六題噺「デレ」「超絶技巧」「南蛮」「吸血鬼」「寝物語」「キミはいつも」
私のクラスに転校生がやってきた。
「ハーイ、ワタスィのナマエー、ミゲルとイイマスー」
日本語だ。こいつ日本語を喋るぞ。
「ワタスィー、ナンバンからキマシター」
ナンバン? 南蛮のことか? 国名で言えよと私は少しイラッときた。
「パパもー、ママもー、リッパなドラキュラヤッテマース」
……血、吸えるのか? 突っ込めば良いのか迷う。
「トクギハー、ネモノガタリネー。チョウゼツギコウデー、オニャノコタノシマセルヨー!」
私の中で転校生の評価はスケコマシに決まった。
「ソコノー、アナタ。ボクノーミソシルー、ツクッテークレヤスカー」
訂正。私を指差している転校生に私はついに口を開いた。
「あなた、いい加減にしなさい!」
「オー、デレネー。アレ、ツン? ドッチダタネー?」
「どっちでもないわよ! このチキン野郎!」
途端、転校生の顔が怒りに満ちたように見えた。
「チ、チ、チキンイッタナー! パパにもイワレタコトナイノニー!」
どこぞのパイロットだお前は。
「チキンだと思ったからチキンって言ったのよ! このチキン南蛮野郎!」
「マ、マ、マタチキンユウタナー! サテハキミはイツモトモダチデキナイノネー?」
そう言って転校生は担任の私をまた指差す。
大きなお世話だ。放っとけ。
少なくともこいつには言われたくない。
この、世界でも珍しいと言われる喋る鶏には。
六題噺「デレ」「超絶技巧」「南蛮」「吸血鬼」「寝物語」「キミはいつも」