おばあちゃんの言葉
幸せについて語るなんて事、僕にはおおよそできない。
こんな臆病者で、人間不信者で、人との関わりを持つ事が苦手な人間には。
かのK氏は、(僕の友達だ)「君が幸せに暮らすなんてこと、一生あり得ないね。」
なんて、言っている。その通りだと思う。
だって僕は、人の気持ちに対して、ものすごく疎い部分があるからだ。
僕は、対する人の気持ちが分からない。
どうすれば満足して、平穏な関係が築けるのかが分からない。
僕は常に、余計な事を言って他人に疎まれるし、それでも嘘を吐く事を覚えることができないのだ。
幸せとは、他人を介してでしか感じられないものだと思う。
けれども、僕はすぐに相手を傷付けてしまう。
受け入れてくれる相手が欲しいのだけども、なかなか見付からない。
そんな時、ある人が彷徨う僕に対して、こう言った。
「それは、あなたに原因があるのよ。まだ、あなたには“その時期”が到来していないのかもしれない。
でも、迷いなさい。たくさん、迷いなさい。
そうすれば、たくさんの友達ができて、あなたを救ってくれるから。」おばあちゃんのくれた言葉だ。
これが、今の僕を、現在まで支え続けてくれた。
おばあちゃん、僕は疎外されることばっかりだけど、それでも、いいのかな?僕は心の中で、呟いた。
おばあちゃんは微笑んだように見えて、そうして、僕の頭をそっと撫でてくれた。
僕は、泣き出したかったけれど、堪えた。おばあちゃんのために、堪えた。
そうして、次会うときまでは、幸せになっていようと、心に決めた。
切ない話だろう?この話を淡々と喋った僕に対して、K氏の返答がどう返ってくるか気になった。
僕の隣で静かに話を聞いていたK氏は頷いて、「うん。別に。」そっぽを向いて、そう言った。
K氏は、頬を微かに赤らめているようだった。
K氏は照れ屋さんだから、僕がこんな話をし出して、怒っているのだろう。
彼は人間同士の温かな営みというものが、苦手なのだ。だけども、僕はそんな彼を見て、笑った。
何故だか、おかしかったからだ。K氏は、「なんで笑うんだよ?」と、言って怒っていたけれど、
そんなことどうだっていいくらい、この日の空は快晴だった。
おばあちゃんの言葉