられた。
「もお、言わなくてもわかってよ。……ゆづとエッチさせてって言ってるの。」
「…………えっ。」
……………………。
「ゆづに捧げられたなら、そのあと、誰に穢されても、わたしはわたしのままでいられる。お願い、ゆづ。わたしに力を貸して。」
ひめのシリアスな瞳が本当に綺麗だ。真っ白な肌が光ってる。暗い教室の中に、本物の天使が居るみたいに見える。
「ゆづ……わたし、すごく気が弱いんだよ。」
ひめがオレの前の机に手をついて前屈みになって、下から見上げてきた。
「一人じゃ何も出来ないよ。怖くてたまらなくて。勇気がほしいんだ。ゆづと、一つになりたい。だってさ……上手くいかなかったら、死ぬかもしれないし。こんなに思い通りにいかない人生が、報われないまま終わるなんて、わたし耐えられない。せめて、好きな子と結ばれたいよ。」
泣きそうなのに、泣かないでいるひめ。
「好きって………」
「ゆづが好きなんだよ。一日で好きになっちゃった。最初は、大切な女の子にそっくりだから、仲良しになりたいって思った。でも、もう、ゆづのことは、あの子とは別の子として好き。同じだけ大好きなの。一番、好きなんだ。一生大事にしたい。」
おい。オレ、告られた。初告られが、今か。人を殺そうとかしてる時かよ。人生で一番ヤバい時に、日本一の美形に告られるとか………真面目に考えたら破裂しちまうよ頭。
でも、マジでビビってるけど、気持ちはすげー安心感があるんだよな。本気で天使に思えるような奴に、好きって思われてるって思うとよ……何も怖くなくなったんだよな。人に好きになられるの、すげえよ。告られたら世界が変わったよ。
「ゆづ、嬉しいの?わたしに愛されて、幸せなの?」
「え、いや……ちょっと、理解追いついてなくて、何も考えれてないけど……」
つい本心誤魔化した。
「ええ?そんなににまにましてるのにぃ?……可愛い。」
涙目でニヤけたひめの顔が可愛すぎて呼吸止まる。テンパるオレに、ひめが二歩近づいてきた。座ってるオレの肩と、ひめの腹が5センチぐらいの距離だ。何かあったかい空気がひめから流れてくる。いい匂い過ぎる。
「ねえ、ゆづは……わたしのこと、どう思ってるの?聞かせて。」
限界越えた近さから、ひめのロリ天使ボイスが来て、上向けねーよ。今、上見たら、顔と顔が近すぎてヤバすぎるだろ。
「ねーえ……お願い。」
ゆづの手が、髪の毛さわってきた。めちゃくちゃ撫で撫でしてんし!顔、上げないといけなくなってきた。いや、今はヤバイ。オレはさりげなく下向いて、語った。
「ひめは……可愛いし、いい奴だし……ゆづだって、好きかもしんない……ただ、たださ……男同士じゃんか……現実にさ……」
視界の端でひめの手が震えて、拳握るのが見えた。殴られんのかと一瞬思ったが、ちっちゃい真っ白い手は、弱々しくて力入ってなさそうだった。
「そう…………そうだよね……………」
ひめの声が、オレの心潰しそうなぐらい悲しかった。
「ゆづは、もっと……本当に愛せる人にしか……体を捧げたくないよね………。」
本気でひめの言うことが刺さった。自分の卑怯さが容赦なく抉られた。
「でもわたしにはゆづしかいないんだよ!」
ひめが叫んだ。床に膝ついて、オレのスカートにおでこを当てながら。その後は、何も言わなくなった。
………いいか、細かいことこだわんなくても。男同士とかどうでもいいべ。セックスしてやろうじゃん。気づいたけど、オレもかなりひめが好きだ。他に好きな奴なんかいねーし。ひめは校長にレイプされんのに、オレは何もしないのもおかしいだろ。
それに多分よ、コイツとは一生の相棒になるんだし。結ばれてもいいじゃんかよ、なあ、オレよぉ。
「ひめ。いいよ。エッチ、するよ。」
自分で言っといて、このセリフやべーなとか思って、生唾飲み込んだその時。
「ほんとお!?」
いきなりひめが明るくなってすげー勢いで顔上げた。めちゃくちゃ笑顔。一瞬で場の空気変わる。
キョドって固まるオレ。
「ぬ、脱いで、わたしも脱ぐから!あ、脱がせてあげよっか?」
オレの下半身に喰いつきそうな勢いで、チャックに手をかけてくるひめを、思わず押し退けた。ズボン脱ぐのはエッチすんだから当たり前なんだけど、何かひめがこえーんだもん。
「わああ……硬くて熱ぅい……」
「おい待てコラ!」
思いっきりオレのポコ〇ン握ってきてんし!反射的に怒鳴っちまった。ひめが急に積極的になりすぎてついていけてねー。シリアスな感じが無くなりすぎだ。ヤるってなった途端、野獣化しすぎじゃねーの?つい顔をぐいぐい押し退けちまう。
……いや、これじゃダメだな、拒否ってるみてーじゃん。今はひめに大事な思い出作ってやらねーといけねーんだ。心の狭い考え方してんなよ、オレよ。
「はぁ、はぁ、ほらぁ、わたしのも、すごくおっきくなって熱くて火傷しそうでしょぉ…?ずきずきして気持ちいいのぉ……」
ガチガチの〇ンチンオレの手に押しつけてきてんけどコイツ!!他人のチ〇コの感触なんてキツイからよお!マジやめてくれ!結構デケエしよ!
「ああぁ……もう我慢出来なくなるよぉ……でも今出すの勿体ないから我慢すりゅ……あふぅ……」
頭おかしそうなエロ声出しながら立ち上がったひめ。ビビって引いてるオレの前で……制服脱いでんだけどー!!!!
ブレザー脱いで、ワイシャツも脱ぎ出してんよ。さっきから、ひめの口が光ってる気がしてたけど、よだれ垂らしてんじゃねーか!あごから流れ落ちるぐらい!
「ゆづぅ……見て……乳首……」
下着をひめがたくしあげると、丁度いい具合に胸辺りに明かり当たってて、真っ白い肌に薄ピンクの乳輪二つ、バッチシ見ちまった。はっきり言って綺麗過ぎて完全興奮する。
「なめていいよ……」
いや、いきなりハードルたけえよ!そういう要求してくんのはもっと後だろ。いや、近づけて来んなよ!まだなめるって言ってねーだろ!
「くすくすくす、恥ずかしいの?ゆづ……。リラックスして……。ゆづも、見せて……。」
やべ、頭がボヤッとしてるうちに、服脱がされそうになってんし。てゆーか、上着脱がされんかと思ってたら、コイツ、ズボンのチャックあけてんじゃねーか!
股間がめちゃくちゃ涼しい。
「わあ……なんて綺麗なの……可愛くて美味しそう……」
ひめの奴、オレの股間よく見たいからあり得ないくらい猫背になってて魔物みてー。すごい勢いでよだれすすって「じゅるるるるるるるぅ!」とか音たってんし。ますます息荒くなってきてほんとヤバイし。
「はぁはぁはぁはぁはぁはぁ、ゆづ、キス、キスしよおよぉ、ね、はぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ。」
半脱ぎのドエロい格好のひめが抱きついてきて、顔近づけてきた。野獣になってても顔は天使だな、この野郎。
マジどうする?キスかよ。いや、してもいいって、腹くくってんだけど、でも何だかひめのテンションについていけなくて、引いちゃってんだよな、今。
「ま、待ってよ、ひめ。ゆづね、キスしたことなくて、ちょっと怖いの。」
とりあえずストップさせとくべ。まず落ち着かねーと。
「わたしだってはじめてだよ?ゆづ……わたしとキスしたくないの……?」
ひめが一気にテンション下がって、また涙目になった。
「わたしはゆづと……結ばれるのが嬉しくて、舞い上がっちゃってるのにさ……ゆづは、落ち着いてるね。……そんな、嬉しくないの?」
「べ、別に、そうじゃないけど!だって、今日、こんなことになるとか思ってなかったし、ビビっちゃってるだけなんだけど!」
ひめはオレから手を離して、隣の椅子に座った。
「ゆづは、わたしとエッチすることに、夢中になれないんだね。……胸なんか見せてるわたしのこと、呆れちゃったかなあ……。」
ひめが、泣きそうになった。オレがビビリなせいで、傷つけちまった。
「泣かないで、ひめ。ゆづは、心の準備が出来てないだけだから。」
「……ううん、いいや。無理にエッチしてくれなくていいよ。一度でも、エッチしてくれるって言ってくれた、その気持ちだけで充分だよ。それだけでわたし、頑張れる。だから、いいんだ。」
「えっ………」
「ごめんね、ゆづ。パンツはいて。」
ひめが下着を戻して、シャツのボタンを留めてる。慌ててオレは〇ンチンしまったが。
「本当にいいの?」
どうしても聞かないわけにいかねー。
「うん、大丈夫。勇気出せるよ、きっと……多分。………でも、ゆづ………わがまま言うけど、ほっぺにチューしてほしいな。そしたら、絶対に大丈夫だと思うの。」
涙を拭いながら、オレと目を合わさないで心底申し訳ない感じで、ひめは言ってきた。
「ひめ、何でひめの方が罪悪感、感じてるみたいになってるの?……悪いのはゆづの方じゃん。」
ひめを泣かせたオレにマジで腹が立ってきた。
「やるって言ったのに、ビビって引いて、途中でやめさせたゆづが悪いんじゃん!何でひめが後ろめたい顔してんの!」
「ゆづは優しいね……全部、わたしが弱い子なのが原因なのに。ゆづみたいな気の強い子って、羨ましいな。ゆづ、お願い。ほっぺにキスして。ゆづの強さを、ほっぺからもらうんだ。」
「ほっぺでいいの?遠慮しないでいいんだよ?」
「え………?」
「ゆづ、さっき、ひめのために何でもするって決めてたから。小さなことこだわったりしないで、ひめのしたいことさせてあげることにしたから。ちょっと展開についていけなくて守りに入っちゃったけど!もう大丈夫。ひめの好きにして。」
「じゃ、じゃあ……口と口でキスしていい?」
「うん。」
「キスのあと、服を脱いで、裸……見せてくれる?」
「う、うん。」
「わたしの服も脱がせて、抱き合ってくれる?」
「いや、まあ、うん。」
「体中、なめたり吸ったりして、お尻の穴に指を入れたり、もっと太い物も自由に入れていいの?」
「え、あ、」
「いいんでしょ?決めたんだよね?」
「ま、まあね。」
ひめの顔が歪むくらいニヤけた気がしたが、よく見たら泣き顔のままだった。
「ありがとう…………」
ひめが目をつぶって、顔を近づけてくる。これ、キスだろ。こっちの顔はひめの両手で捕まれて、動かせねえ。うおお、キスする!あと一秒!
いや、ひめが顔、後ろに引いた!何でこんな時にフェイントかけんだ!
……ひめの頭が何かデカイ手につかまれてる。
「そこまでです。」
大人の声が聞こえた。
「ふおはぐ!」
変な声出しちまった、度肝抜かれ過ぎた!ひめの背後に誰か居んよ!おっさんだ!
「不純交遊は認められませんよ。」
聞いたことある声だと思ったが。
「マジかよ校長じゃねーか!!逃げろひめ!!」
オレはほとんど何も考えないでタックルかまし、ひめを抱えて逃げようとしたが、校長の手はガッチリひめの頭をつかんだまんまでビクともしねえ。
「おい!離せよジジイ!」
むちゃくちゃに校長の奴を押したり引っ張ったりしても全く動かねー。昼間はひめの竹箒一撃でダウンしてたくせによ。まさかオレはひめより非力なのか?いや、さすがにそれはねーべ。
ってことは、コイツ普段は弱いふりして生徒を油断させてるってことか?
ヤバい!こいつには勝てねー!大体、何でここに出てくんだよ。どうしてオレらが居ることがわかった?まさか、罠なのか?!オレら、コイツにおびき寄せられた?
ぜってー逃げないとやべーよ!
「はぁ!?」
気付かなかったが教室のドアがいつの間にか開いてて、そこに二人の生徒が立ってる。明らか味方じゃねえ。逃げ道ふさいでやがんよ。
でもあいつらなら余裕でぶちのめせる。そうだ!どっちか一人、人質にしてひめを解放させりゃいーだろ。
「オラァァァ!」
二人の女子、じゃねーやオカマ野郎どもに突撃してやった。やっぱ簡単に吹っ飛んだ。でも二人とも一、二歩後退しただけで踏みとどまって逆につかみかかってきやがった。オレより強い?特に、背ー高い方。まさかこの学校最強の番長的な奴か?
「きゅふふふふ、ひ弱なくせに、やんちゃしちゃって可愛いわあ……。」
お前、さっき廊下で絡んできた先輩じゃんかよ!勝手に抱きついてきてんじゃねーよ!男の先輩のくせに体、柔らかすぎだろ。でも巨根が硬すぎんだよ。信じられねー熱さだしよ、そのうち燃えて消えるぞ?ビクンビクン動かしてんじゃねーよ!
小さい方の生徒も後ろにしがみついてくんし、コイツも股間が勃ちまくりだし!
「はい?!この先輩に掘られた奴じゃん!何で仲間になってんだよ!」
先輩と一緒にいた結構可愛い子だった。命令聞かないといけねーのかしんねーけど、めちゃくちゃ積極的に体押しつけてくる。何で勃ってんだよ、もう変態だなお前。しかもオレよりチ〇ポコでけーしマジ終わってんよ。
でもこの子も柔らかいしいい匂いする。前後から抱かれてあったかくて気持ちいい。駄目だ、オレも知らないうちに勃ってた。いや、これ勃起我慢出来なくて当たり前だろ。誰でも同じ目にあったら勃つから。
畜生、ここで終わりかよ。何か校長がこっち見たし。
「そこ、校則違反ですよ。手だけ捕まえときなさい。」
「す、すみませぇん、いきなりこの子がぶつかってきたんですぅ。」
校長に注意されて先輩が離れたんだけど。何コイツ、明らかに嘘こいて誤魔化そうとしてんじゃん。
「言い訳は無駄です。あなたがた二人の処罰は重くなりました。」
「えええー!校長先生の意地悪ぅ!」
めちゃくちゃナメた言い方してんけど、先輩、本気で落ち込んでんぞ。もう、オレの手しかさわってこない。後ろの小せーのも手だけになった。二人ともオレの手、一つずつ、両手でぎゅうぎゅう握りしめてきてウゼーけど、とりあえずピンチ脱した。ありがてえ、校長イイ奴だな、やるじゃねーかよ。
………待って。何で助けてくれんだ?いや、まだ捕まったままだけどよ、真面目に生徒に校則守らせるとか、何か違くねー?
「おい校長!てめー何がしたいんだよ!とにかくひめ離せよ、虐待で訴えんぞ!」
もう女言葉とかやってらんねーって思って、遠慮しねーで怒鳴ってやった。そしたら校長、ため息つきやがった。何だよ、言葉遣いのこと説教すんのかよ。とか思ったら、
「こらぁ、ゆづ!言い方が乱暴過ぎて可愛くないよ!」
よりによってひめが説教してきた。頭、校長に掴まれたままで、半ギレ気味になった。
先輩と相方の子も便乗してくる。
「少しくらいおてんばな子も、とっても可愛いと思うのだけれど……限度というものがあります。今の言葉遣いは、お茶目で済ませられるものじゃありません。めっ!」
「先生に口答えする時はね、もっと甘えんぼさんな言葉遣いするとね、周りの子もきゅんきゅんときめくの。そうしないとダメなんだからね!」
何でこんな文句言われねーといけねんだよ、こいつらおかしくねーか?
「黙りなさい!」
校長が三人に注意した。
「あなたたちは人に偉そうなことを言っている場合じゃないでしょう。むしろ間違いを正される場です。おとなしくしなさい。」
この人、威厳が増してきてねー?
「だいたい、あなたが可愛らしさなんて語る資格があると思ってるんですか、姫葉さん。何ですか、殺人計画って。女の子らしさのかけらも無いですね。」
「ひゅわぁ!そこまでバレてるのぉ!?」
え、校長、殺人って言わなかった?
「校長、じゃねーや校長先生。ゆづたちが、校長先生のこと、殺そうとしてるの知ってたの……?」
「そこの二人に白状させましたからね。」
「さ、最悪だよ!わたしの信頼を裏切ったんだね!」
「だから、お黙りなさい!」
もう何もかも詰んでんし、なんならオレらが殺されても文句言えねー展開じゃね?何でひめの奴、思ったよりテンパってねーんだよ。
「え……ちょっと待って下さい。先輩たちに聞いたって、本当に?この人たち、何も知らないはずなのに。」
オレが校長に聞いたら、一瞬ひめがビクってなってあっちを向いた。何も無いふりしてんけど、めちゃくちゃ髪乱れてんし。
校長が、超長いため息ついた。十秒ぐらい息吐いてたんじゃねーの、おっさんなのに肺活量すごくねーか?顔、地味なくせにただ者じゃない感ハンパねーよこの人。
「この二人は、姫葉さんに協力していたんですよ。夕月さん、あなたを騙す計画にね。」
「は………?」
言うことのインパクトもすげえ、とんでもない爆弾じゃん!けど、言うに事欠いてあり得な過ぎだろ、マジキレんぞクソオヤジよォ!
「あぁーあ、ダメだったかぁー……。」
何かなげやりに言ってるひめ。
「え?ねえ、ひめ……まさかと思うけど……校長先生の言ったことなんだけれどさ……」
「ごめんなさい、わたくしたちが姫葉さんに抗えなかったから!全部校長先生のおっしゃる通りなの!」
先輩がかなりエロい半泣き声でぶちまけた。
「ほんとに……?ゆづ、騙されてたの……?」
「わたくしたちが心の弱い子なばかりに、こんなことに……でも、だって、姫葉さんが……!……人差し指をペロペロさせてくれるって言うんですもの!」
「まだ重大な校則違反があったんですか!」
「ひいぃ!校長先生怖いですぅ!おもらししちゃうかと思いましたぁ……」
先輩、何か泣き出してんけど。連れの子もつられて泣いてんし。
……ひめに騙されてたのか。
「ひめ………何で、ゆづを騙したの?」
ひめは目線を外して無言。校長がまたため息ついてから教えてくれた。
「あなたと、性行為をするためです。」
「え、何言っちゃってんの?」
「あまりにも良識に欠けた企てで、信じられないでしょうが、事実なのです。」
「有り得なさ過ぎるんだけど、友達とヤリたいだけで、殺人とか!」
「ゴホゴホン!ヤリ……そのような言い回しは不適切ですよ。」
またクソこまけーこと言ってんけど、今どうでもいいだろ。
「校長先生、ゆづとひめはまだ今日一日のつきあいだけど、友達なんですよ?ヤリたくなっただけで犯罪に巻き込むなんて有り得ないでしょう?」
「はぁー………殺人なんて嘘なんですよ。追い詰められた状況を作って、あなたの判断力を奪おうとしただけです。」
「え?……校長先生を殺す気、無いの?」
いや、それは無い。ひめには校長を殺さないといけねー理由があるからな。
「だってさ、ひめ……」
ひめがまた目を反らした。校長の奴、またため息つく。しつけーな、コイツ。
「姫葉さんが色々と、とんでもない嘘を言ったようですが……まず、あなたに知っておいていただきたいのは、卒業生が強制的に性的な仕事に就かされるなどという事実は無い、ということです。」
「ええ?!」
「わたしが生徒や、卒業生に猥褻な行為をしたことも、そうしたことをしたいという願望も、一切ありません。いくらあなたたちが美しくても、男ですからね。手を出したりしませんよ、わたしはロリコンであってショタコンじゃないのです。」
「いや、あんた自分が何言ったかわかってる?」
「言葉遣いがまた乱れていますよ。」
「あんたも言うこと気をつけろよ!いえ、はい、ごめんなさいですぅ。校長先生はロリコンなんですか。ゆづたちみたいな子には興味無いんですね。」
「見た目は大変刺激的なのでいつか間違いを犯す可能性は充分にあるのが正直なところですがね。」
「本当に言うこと気をつけて?!」
「潔く認めるわたしはかっこいいと自分では思います。あなたたちにモテたら嬉しい。別に手は出しませんが。」
「もはや信用出来ませんけど!校長先生、真面目なキャラじゃなかったの?!」
「内心はいかがわしいことばかりですよ?あなたたちが本物の女生徒だったらとか。でも仕事は真面目そのものです。大人はそういうものです。思春期のあなたたちだって同じようなものでしょう。」
「図星過ぎて言い返せませんねー……。」
「そんなにいかがわしいことを考えてるんですか!本校の生徒らしい清らかさを大切にしなさい!」
「おい!ねえ!顔がめちゃくちゃ興奮してるけど!ニヤけないで下さい!」
駄目だ、校長、バカ過ぎる。どんどん喋りやすいダセー大人になってくよ。立派なふりしてただけで底辺じゃん。
「まあ、今もつい、色々不純なことを心に思い描きつつも、気高い理想を追い求める教育者であり続けているのです。あなたたち生徒をもてあそぶことは無いし、あなたたちに汚らわしい欲望を抱く人達にあなたたちを差し出すことも無い。夕月さん、あなたが卒業後に奴隷になる運命だなんてことはありません。」
「………もう何を信じたらいいのかわかんないんですけど。結局、ひめが言ってたことは嘘ばっかだったってこと?ねえ、ひめ!」
ひめの奴、なんも言わないで動かない。ヤンキーの癖におとなしいと思って、前に回り込んで見たら、目ーつぶって寝たふりしてんけど!バカ過ぎてもはや何も言えねーんだけど。
「ハア?!その態度何!?やっぱ虚言ばっか言ってゆづ騙してたんでしょ!答えなよひめ!」
文句言ってたら校長に止められた。
「やめなさい。まるで不良みたいですよ。」
「いや、不良はひめですけど!」
「わたしから全て説明しますからおとなしく聞きなさい。姫葉さんは、あなたに対してとても不適切な欲求を抱いた。子供から大人に変わってゆく年頃では珍しいことではないんですけどね。」
「校長先生は完全オッサンなのにヤバい欲求もってんじゃん。」
「ゴホン!あー……姫葉さんはですね、いささか元気がありすぎるというか、純真女子校にはあまりいないタイプの子です。良くも悪くも自由闊達で……今回、その個性的な性格が、悪い方に出てしまった。夕月さんへの欲望を、実現しようと決断してしまった。そのために友人を利用して、他ならぬ夕月さんを騙して思いを遂げるという、誤った手段でね。先程言ったように、この学校が生徒を性的奴隷にして人身売買をおこなっていることはないし、わたしは同性愛者ではなく、わたしと取り引きをした生徒が、他の生徒の体をもてあそぶ権利を手に入れるなんてことも無い。姫葉さんは殺人などするつもりは無く、学校から逃亡するつもりも無い。全てつくり話です。夕月さんは信じてしまったようですが、初登校日のためかと思いますね。純真女子中学校の生徒は、大変に演技上手なのですよ。特に姫葉さんは演技の成績はとても優秀です。」
そうだよ授業でみんな嘘泣きしてた!ひめの超シリアスな奴も、あれ嘘泣きかよ。確かに優秀過ぎだ、ハンパねー……………普通にヤバい最低野郎だけどな。
「こうして姫葉さんは中学生にあるまじき行為をしでかそうとしていたのです。幸い、未遂に終わりましたが、極悪非道な計画を実行しようとしていたことはとても見過ごせません。お尻を叩かれるだけで済むとは思わないことですね、姫葉さん。」
何ビクンとしてんだひめ。誰もお前が寝てると思ってねーから普通に反応しろよ。てゆーかケツ叩きは実話かよ、やっぱイカれた学校じゃねーか。
「あ、あのー、どんな罰になるのですか?」
とか先輩が聞いてんけど、声がビビり過ぎだろ。
「そうですね、放課後五時間の勤労をしてもらいましょう。ああ、夕月さんにはわからないですね、勤労罰というのがありまして、校内のお店でアルバイトのようなことをしてもらうのです。ただし、罰ですから給料はもらえません。今回は、それを毎日五時間、姫葉さんには……二週間ほどやってもらいましょう。」
「まじですかぁ……五時間て、やばいですねー。それじゃ、ひめと遊べないなー………明日から暇になっちゃうじゃん。あ、でもいいか、春音たちと遊べば。」
「何それ!わたしがお仕事させられてる時に、ゆづは他の子と仲良くする気?!」
おい、コイツいきなり動き出して怒鳴り散らしてんぞ。かなりうるせー。
「ちなみに夕月さんのクラスメイトにも姫葉さんの協力者がいます。その子達にも罰を受けさせますので、しばらく夕月さんの遊び相手がいないかもしれませんね。」
「あ!そうか!春音とか雛名とかもひめの仲間ってことか!最悪、どんだけ権力持ってんの、ひめ。さすが軟弱学校唯一のヤンキー野郎だねー。もう支配者じゃん。」
「ヤ、ヤ、ヤンキイィ!?!ゆづってば、わたしのことをそんな目で見てたの?ひどい……もう百年の恋も醒めたよ!!もう絶対つきあってあげないもん!!」
「まあまあ、怒んないでよ。つきあったりはしないけど、いい友達になろーよ。ねえ。」
「言い方が軽くてカチンと来るよ!……で、でもゆづらしくて可愛いんだけどさ。全部わかっちゃったのに仲良しでいてくれるのはとても素敵だし……嬉しいよ。じゃあ、今から親友だね!」
ヤンキーって言われてなんでかキレたヤンキーを適当になだめてたら、急に態度変わりまくってヤバい。やっぱコイツ頭おかしい。
「ひめ、給料もらえないバイト頑張ってよ!」
とりあえずからかってみてたら、ひめが反応する前に校長がちょっと厳しめにオレに言った。
「いえ、夕月さん、あなたも他人事じゃありませんよ。」
「え?……ゆづにも、何か罰があるの……?」
「場合によっては、ですが。夕月さん、姫葉さんに中学一年生にはあるまじき誘惑を受けましたね。その時に、あなたはどう思ったんですか?あなたの心にも、不適切な欲求が芽生えたりはしませんでしたか?もしそのような場合は……姫葉さんと同罪となります。」
はあ??!有り得ねーだろ、オレ被害者なんだけど!!オレは悪くねー!!!
「絶対に、どう考えても、変な欲求とかありませんでした!ゆづはゲイじゃないので!ひめが可哀想だから、少し、エッチなこともしてあげようと思いましたけど、自分がしたかったとか絶対無いです!」
「本当に?姫葉さんはこんなに綺麗で可愛らしいんですよ?興奮しなかったんですか?」
「聞き方がエロ過ぎだろジジイ!!じゃなくてじゃなくて、ゆづ、傷ついちゃいますぅ、そんなこと言われるとぉ。絶対に嘘なんて言ってませんからぁ。」
いきなり、ひめが変に明るい声でわめき出した。
「校長先生、ゆづのスカート見てよ!まだ勃起してるから!わたしとエッチする気満々だった証拠だよねー!」
クソマジ死ねこの女、じゃなくてホモ野郎!確かにまだ勃ちっ放しでヤベーし!
「姫葉さん、友達を陥れようとするのは醜い態度ですよ。口を挟むのはやめなさい。」
言うじゃん、校長。もっとバンバン言っていいよ。
「校長先生ぇ、ひめってば、悪すぎじゃないですかぁ?いっそ退学にした方がよくないですか?」
「ゆづー?!?」
「いえ、退学はありません。」
何か校長が今までより真面目な顔になってんぞ。
「純真女子中学に、退学は決して無いのです。入学者は、学校をやめる権利を認められていないし、やめさせられることもありません。」
「え?それって、ひめの嘘話じゃないの?」
校長がまた頭おかしいこと言い出したと思ってたら、ひめもまた騒ぎだした。
「この学校は本当に異常なんだよ!わたしたちを生贄にしようとしてるんだよ!」
「話の邪魔なので黙りなさい、罰を追加しますよ。」
ひめ、即黙ってんじゃん、そんなに罰怖いのかよ。根性ねー。でも超キレそうな顔してんところがヤンキーらしくてこえー。でも校長の言いなりだけどな。ウケる。
校長はいつものため息。ため息つくのって楽しいのかな?オレも今度やってみんべー。
「姫葉さんはいい加減な話を吹き込んでばかりで、この学校の本当の意義を話していないんですね。夕月さん。日本純真女子中等学校はね……地球人類独立を取り戻すためにあるのです。」
「………は?いきなり何言っちゃってんの?頭沸いてます?」
普通に素になりかけたぜ、話が訳わかんなすぎて。
「近い将来………政府は宇宙人と戦うことが決定しています。地球から追い出すために。あなたたちは、その戦争の兵士となるのです。女装はあなたたちという戦力を宇宙人の目から隠すための措置です。日本だけでなく世界各地で少年達を隠す女子校が設立され、宇宙人の監視を逃れて若い男性に戦闘訓練が施されています。三年程のちには、戦いが始まるでしょう。夕月さんも、地球を救う英雄になるのです。」
「いや、ちょっと待って!ネタで言ってるんですよね?さすがにガチじゃないですよね?」
また校長、ため息。さすがにウザくて殺したくなるんだけど!答えろよ!
イラついてたらひめが答えてくれた。
「実話だよ!この学校は、未成年を戦争に送り込もうとしてるんだよ!」
「マジなの?……でも、ひめって嘘つきだしねー。」
「これは本当です。」
冷静に言い切りやがる校長。
「人類のため、仕方の無い手段なのです。宇宙人の支配のもとで、まともに軍隊なんてつくれませんからね。世界中の女子校を偽装した兵士養成学校の生徒を合わせても、あまり大きな戦力とは言えませんが、優秀な兵器が用意されていますし、何より独立への若者らしい情熱さえあれば勝てるに違いありませんよ。」
「ほんとに勝てますかねー……?殺されませんか?」
「勝てると信じれば勝てます。まあ、戦争なので尊い犠牲は出るでしょう。ほとんどの兵士が生きて帰れない可能性もある。これは事実です。しかし、あなたたちは歴史上、最高の英雄となれるのです。残された家族は幸せになれますしね。」
「別に英雄とか興味無いんですけど!家族も生活困ってないですし!大体、この学校の子って、弱っちいのばっかじゃないですか!授業も可愛いふりの仕方とか、ますます弱くなりそうなのだし!戦闘訓練とかほんとにしてます?!」
「可愛らしさを重視する方針は、宇宙人に見抜かれないためです。それにですね、お友達が美しく可愛ければ、大切に思えるでしょう?」
「ゲイ公認じゃん!そんなんだから生徒にセクハラするホモ変態教師とか、クラスメイトをレイプしたがるホモヤンキーとかだらけになるんじゃん!」
「兵士同士が深い絆で結ばれた軍隊は強い。強いんじゃないですかねー?別に本人同士がよければ肉体関係大いに結構じゃないですか、妊娠リスクなど無いし……というのが大人の本音ですね、中学校ですから公式には認めませんが。着衣状態なら中学生の百合でしかないのでわたしの目を楽しませハッピーにしますし、明日あさって戦争になるわけでもないし、当分はおしとやかに百合百合してていいですよ。戦闘訓練については、今年度二学期のカリキュラムから一応導入を検討されてます、海外の事例を参考にしてね。でも本格的には来年以降からですかねー。段階的に少しずつ。おしとやかさとの両立を心がけなくてはね。」
「今はなんも訓練してないの?!下手すると全然鍛えられないまま戦争行くことになるじゃん!」
「心配ありません、若くピュアな、地球への忠誠心でもって命を燃やし尽くせば勝てます。」
「いや、やだよ。逃げたい。」
「脱走は最大級の罰が与えられますよ。とはいえ死刑には出来ませんからね、貴重な兵士を減らすわけにいかない。そうですね、夕月さんは性的に潔癖なようですから、男性に強姦される罰を受ければ反省しますかね。学生のうちはともかく、卒業後はそういうこともあるのだと覚えておきなさい。何しろ世界にはあなたがたの体に熱い視線を向けている変態権力者がたくさんいますから、刑の執行者に事欠かない。」
「ひめの嘘話と変わんねーじゃねーかよ!」
「全て人類のためです。」
最悪過ぎだ!やっぱりオレの人生終わってた!校長の奴、殺しとけばよかった!
「とりあえず死んどけよ!」
かなりヤケクソで校長に頭突きかましたら、自分でも思ってなかったくらい力入って、校長の腹に頭がめり込んだ。
「ごぼぉ!!」
そこにひめが足引っかけて転ばして、さらに横顔に蹴り入れた!それは犯罪だろ。でも校長だからいいよ。
「ゆづ、逃げるよ!」
ひめに手をつかまれた。今、逃げてもお前、明日罰くらうの変わんねーぞ、なんなら重くなんぞ。オレも同じだけど。でもいーべ、校長とか教師の言うこと聞きたくねーし。
「先輩たちも、逃げんぞ!」
適当に手を伸ばしたらちっちゃい子の腕をつかんでた。
「あ、あ、校則違反ですよぉ!」
「何で細かい事言ってんの!いちいち気にしないでいいよ!」
「ふあぁ……素敵……勃っちゃったぁ………。」
四人で廊下を走ってると、ひめが説教してくる。
「言葉遣いが乱れてるよ!それにお手々以外さわるのは、はしたないんだからね!」
何で変にいい子なんだよ。コイツめんどくせー!可愛い以外に取り柄ねーよ。女じゃねーから可愛くても意味ねーし。
未来は真っ暗だし、周りはヤンキーとスパイばっかで全員変態だし、この学校、いいことねーよ!チン〇ンはひめの手の感触に反応してんしよ!
マジどうにかしてくれよーマジよー!!!

(完)

奈落の縁の花園

奈落の縁の花園

男の娘ものです。ふざけて書きました。

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  • SF
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更新日
登録日 2020-02-22

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