三題噺「丘」「風」「薬草」

 私は丘の上に住んでいる。
 左右は高い山、後ろは強く風が吹き付ける切り立った崖。
 こんな所に住もうなどと、昔の私だったら思わなかっただろう。
 しかし、今の私はここでの暮らしを気に入っている。
 なぜなら私にはかけがえのない友人たちができたからだ。

 彼らにあったのは1週間ほど前だ。
 私はたまたま立ち寄ったこの丘で休息をとっていた。
 よほど気が抜けていたのであろう。私は彼らにくすぐられるまで彼らに気付けなかった。
 彼らは私をくすぐると一目散に森へ駆けていった。
 私は驚いた。今まで私に進んで関わろうとする者はいなかったからだ。
 どこに行ってもトラブルを起こして大立ち回りを繰り返す私に、まさか近づこうとする者がいたとは。
 私は試しに次の日も寝たふりをして彼らを待った。
 彼らはまた私をくすぐりに来た。私はそれがとても嬉しかった。
 くすぐられるのは嫌だったが、それ以上に私は誰かと触れ合うことに飢えていたのだ。
 私が寝たふりをすれば彼らは私をくすぐりに来てくれる。
 そして、私はこの丘に住むことを決めた。

 今日も彼らは来てくれるだろうか。
 今度、少し勇気を出してみよう。
 寝たふりをやめて彼らと向き合ってみるのだ。
 毎日のように来てくれているのだ。きっと向こうも私に興味があるのだろう。
 私は小さな決意を胸に今日もそっと目を閉じた。


 森に潜んだ人影の会話が聞こえる。
「奴め、今日も呑気に寝ていやがる。」
「すでに奴のせいで街の薬草畑は死滅しているっていうのに。」
「よし、さっさとやってしまおう。」
 そして彼らは街に日光を取り戻すため、今日まで竜の体に取り付けてきた爆弾を起爆した。

三題噺「丘」「風」「薬草」

三題噺「丘」「風」「薬草」

私は丘の上に住んでいる。 左右は高い山、後ろは強く風が吹き付ける切り立った崖。 こんな所に住もうなどと、昔の私だったら思わなかっただろう。 しかし、今の私はここでの暮らしを気に入っている。 なぜなら私にはかけがえのない友人たちができたからだ。

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2011-03-28

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